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医科歯科連携のための歯周炎評価指標“PISA”について

地域歯科保健委員会 委員  竹内尚士 
(医療法人尚文会 竹内歯科)



歯科医師会だより 2020年2月

歯科健診の重要性について

市来  誠 
(鹿児島県歯科医師会地域保健委員会 副委員長)

 

近年、「歯、口腔の健康と全身の健康」との関係が明らかになってきているようですが、詳しく教えていただけますか?
下の図は、歯の本数と全身の医療費の関係についての調査結果ですが、50歳から70歳代のどの年代においても、残っている歯の数が1本ずつ増加するごとに、ほぼ直線的に1か月あたりの医療費が減少しています。つまり歯を1本でも多く残すことで全身の医療費が少なくて済み、健康であることがわかります。


医療費の削減のためにも、歯を残すことがとても重要なわけですね。それでは、「歯やお口の健康」をどのようにして守っていけば良いのでしょうか?
一生涯を通して歯科健診を受ける機会はたくさんあります。法律的に義務付けられている乳幼児健診と学校健診はほぼ100%受診しますが、その他の歯科健診の受診率は10%ほどしかありません。つまり、高校を卒業してから歯科健診を受診する機会はかなり少なくなってしまいます。

社会人になってからは、つい健診を忘れてしまう方も多いのではないでしょうか?
むし歯も歯周病も歯科医院での定期的な管理を行うことで、予防が可能です。痛くなくても歯科医院で検査をしてもらい、自分がどの程度の歯周病なのかを知り、適切なアドバイスを受けることで、歯を失わなくて済むようになります。

具体的に歯を失うとどのような影響があるのでしょうか?
まず、歯を失うとよく噛めなくなります。すると早食いになったり、柔らかい食品や糖質の高い麺類を好むようになります。すると、ますます噛む力や飲み込む力が落ちて、肉や魚などのタンパク質の摂取量が減ってきます。これが糖尿病をさらに悪化させたり、高齢者の低栄養、運動機能の低下、ひいては閉じこもり、骨折などを起こす原因になってしまいます。最近、要介護になる前のサインとして口の衰え(オーラルフレイル)が現れることがわかってきています。

歯科医師会だより  2019年10月

健康かごしま21中間報告について

尾畑  俊和
(おばたデンタルクリニック)

 


歯科医師会だより  2019年9月

フッ化物応用でむし歯の予防 ~特にフッ化物洗口について~

重田 浩樹
(地域歯科保健委員会 副委員長)

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歯科医師会だより  2019年1月

歯科疾患の健康格差とは何か?(その原因と対策)

市来 誠
(地域歯科保健委員会 副委員長)

 

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歯科医師会だより  2018年9月

がん患者さんのお口の管理

川越 佳昭
(地域歯科保健担当 理事)

   がん治療中には、手術や抗がん剤治療、 放射線治療により、からだに様々な副作用があらわれます。
お口の中においても、口内炎や歯や歯ぐきの痛み、口腔内の乾燥などにより、お口の不快感を感じたり、痛みにより食事がとれないなどつらい思いをすることがあります。
そこで、がん治療に伴う副作用や合併症による、お口のトラブルの予防や軽減のため、医療機関と歯科医療機関の医科と歯科が連携して、患者さんの精神的・身体的なサポートをする必要があります。

◎がん治療が始まる前に、お口の管理が大切です

がん治療前にお口の健康管理を行うと、さまざまな利点があります。

<合併症の予防>
・口の中の汚れは細菌のかたまりです。
・口の中が不潔な人は、がん治療に伴って呼吸器の感染症(肺炎など)を併発しやすくなります。
・歯や義歯の清掃状態が不十分だと、合併症を発症する可能性が高くなります。

<入院日数の短縮>
・がん治療を開始する前に専門的なお口のケアを受けた人は、手術後の合併症が少なく、入院日数
が短いという研究報告があります。


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放射線療法や化学療法に伴う口腔合併症は、経口摂取低下や嚥下困難による栄養不良を誘発しやすく、がん治療効果・生活の質の低下などにつながります。
また外科療法後に発症する感染や発熱は、術後在院日数の延長につながり患者様の心身的なストレスとなります。
これらのトラブルを予防・軽減し、予後を向上させるために、入院前はもちろんですが、入院中・退院後の口腔ケアは欠かせません。

◎歯科医師・歯科衛生士による専門的お口のケア

がん治療中は、むし歯、歯周病、口内炎などが悪化しやすくなります。
がん治療中はむし歯や歯周病の治療も困難となります。歯の修復物や入れ歯などの不具合で「かみ合わせが悪い」「口の中が痛む」といったような状態になると食事が困難になります。しっかり食事をとれなければ体力が低下します。がん治療が始まる前のお口の管理が大切です。

歯科医院で専門的にお口の中を清掃してもらいましょう。
毎日きれいに磨いているつもりでも、歯ブラシが届かずに汚れが残りやすいところがあります。
歯科医師・歯科衛生士の専門家は、歯ブラシのほかに専門の器具を用いて、歯と歯ぐきの境目など、磨きにくい場所にある汚れや歯垢を徹底的に取り除きます。

歯科医院で専門的にお口の中の清掃方法を指導してもらいましょう。
むし歯や歯周病予防のために毎日の歯磨きは大切ですが、がん治療中は、歯や入れ歯の汚れは歯垢の中に存在する細菌のために、肺炎などの呼吸器感染症を合併しやすくなります。
口の中が不衛生になると、がん治療中は口内炎が生じやすくなりますが、口の中を清潔に保つことによって口内炎の悪化を予防できます。
歯科医師・歯科衛生士に効果的な歯磨きの方法や入れ歯の清掃方法について指導してもらいましょう。

むし歯や歯周病があると、がん治療に支障がでることがあります。 事前に歯科治療を受けましょう。
がん治療によって、むし歯や歯周病は急激に悪化します。がん治療を開始すると歯科治療の内容に制約が出てくるため、普段からの歯科治療が理想的です。
がん治療が始まる前にお口の環境を整えて、がん治療にのぞみましょう。 がん治療が始まる前に、かかりつけ歯科医院やがん医療連携歯科医院を受診されることをお勧めします。
がん医療連携歯科医院は、専門の研修を受け、日々研鑽に努めています。担当の主治医の先生と密接に連絡を取り、患者さんの状況に合わせた歯科治療・処置を行います。

