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令和6年1月

薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)ポジションペーパーの変更からみた医科歯科連携について

永田 聡
(鹿児島県歯科医師会 地域歯科保健委員会 委員)

2003年、ビスホスホネート製剤を使用している患者で起こる顎骨壊死(BRONJ)が報告されてから20年経過し、薬剤関連顎骨壊死に関する集約として、2023年に『薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー(以下、PP)』が改訂されました。

今回のPPの変更点で注目を集めているのは『委員会として、「原則として抜歯時に顎骨壊死関連薬剤(antiresorptive agent、以下ARA)を休薬しないことを提案する」とした』と明記されたことです。これは、ARAの休薬の必要性について明確な根拠が示されていないことによります。ただし、使用するARAの種類や使用期間、MRONJ発症に関わるリスク因子などが発症に影響することも記載されています。

具体的には『低用量ARAでは、医師と歯科医師の間で歯科治療の必要性を共有しつつ、休薬を前提としない侵襲的歯科治療を含む全ての治療の継続が望まれる。』『がんの骨転移などで高用量ARAを投与中の患者は、慎重に抜歯の適否を判断し、まずは他に回避できる治療法があるか検討する必要がある。』などの記載がありますが、いずれも医科からの充分な患者情報をもとにリスク評価を行った上で適切な歯科治療にあたる必要があり、ARAの休薬が可能かどうかも含めて、医科歯科連携の重要性は増していると言えます。

また、今回のPPでは連携に関して処方医への提言もあり、『処方医はARAを開始するにあたり、MRONJ予防について考慮しなければならない。原則として骨粗鬆症治療を開始する患者は全例が歯科スクリーニングの対象となる。』と記載されています。よって、医科歯科双方からの連携が重要となります。

さらに『ARAの投与開始前に、必要な侵襲的歯科治療を終えていることはMRONJの発症予防に効果的である。』と明記されており、ARA投与前までに感染性疾患は可能な限り取り除いておくことが望ましいとしています。ARA投与中でも、医師と歯科医師で適切な連携を図りながら、口腔管理を中心とした継続的な歯科治療を行うことによって良好な口腔衛生状態を維持することは、MRONJ発症予防に重要であるとされています。

そのため、骨粗鬆症の治療を継続して脆弱性骨折を防止し、同時にMRONJを予防するためには、医師、歯科医師及び薬剤師の連携が極めて重要です。

参考文献)
薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023(公益社団法人日本口腔外科学会)
https://www.jsoms.or.jp/medical/work/guideline/

 

歯科医師会だより  2024年1月