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出典:「がん患者さんのお口の管理」
作成:鹿児島県
監修:鹿児島医療センター、鹿児島県歯科医師会


歯科医師会だより  2018年5月

むし歯と違う 酸蝕症

門松 秀司
(地域歯科保健委員会 委員)

   むし歯、歯周病に次ぐ第3の疾患として、近年問題になっているのが、酸性の飲食物などで歯が溶けてしまう酸蝕歯です。
酸蝕症の原因は、内因性(酸性を含む胃液の影響)と外因性(職業因子ならびに非職業性因子:酸性飲食物、薬物、薬剤)に由来する酸が挙げられます。
かつては、メッキ工場やガラス工場などにおける酸性ガスの吸引が職業因子の主たる原因とされていましたが、現在では食生活習慣の変化にともなう酸性飲食物の過剰摂取が主流と考えられています。特に近年では、熱中症対策にスポーツドリンクをよく飲む人、健康への意識が高い人ほどなりやすい傾向があります。

酸性飲食物とは、炭酸飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、柑橘類、ドレッシング、お酢などpHが低いもので、歯が溶ける可能性があります。歯科医師会だよりH30.1月号(門松先生).gif
歯は酸に弱く、唾液が酸を洗い流すことで口腔
内が中和され、通常は大きな問題は起きません。

しかしながら、酸性飲食物は、嗜好品また、健
康食品として毎日の食生活に取り入れられること
で、歯が強い酸に長時間暴露されることで、唾液
による中和作用が間にあわず、歯の表面にあるエ
ナメル質が溶け、さらに進行すると象牙質が露出
し、歯がしみたり、欠けたりすることもあります。

 

酸蝕歯は、一般的なむし歯や歯周病と違い、口腔内細菌が関与していないこと、つまり、主たる原因が酸性飲食物の過剰摂取のため、歯磨きだけでは予防できないことが特徴とされおり、小児から高齢者まで幅広く見られます。

通常の口腔内細菌が関与するむし歯の場合、口の中がpH:5.5以下になるとエナメル質が溶け始めますが、酸蝕歯を引き起こす明確なpH値はまだわかっていませんが、pHが低い飲食物は酸蝕歯のリスクを高めると考えられています。
また、酸蝕歯は飲料水・食物の摂取だけでなく、逆流性食道炎や摂食障害の嘔吐、アルコール依存症など、酸性度が非常に高い胃酸によって、歯が溶けることもあります。

酸蝕歯を防ぐには、歯を酸に長時間暴露させないことが大切で、原因となる酸性飲食物の過剰摂取を控え、飲み方や食べ方も見直し、飲食後に機能性ガム(代用甘味料)の使用、むし歯の予防には飲食直後の歯磨きが有効ですが、酸で表面が軟らかくなっている歯を磨くと、エナメル質がすり減ってしまうため、遅延型歯みがき:酸性度が高いものを飲食した時は、30~60分ほど待ってからの歯磨きが望ましいです。ただし、酸蝕歯よりも虫歯のリスクが高い人は、食後すぐに歯を磨いてもかまいません。
その際は、再石灰化を促すフッ化物配合の歯磨き剤、歯ブラシは軟らかいものを選び、優しく丁寧に磨くことを心がけ、定期的な歯科医院の受診を心がけましょう。

最後に、酸蝕歯(酸蝕症)は今まで、作業環境中に発生した酸のガス、蒸気、ミストなどがエナメル質を脱灰するものが主とされていました。特殊歯科検診時での酸性飲食物原因および作業環境原因の判別が困難です。熱中症対策も必要ですが、飲んだら簡単でいいので水ですすいでください。

参考出典:「知る・診る・対応する 酸蝕症」北迫勇一、2017.9.10 クインテッセンス出版

歯科医師会だより  2018年1月

非感染性疾患;NCDs

尾畑 俊和
(地域歯科保健委員会 委員長)

健康長寿には歯と口の健康が重要

日本人の平均寿命は 83 歳(男性 80.8 歳、 女性 87.1 歳、 2015 年)を超え、男性の 4 人に一人、女性の 2 人に一人は 90 歳まで生きられる社会となっています。
これに対して、健康寿命(2000 年に WHOが提唱)とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間(厚生労働省)」です。残念ながら両者の間には、男性で約 9 年、女性で約 12 年の開きがあります(図1)。この差を縮めて、できるだけ長い間、健康に日常生活を送ることができることを個人も社会も求めています。
この健康寿命を延ばすためには、
(1) 死因と要介護状態の原因となる病気を予防すること
(2) 病気になりにくい心身を保つことと老化のスピードを緩めること
が必要です。がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病などをはじめとする生活習慣病(NCDs)は、私たちの死因の中で約 60%、要介護状態の原因でも約 30%を占めています。また、病気になりにくい身体を維持するために、良好な食生活、 運動、休養、適度な飲酒、禁煙に留意することはよく知られていますが、これに加えて歯・口の健康に関する生活習慣や社会環境を改善していくことが基本と考えられるようになってきています(健康日本 21 第 2 次)。


さんぽ通信9月号(歯科医師だより)図1


 

健康寿命の延伸には、歯を失わないように歯・口の健康を保持することが基本的な要素となっているという報告が多くあります。生活習慣病を予防し、歯・口の健康増進に一層取り組むことが必要です。我々、歯科関係者にもさらに多くのことが求められ、役割を果たしていかなければならないと思います。

歯科医師会だより  2017年9月

生活習慣病とお口の健康との関係

しげたこども歯科 重田 浩樹

 

むし歯や歯周病などに代表されるお口の病気は世界で39 億人が罹患しており、先進国・開発途上国を問わずに国際的な社会問題であることは言うまでもありません。多くの研究から、お口の病気はからだの病気と密接な関係があることが報告されており、とりわけ生活習慣が多大な影響を及ぼしていることが報告されています。
2011年の国連ハイレベル会議において、お口の病気は食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲酒など日々の生活習慣が原因となって起こるさまざまな病気である生活習慣病のひとつとして位置づけられ、生活習慣病に関連する喫煙や不健康な食生活、過度の飲酒などのリスク要因をコントロールする必要性が示されました。
わが国でも、国民の健康を推進する施策として「健康日本21」が2000年に施行され、2013年から健康日本21(第二次)がスタートし、その中で生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底が示されています。
生活習慣病は、生活習慣の改善によって予防が期待できます。生活習慣病の危険因子(リスクファクター)となる生活習慣は、むし歯や歯周病などのお口の病気にとっても危険因子となるため、生活習慣を改善することはお口の健康にも良いと考えられています。今回は、生活習慣病と関連している喫煙や間食、また生活習慣病のリスクを高める肥満や高血圧とお口の健康との関係について紹介します。
≪喫煙≫
喫煙はさまざまな生活習慣病のリスクとなり、お口の健康とも深く関わっています。
喫煙による歯周病への影響は、たばこを吸う量や期間と関係しており、たばこを吸わないか以前吸っていた人に比べてたばこを吸う量が多い人では、4 年間に歯周病が悪くなるリスクが約3 倍も高いことが示されています(図1)。


平成29年5月歯科医師会だより①

図1 喫煙量と歯周病悪化の関係


また、喫煙は全身のがんだけではなく、お口の周囲のがんとも関係しています。喫煙・飲酒の両方の習慣がある人は、喫煙・飲酒のどちらもしない人に比べて口腔咽頭がん死亡のリスクが約3倍高くなっています(図2)。


平成29年5月歯科医師会だより②

図2 喫煙・飲酒と口腔咽頭がん死亡の関係


≪間食≫
間食に含まれている砂糖は、むし歯の原因になることが知られています。間食では、食べ物だけではなく飲み物に含まれる砂糖にも注意が必要で、砂糖入りの飲料を飲む頻度が多い人は、むし歯が増加していることが示されています(図3)。


平成29年5月歯科医師会だより③

図3 砂糖入り飲料の摂取とむし歯増加の関係


≪肥満≫
肥満は糖尿病や循環器病などの生活習慣病と関連しており、特に内臓脂肪型の肥満はメタボリックシンドロームとなって病気のリスクを高めています。
日本人の調査で、やせの人(BMI20 未満)に比べて過体重や肥満の人の歯周病リスクが高いことが報告されています。成人集団の追跡研究では、BMI が高い太り気味の人ほど5 年間で歯周病が悪化しており、その傾向は男性よりも女性で顕著でした(図4)。

平成29年5月歯科医師会だより④

図4 肥満度(BMI)と歯周病悪化の関係


≪高血圧≫
日本で最も患者数が多い病気は高血圧性疾患です。血圧が高いと脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。一方、多くの成人が歯周病に罹っており、進行した歯周病の人は治療抵抗性高血圧(降圧剤が効きにくい高血圧)のリスクが高いことが報告されています)。
歯周病になっている治療抵抗性高血圧患者に歯周病の治療を行ったところ、治療6 か月後に血圧の低下がみられたことから、歯周病の治療は高血圧症の血圧コントロールにも効果があると考えられます。(図5)


平成29年5月歯科医師会だより⑤

図5 治療抵抗性高血圧患者に対する歯周治療による血圧の変化


≪知識から実践へ≫
今後は、お口の健康を保つことが生活習慣病予防につながり、ひいては健康で豊かな人生を送るためにいかに大切かという理解を深めるとともに、今まで得られた知識をいかに実際の生活習慣につなげていくことができるかについて考えていくことが必要です。
『公益社団法人8020推進財団:生活習慣病(NCDs)の予防・治療に役立つ口腔ケア,東京,2016 より引用』

歯科医師会だより  2017年5月

歯の保有数と健康寿命との関係
8020運動のさらなるパワーアップが重要です。

鹿児島県歯科医師会 地域歯科保健員会 委員 市来 誠

H29.1歯科医師会だより(市来先生)①

 


H29.1歯科医師会だより(市来先生)②


 

歯科医師会だより  2017年1月

歯・口腔の健康と栄養について


歯科医師会だより①(平成28年9月)


歯科医師会だより②(平成28年9月)


 

歯科医師会だより  2016年9月

口腔ケアと誤嚥の関係について

地域歯科保健委員会 副委員長 尾畑 俊和
(おばたデンタルクリニック)

 近年、いろいろな媒体を通じて、口の中の清掃状況と全身の疾患が関連しているとの指摘がなされております。皆様方も、一度は見られたことがあるかと思います。
今回は、口の中のケアと誤嚥から引き起こされる肺炎についての関係についてお話ししようと思います。

H28.5歯科医師会だより尾畑先生

 

(平成26年度人口動態月報より)


上のグラフは、日本人の死亡原因についての年度別グラフです。
平成元年では原因は
1位 悪性新生物
2位 心疾患
3位 脳血管疾患
4位 肺炎
でしたが、平成23年になると
1位 悪性新生物
2位 心疾患
3位 肺炎
4位 脳血管疾患
と変わっていきます。この約20年間で、3位の脳血管疾患と肺炎が入れ替わる形となっています。その上、脳血管疾患で亡くなる方が減っていく一方で肺炎で亡くなる方が対照的に増加しています。
この原因として考えられている一因が、脳血管疾患の後の後遺症としての嚥下反射や咳反射の低下による肺炎の増加です。脳血管疾患により、大脳基底核というところに障害がおこると嚥下反射や咳反射が起こりにくくなり、そのために、肺炎を引き起こしやすくなるのです。
口腔ケアを推進する根拠の一つが、嚥下反射や咳反射の低下による肺炎の発症を抑えるために、口の中をきれいにしておく方が良いという考え方です。

さて、口腔ケアとは、どのようなものでしょうか?言葉として、聞かれたことはあると思います。簡単に言いますと「口腔内を清掃し、口腔機能を維持改善し、食べたり、飲み込んだりすることの、リハビリを行うこと」とお考えください。
お気になられる方は、ぜひ、かかりつけ歯科医院を受診されて、お聞きください。ご自分で受診ができない方や、ご家族で受診ができない方がおられる場合は、訪問治療もございますので、近くの歯科医院や、行政の地域包括支援センターにお尋ねください。我々歯科医師は、口腔ケアをすることにより、少しでも肺炎でお亡くなりになられる方が少なくなることを望んでおります。ぜひ、かかりつけの歯科医院に定期検診の受診をなさり、ご相談ください。

歯科医師会だより  2016年5月

タバコをやめよう!(タバコから守る歯と口腔の健康)

地域歯科保健委員会 委員 市来 誠

H28.1歯科医師会だより市來先生①

 


 

 

H28.1歯科医師会だより市來先生②

 


 

H28.1歯科医師会だより市來先生③

 

 


H28.1歯科医師会だより市來先生④

 

 

 

 

H28.1歯科医師会だより市來先生⑤

 


H28.1歯科医師会だより市來先生⑥

 

 


 

 

歯科医師会だより  2016年1月

職場でも定期的に歯科健診を行いましょう!!

地域歯科保健委員会 理事 有村 健二

 一昨年、TPP交渉に参加していた日本政府代表の某大臣が1か月間休養されたことは、皆さんの記憶にもまだ新しいのではないでしょうか。その大臣の病名は舌がんであることが、その後公にされました。そして、約1か月の休養ののち何らの後遺症もなく、現場復帰され現在までに政府代表として尽力されていることはご存じのとおりです。「がん」なのに1か月で大丈夫?そもそも口の中に「がん」が発生するの?多くの方が疑問に思われたことと思いますが、実は口腔内にもさまざまな部位にがんが発生します。また早期であればこのように何らの後遺症もなく完治することができます。しかし実は自覚症状は認めにくく、かなり進行した後に受診されるケースが多いため、治療しても発語障害や咀嚼障害そして審美障害といった後遺症に悩まされるばかりでなく、5年生存率も一気に低下してしまいます。実はこの口腔がんによる鹿児島県の成人男性死亡率は全国ワースト2位であり、早期に受診されていないことが大きな要因と考えられます。そもそも鹿児島県の定期歯科健診受診率が全国に比して非常に低いことが影響していると考えられます。そのため、成人男性が定期的に歯科医院を受診し、口腔内のむし歯や歯周病のみならず、このような口腔内の全ての疾患の管理を行っていく機会を増やしていくことが、喫緊の課題ではないでしょうか。そのような観点から、職場での事業所歯科健診を普及させることを強く提言したいと思います。

喫煙や飲酒がリスクファクターと言われていますが、何より口腔内の衛生状態が悪化すると発がんのリスクも上がりますので、職場でも成人の歯科健診の機会を増やしていただくよう是非お願いいたします。

歯科医師会だより  2015年9月

ドライマウス

四元 幸治
(よつもと歯科医院)

唾液の分泌量低下で発症するドライマウス

ドライマウスはさまざまな原因で唾液の分泌量が低下し、口の中が乾燥する病気です。糖尿病や腎不全などの病気を介して起こることもあれば、ストレスや筋力の低下、さらには薬剤の副作用で起こることもあります。例えば更年期障害の不定愁訴に悩んで抗うつ剤を飲み、その副作用でドライマウスになり、唾液が出ないことにストレスを感じて、さらに強いドライマウスになっていく。つまり、複合的な病因によって、ドライマウスが発症します。

増え続ける現代病

ストレス社会は人々に緊張をもたらし、そのため常にのどの渇きを訴える人が増えています。また、ファストフードを食べる機会が増え、やわらかい食べ物を好むようになり、咀嚼時間は昔に比べてずいぶん短くなりました。かむという行為は唾液の分泌を促しますが、唾液を分泌する唾液腺は筋肉によって裏打ちされています。その筋肉が衰え、唾液の分泌量がますます低下しドライマウス症状になるのです。ドライマウスはまさに現代病であり、患者さんは増え続けています。このまま放置して対処しなければ、むし歯や歯周病だけでなく(図1)、誤嚥下性肺炎などの全身疾患になる可能性があります。また。ドライマウスの症状は膠原病の一つである難病のシェーグレン症候群でもあらわれます。

歯科医師会だより5月号(1)

 

歯科医師会だより5月号(2)

ドライマウスには口の中の粘つき、舌の痛み(図2)、口臭などの症状のほか、乾いた食品を食べられない、食べ物をうまく飲み込めないといった症状があります。口の中が乾くと、唾液の持っている自浄作用が失われ、通常よりも感染症になりやすくなります。特に高齢者は、そのまま放置しておくと、食べ物を飲み込む能力が低下する摂食嚥下障害から重篤な病気になりかねません。 眼や口腔など、外界にさらされている臓器は、ウイルスや細菌の侵入を防ぐために外分泌液が流れていて、生体防御の最前線を担っています。そこが枯渇すれば体内に不利益な微生物の感染が生じることは自明です。

 

歯科が診療の窓口に

ドライマウスに対し、診断の中心的な役割を果たすのは、口腔のスペシャリストである歯科医です。まず、問診・触診のほか、口腔内診査や唾液量検査などを用いて複合する病因を特定していきます。次に糖尿病や更年期障害、薬の副作用など、複数の原因に対してさまざまな治療法を組み合わせ、その要素をひとつずつ取り除いていくことになります。歯科での実際の治療には、人工唾液や保湿ジェルなどを用いる対症療法、唾液分泌促進剤による薬物療法、筋機能療法などがあります。しかし、ドライマウスは全身疾患のひとつの症状として口腔に現れることが多く、歯科と医科の連携が非常に重要です。ドライアイ(乾燥性角結膜炎)を併発しているなら眼科医と、更年期障害なら婦人科医と連携して患者さんを診ていきます。高血圧症に用いられる降圧剤はよく口の中が乾きますが、この治療薬を服用している場合は循環器内科と連携し、薬剤の変更や減量で対処していきます。また、シェーグレン症候群であると診断されれば、膠原病を専門とする内科医の協力を得ることになります。このようにドライマウス治療においては歯科医が窓口になります。口の乾きを覚え、生活の不便さえも感じるようになったらお近くの歯科医に相談していただきたいと思います。

ドライマウス研究会

http://www.drymouth-society.com/
ドライマウス研究会は、ドライマウスの診断と対処の普及を目的に2002年5月に設立されました。2013年4月現在、全国約4200人の歯科医師が会員登録されており、ドライマウス患者友の会約800人と共に運営されているため、上記ホームページから各都道府県の会員の連絡先を知ることができます。

歯科医師会だより  2015年5月

歯科医師の役割

介護保険・口腔ケア委員会 副院長 濱崎 慎
(浜崎デンタルクリニック)

  がんは、1981年以降、日本人の死因の第一位となっています。がんの治療は日々進歩を続けており、現在のがん治療においては、治療効果に加えてより安全であること、苦痛をできるだけ緩和し、治療中から治療後も含めて患者さんのQOLを可能な限り良好に維持することが求められています。そのためには、様々な職種の医療者が密接に連携して診療にあたるチーム医療が必要不可欠となっています。

国立がん研究センターは、がん患者さんに生じる医学的、社会的、精神的問題等を解決することを目指し、がん治療において歯科医療従事者が提供する口腔ケアや歯科治療が、より質の高いがん治療を提供するために重要な支持療法であると考え、2010年より日本歯科医師会と共同し、『がん患者さんの口腔を守り、最後までお口から食事をとる事を支援する』ため、がん患者さんの治療前の口腔ケアを地域歯科医療機関に依頼して実施する、地域医科歯科連携事業を推進して参りました。

鹿児島県でも、がん治療の治療前から治療後の口腔ケアや歯科治療を担当する『がん患者医療連携歯科医院名簿』を鹿児島県歯科医師会のホームページに掲載しております。ご活用ください。

今後、がん患者さんが口腔ケアや歯科治療を受けられる環境を、より整備していく必要があります。そして、がん患者さんのQOLを向上することに貢献できることを願っております。

歯科医師会だより  2015年3月

鹿児島県歯科医師会 会立 口腔保健センターにおける障害者歯科診療の取組について

鹿児島県歯科医師会立口腔保健センター
前川 孝治


  (公社)鹿児島県歯科医師会立口腔保健センターでは障害者歯科を行っています。障害者歯科というのは、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害などのために一般の歯科では対応が困難な患者さんを対象に歯科診療を行う分野です。
まず患者さんの障害を理解し、保護者や介護者の方たちと十分な相互理解のもとに診療を行います。理解力が一定以上の知的障害や発達障害では診療室、スタッフ、器具や治療に慣れてもらいながら治療をすすめます。また、治療の順番を伝える絵カードや視覚支援カードなどを利用することもあります。脳性麻痺等のため身体の安定を保つのが難しい時は、治療中の姿勢を保つためにクッションなどを利用したりします。
当センターでの障害者歯科診療の特徴は、歯科診療への導入のためのトレーニングが一般の歯科診療所と比べて非常に多いという点です。もちろん知的障害の程度によっては効果がない場合もあるのですが「歯科医院の雰囲気に慣れさせるだけでも」という保護者の方もいます。一般的に3歳以上の知的レベルなら効果があるといわれています。平成25年度は当センターの受診患者の内トレーニングを行っている患者は全体の23%にも上ります。
当センターでのトレーニングでは多くの場合写真カードを使用します。ここでは治療台に座って健診する迄の流れを紹介します。 警戒心の強い方や病院等が苦手な方は、受診しても、警戒して待合室に入るまでに時間がかかったり、入室できないことがあります。そのため、最初の数回は見学という形で待合室まではいってくるところから始めることもあります。その場合、予め保護者の方に下のような待合室の写真カードを渡して置き、前日から「明日はここに行くよ」などと説明しておいてもらうと、スムーズにいくことが多くあります。

(待合室の写真)                   (診療室の写真)

歯科医師会だより(前川先生)1 歯科医師会だより(前川先生)2

 

 


待合室に入室できたら、次は診療室へ入室できるようトレーニングします。場合によってはいきなり診療室ではなく、プレイルーム等で膝の上にゴロンと横になるところからトレーニングを始めることもあります。これは後に治療台で横になることへのトレーニングも兼ねています。またこの段階で、自宅での介助磨き等も膝の上で横になってしてもらうように説明します。

(お膝の上でごろんと横になる)                (次はいすに座るんだよ)

歯科医師会だより(前川先生)3歯科医師会だより(前川先生)4

 

 

 

 

 

 

 


このような取り組みは歯科ではあまりなじみがないかもしれませんが、鹿児島県では生活訓練、行動訓練等の障害福祉、教育分野では広く取り入れられています。最近はタブレット端末などで画像を示す方法も行われています。

 

歯科医師会だより  2014年9月

事業所歯科検診の推進について

鹿児島県歯科医師会地域歯科保健委員会
理事 有村 健二
(有村歯科クリニック)

  この度、鹿児島県歯科医師会では事業所歯科健診を推進すべく、リーフレットを作製いたしましたのでご案内申し上げます。

全身の健康を維持するためには、お口の中の健康が欠かせません。しかし、40歳以後の働き盛りの年齢から「歯周病」のため、急速にたくさんの歯を失っていく方々の割合が増加しております。また、「歯周病」は糖尿病や心臓病などを悪化させることがわかっています。鹿児島県歯科医師会では、事業所で働く皆さまのお口の中の健康を守るために、事業所歯科健診を推進していきたいと考えております。事業所単位での歯科健診は、従業員の健康保持はもちろんのこと、口臭やストレス予防のためにも大切です。

つきましては、リーフレットを添付させていただきますので、事業所の皆さまのお口の健康と、さらには医療費の削減にもつながる事業所歯科健診の推進にご活用いただければ幸いに存じます。なお、このリーフレットは鹿児島県歯科医師会ホームページにも掲載されておりますので、併せてご利用ください。

公益社団法人鹿児島県歯科医師会
口腔保健センター 中迫・野口
telephone099-223-0378
faxto099-223-2593

 

 

歯科医師会だより  2014年5月

肥満の予防と肥満解消は、むし歯と歯周病予防から

鹿児島県歯科医師会介護保険・口腔ケア委員会
副委員長 濵崎 慎

  食生活において歯周病予防を心がけると、肥満の予防につながることがわかってきました。そのポイントは、規則正しい食事をすること、間食を減らすこと、よく噛んで食べることです。間食を減らすことで食べかすが歯につく機会が減り、むし歯や歯周病になる機会も減ります。同時に余分な間食をやめるだけでも肥満の予防になります。
また、歯がしっかりしていると、しっかり噛むことができます。しっかり噛むことで、唾液がよく出て自浄作用が働き、口の中をきれいにし、むし歯や歯周病を予防します。さらに、よく噛んで食べることで、満腹感が得られて食べ過ぎることがなくなります。
噛むことが肥満を防ぐメカニズムもわかってきています。脳内にある神経ヒスタミンという物質が食欲を抑え、エネルギーを消費させる働きをもっており、この神経ヒスタミンは、噛むことで活性化するというものです。『一口30回噛む』ことは、肥満予防法として、厚生労働省『保健指導における学習教材集』で取り上げられています。

よく噛んで食べると・・・・・・

満足感が得られ、食べ過ぎない唾液がよく出て口の中をきれいにする

↓↓肥満の予防・解消になるむし歯や歯周病の予防になる↓
メタボリックシンドローム
の大きな原因になる
内臓脂肪型肥満

肥満の予防・解消が
メタボリックシンドローム
対策の重要ポイント!

食べ物を口に入れたら、『箸を置いて』・『噛む』
目標、一口30回!

 

歯科医師会だより  2013年12月

8020達成者で見る歯並びとかみ合わせ

鹿児島県歯科医師会口腔保健センター管理委員会
委員長 石谷 徳人
(イシタニ小児・矯正歯科クリニック 院長)

3人に1人の高齢者が8020達成者の時代に

日本歯科医師会が厚生労働省と提唱している8020運動については、みなさんもすでにご存じであると思います。厚生労働省の調査によると、8020の達成率(80歳で20本の歯を残すことができた人の割合)は、運動開始当初において7%程度でしたが、2005年には21.1%、2007年に出された中間報告では、25%を超えて、2011年の最新の報告では、38.3%に達し、今や3人に1人の高齢者の方が8020達成者となりました。

歯科医師会だより石谷先生①

 

8020達成者の歯並びとかみ合わせ

最近では、8020達成者のお口の中の状態についての調査が盛んに行われるようになっています。その中で大変興味深い調査として、「8020達成者の多くは、歯並びとかみ合わせが良かった」との複数の報告がなされています。
ある調査1)では、8020達成者の実に84%が正しいかみ合わせであり、残りの16%は上顎前突(いわゆる前歯が出ている)であったそうです。一方、八重歯などの割合も人も非常に少なく、反対咬合(いわゆる受け口)をはじめとして、上下の歯が正しく咬んでいない状態(不正咬合)の方は一人もいませんでした。また、8020達成者の咬合力(かむ力)は正しいかみ合わせの20代の成人とほとんど差がなかったということです。つまり、歯並びとかみ合わせが良いことが8020を達成するだけでなく、かむ機能も若い世代のまま維持されているということになります。
一般に歯並びとかみ合わせが良ければ、お口の中が汚れても、唾液の力によってある程度の自浄作用が働き、ブラッシングなどのお手入れもしやすくなります。その結果むし歯や歯周病になりにくくなります。さらに、それぞれの歯にバランスよくかむ力がかかることで、歯やその周囲の歯肉や骨の寿命を延ばすことにつながります。

矯正治療について

歯並びやかみ合わせを良くする治療に矯正治療があります。矯正治療は保険適用外診療となるので通常の歯の治療よりも高額になります。しかし、8020達成者のような長持ちする歯並びとかみ合わせを手に入れば、結果的に医療費を抑えることができ、充実した老後を送ることができるものと思われます。
日本矯正歯科学会では、前歯が生え変わる7歳くらいに一度歯並びやかみ合わせの相談を受けることを推奨しています。また最近は成人になってから矯正治療を始める方も多くいらっしゃいます。通常、矯正治療には年齢制限はありませんので、気になった時点で、歯科を受診し、相談を受けるようにしましょう。相談したからといって、必ず矯正治療を開始しなければいけないわけではありませんので、気軽に受診することをお勧めします。

【参考文献】
1)竹内史江ほか:Dental Prescale®を用いた8020達成者の咬合調査,歯科学法,105(2):154-162,2005

 

歯科医師会だより  2013年9月

口腔癌の予防は生活習慣の改善と口腔ケアから

地域歯科保健委員会 副委員長
大久保 章朗
(大久保歯科口腔外科医院)

  口の中にできるがんを口腔がんといいます。歯以外の舌、歯肉、頬の粘膜、唇、あごの骨などあらゆる口の組織にがんはできる可能性があります。がん患者は高齢者の増加に伴い増えてきており、口腔がんもその例外ではありません。
わが国における口腔がんの患者数は1975年には2,100人でしたが、2005年には6,900人、2015年には7,800人と増加してきています。これはすべてのがん患者の1~2%に当たります。口腔がんは3:2の割合で男性に多く、年齢的には60歳代に最も多く発生しています。
口腔がんができる部位は人種や生活習慣などで異なりますが、日本では舌が約60%、歯肉が約18%、頬粘膜と口底がそれぞれ10%弱です。なかでも、舌は舌縁といわれる舌の横の方にがんができやすいとされています。これは物理的な刺激を受けやすいためであろうといわれています。
口腔がんの危険因子と言われているものがいくつかあります。喫煙、飲酒、慢性の機械的刺激、食事などの化学的刺激、口の中の炎症、ウイルス、加齢などです。
たばこは肺がんだけでなく、口腔がんの最大の危険因子と言っても過言ではありません。ちなみに噛みタバコの習慣がある東南アジアでは、口腔がんはがん全体の約30%を占めます。たばこに含まれるニコチンやタールなどの発がん性物質が口の粘膜を刺激してがんになるとされています。喫煙者では非喫煙者に比べて口腔がんの発生が16倍に跳ね上がるといわれています。アルコールそのものに発がん性はないのですが、間接的に発がんに関係しているといわれおり、喫煙しながらの飲酒は発がんの危険性は著しく増加します。
歯磨きなどを怠り、口の中が不衛生な状態が長く続いたり、歯周病などの慢性炎症も発がんの危険が増すといわれています。
放置したむし歯が欠けて尖った歯、歯並びが悪く内側に傾いた歯、合わない義歯などによる持続的な粘膜への刺激も口腔がんの原因になることがあります。また、非常に熱い食事や飲み物、非常に辛い刺激的な食べ物なども同様に口の粘膜を刺激して、口腔がんの原因になります。
口腔がんの予防のために禁煙はもちろんのこと過度の飲酒も控えるようにしましょう。食事も熱すぎるものや激辛などの刺激の強いものを習慣的に摂取することは控えましょう。口腔ケアも自分自身で行うことはもちろん、定期的な健診を兼ねて、歯科医院でプロフェッショナル口腔ケアを受けることも口腔がんの予防につながります。そして、むし歯や歯周病は痛くないからと言って放置せず、早期に治療を受けましょう。また、義歯の不具合も早めに受診しましょう。健康で清潔な口を保つことが口腔がんの予防につながります。

歯科医師会だより  2013年5月

歯科医師会だより

地域歯科保健委員会 副委員長
尾畑 俊和
(おばたデンタルクリニック)

  近年、歯周病が全身の健康と大きくかかわっていることが分かってきました。糖尿病や心臓血管障害、低体重児出産、骨粗しょう症といった一見、口の中とは関係ないような疾患と歯周病との関連性が指摘されています。今回は「歯周病とは?」そして、「その治療法は?」ということについて述べさせていただきます。

歯周病とは?

歯の周りにある歯周組織が歯周病菌に感染することで、歯茎(歯肉)が腫れたり、歯茎から出血したり、最終的には歯が抜けてしまう病気の事を言います。歯周病菌は、歯垢(プラーク)に含まれています。抜歯の原因の4割以上が歯周病であり、成人の約8割の方が、歯周病になっているにもかかわらず、自分がそうだとわかっている人は、意外に少ないようです。病気の原因が、歯みがきの習慣ともあわせて生活習慣に強く結びついており「生活習慣病」の一つとしてあげられています。

歯周病の治療法は?

先程も述べたように、歯周病は、歯垢に含まれる歯周病菌に感染することにより引き起こされる病気です。
治療法としては、原因となる歯垢そして歯周病菌が口の中に残らないようにしておくことが、第一となります。これを『プラークコントロール』といいます。専門家のしっかりとした指導を聞いておくことで、これまでの歯磨き方法を変更して、歯垢が溜まりにくい口内環境を維持することができるようになるでしょう。軽度の歯周炎であれば、これだけでもかなりの改善が見られることもあります。
歯垢は時間が経てば歯磨きでは取り除くことができない『歯石』になり、『歯石』は歯周病菌の格好の棲家となるため早めに取り除かなければどんどん歯周病が進行してしまいます。そこで『プラークコントロール」の次に『歯石』を除去してもらい、再び付着しづらくしてもらう治療法が『スケーリング』や『ルートプレーニング』です。歯磨きでは取り除けない歯石はもちろん、取り除けていない歯垢(プラーク)を歯科医院で除去することによって炎症が収まっていき、歯周病の進行を抑え、症状の改善が期待できるのです。
歯周病の多くは、ここまでの治療でかなりの改善がみられますが、中等度、または重度歯周病などの場合はこれらの治療法では症状が改善されない場合があり、そのような場合には『歯周外科手術』を行う場合があります。
歯周病を治療し、改善した場合でも、1度歯周病になった人は残念ながら再び歯周病になりやすい為、再発を防ぐためにも『メインテナンス』が非常に重要となります。正しい歯磨きの仕方はもちろん、健康的な生活習慣、食生活を送り、出来れば2,3ヶ月に1回、最低でも半年に1回は歯科医院で『メインテナンス』を受けて予防する事が何よりも大切です。

上記の通り、歯周病は口の中の治療だけでなく、生活習慣、食生活なども併せて見直し、改善することが大切であり、歯科医院で治療を行うことはもちろん自分自身でも歯周病を治すための努力がとても重要となります。

歯科医師会だより  2013年2月

-食べる楽しみいつまでも-

介護保険 口腔ケア委員会委員長
平田 晃士
(平田歯科医院)

  人は必ず死をむかえます。聖路加国際病院理事長・名誉院長(新老人の会会長)の日野原重明氏は「ありがとうという言葉で人生をしめくくりたいものです」と言われています。既によくご存知のことと思いますが、厚生労働省から発表された平成23年度人口動態統計によりますと、主な死亡原因は「がん(悪性新生物)・心疾患・肺炎・脳血管疾患等」です。少し前までは肺炎は4位でしたが3位となりました。

肺炎は、一般的に肺の急性感染症として理解されています。風邪や上気道炎、インフルエンザをこじらせてと考えがちですが、実はさまざまな肺炎があり、その多くは高齢者の誤嚥による肺炎です。口腔内には多種多様の細菌が存在しています。加齢や脳などのさまざまな病気等により、嚥下機能(飲み込む機能)の低下でうまく飲み込めず、喉頭蓋(飲食物が食堂へ行くように喉頭をふさぐふた状のもの)の動きが低下し、また咳をする力が弱くなると、誤嚥した際の咳やむせといった動作も鈍くなり、気管への誤嚥を招いてしまいます。誤嚥によって口の中の細菌や逆流した胃液が誤って気管、肺に入りやすくなり、体力・抵抗力・免疫力の低下などにより細菌などを駆除することができず、その結果として肺炎にかかる危険度が増し発症します。高齢者やより免疫力の低下した人にとって命に関わることも少なくありません。この「さんぽ通信」の“歯科医師会だより”のバックナンバーをご覧いただけると、お口の中の病気・細菌などが、心臓はじめ全身と深く関っていて、口腔の清潔、噛むこと、唾液パワーを含む口腔機能がとても大切であることがもっと良くわかっていただけると思います。
平成20年、国立がん研究センターは、がん患者における口腔ケアや歯科治療が、より質の高いがん治療を提供するために重要な支持療法であると考え、「口腔ケアや歯科治療をがん患者の一環として取り入れる」方針に達したとのことです。がん治療に必要な制癌剤や放射線療法などによる口腔合併症、全身麻酔によるリスク等から術前術後の口腔の治療管理が重要と言えます。鹿児島県歯科医師会は、平成24年6月25日に鹿児島医療センターと「がん患者の歯科医療の連携体制を築き上げること」について合意し、事業を展開しているところです。

口は顔の一部で「食べる」「話す」「呼吸をする」など 生きるために必要ですばらしいさまざまな役割があります。そして「がん(悪性新生物)・心疾患・肺炎・脳血管疾患 等」にとっても深い関わりがあります。みなさまうまくかかりつけの歯科医院を活用し、「食べる楽しみいつまでも」を実現いたしましょう。

歯科医師会だより  2012年12月

不協力児(者)の歯科治療に関する鹿児島歯科医師会立の取組み

鹿児島県歯科医師会立口腔保健センター 管理委員会 委員長
重田 浩樹
(しげたこども歯科)

  私たち歯科医師は日々、むし歯の治療を行っています。むし歯の治療は“痛い”からできれば歯科医院へは行きたくないと思う大人の方も多いと思います。だから、私たち歯科医師はできるだけ痛くないような治療を心掛けてはいますが、功を奏しない場合もあります。その時には患者様にストレスをかけるのはもちろんのこと、自分自身もストレスを感じながら治療をしています。

このようにコミュニケーションがとれる大人でも歯科治療を受けることは大変です。ましてやコミュニケーションがとりづらい子どもや障害者に歯科治療を行おうとすれば協力が得られるはずもなく、対応が困難になります。よって、そのような子どもや障害者に対して治療を行う際には、大人と同様にコミュニケーションをとりつつ協力性を引き出して歯科治療を行うために、患者の行動を医療の場にふさわしいように誘導・管理するいわゆる行動管理を行っています。実際の診療では代表的な行動管理としてTSD法(ゆっくりわかりやすい言葉で説明し、手鏡などを見せて行う方法)といった行動変容法を用いています。

しかし、行動変容法が適用できない子どもや障害者もいるのも事実です。そのような方に対しては静脈内鎮静法や全身麻酔を用いて歯科治療を行っています。静脈内鎮静法とは点滴の中に精神を鎮静させる薬または少量の静脈麻酔を投与し、有意識下で鎮静状態を得る方法で、全身麻酔は無意識下で行う方法です。いずれも治療効率が良く質の高い治療を行うことができます。しかし、十分な麻酔の知識や技術、設備が必要であるため、一般の歯科医院ではできないのが現状です。本県でそのような方法で歯科治療をうけるためには、鹿児島大学病院や鹿児島市立病院など鹿児島市内でしか行われていないのが現状でした。

そこで鹿児島県歯科医師会は、障害者(児)患者にとって安全かつ負担の少ない障害者歯科医療体制の仕組みを整備するために、鹿児島県から委託をうけ、平成21年度から障害者歯科医療体制整備事業を行っております。この事業ではこれまでに、1次から3次医療機関の間での役割分担や連携体制の構築を図るためのパンフレットを作成したり、3次医療機関が鹿児島市内だけに限局した現状を改善するために大隅地域に大隅鹿屋病院を中心にした障害者歯科医療ネットワークを構築したり、全身管理を行いながら歯科治療を行える施設が少ない現状を改善するために鹿児島県歯科医師会立口腔保健センターで静脈内鎮静法下での歯科治療を確立させてきました。このように鹿児島県歯科医師会では、全ての方が安全かつ負担の少ない歯科治療を受けられるよう活動していますので、詳しくはかかりつけ歯科医院もしくは鹿児島県歯科医師会立口腔保健センター(telephone099‐223‐0378)までお問い合わせください。


24年9月歯科医師会報

 

歯科医師会だより  2012年9月

8020の持つ意味

 

鹿児島県歯科医師会
地域歯科保健、介護保険・口腔ケア担当理事
福原 和人

  みなさん【8020運動】という言葉を耳にした事があると思います。平成元年に厚生労働省と日本歯科医師会が提唱した、80歳で20本の歯を残そうという運動です。なぜ80歳で20本なのか、20本の歯が残っていればたいていの物が食べられるという事です。しかしそれだけではありません。資料のとおり20本以上歯が残っている人とそうでない人の医療費に明らかに差がでてきます。すなわち、しっかり歯が残っている人の方が病気になりにくいという事になります。働く世代にとって定期的に歯科医院に通いメインテナンスを行う事はなかなか難しい事かもしれません。しかし人は死ぬまで食べ続けなければなりませんよね。23年の統計によりますと日本人の平均寿命は、男性79.64歳、女性86.39歳です。現役を退いて人生を全うするまで平均でも20年はあります。やはり食事は自分の歯で美味しくいただきたいものですね。 8020を達成するためには、現役時代からのメインテナンスが必要不可欠です。むし歯の治療はもとより、歯周病に対する管理は後のお口の中の環境に大きく影響を及ぼします。また、歯科医師会だよりのバックナンバーにもありますように、歯周病が全身に及ぼす影響も分かってきております。糖尿病・心疾患・腎疾患・動脈硬化・胎児の低体重・早産・認知症などなどお口と全身の係わりがわかってきています。

【噛む事の意味】

噛むと言う行為は、食物、すなわち生きていくうえで必要な栄養を噛み砕き飲み込みやすくする咀嚼という作業です。咀嚼に必要なものはまず、歯ですね。そして舌、口の周りの筋肉です。咀嚼という行為は
1)目で見て熱いか冷たいか、硬いか柔らかいを認識します。(先行期)
2)口に取り込み、咀嚼して飲み込みやすいかたまりにする(準備期)
3)飲み込みやすくなったかたまりを口から喉の方に送り込む(口腔期)
4)かたまりを食道に送り込む(食道期)

この一連の作業を無意識のうちに行っています。これに加え忘れてならないのが唾液です。唾液の役割は
1)噛み砕いた食材を飲み込みやすい塊に形成する
2)ムチンと言うたんぱく質がお口の中を保湿し、食材などによって粘膜が傷つくのを防ぎます。
3)外部からの細菌の侵入に対しバリアとして働きます。
4)唾液中のカルシウムやリンの作用により、歯のエナメル質の再石灰化を促進しむし歯予防に役立ちます。
5)唾液中のパロチンという成分が、白内障の進行を遅らせる効果があります。
6)唾液中のIGF-1 という成分が老化防止や健康の維持に役立ちます。
7)唾液中のペルオキシターゼやカタラーゼが発がん性物質が発生させる活性酸素を減少させます。

普段無意識に行っている「食べる」という行為は単に栄養摂取にとどまらず、様々な健康効果をもたらします。 加えて、「噛む」という運動により脳への血流が3割上昇する事がわかっています。それにより、脳の活性化が促進され、認知症の予防や進行抑制に役立つ事もわかっています。昨今、サプリメントも浸透してきておりますが、あくまでも健康補助食品です。やはり【噛む】という作業をとおして、さまざまな健康効果とともに人生90年と言われる時代を生き抜きたいものです。平均寿命ではなく健康寿命を伸ばしていつまでも美味しく食べて健康な人生を送りましょう。


歯科医師会だより  2012年2月

 

口と全身の病気との関係

 

鹿児島県歯科医師会理事
特別相談員(担当分野:産業医学)
奥 猛志
(おく歯科 院長)

  歯や歯ぐきの病気が全身の健康に大きく影響していることが分かってきました。特に、歯周病の原因菌はとても強い毒素を持っており、それが全身のあちこちで悪さをします。


 

 

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歯周炎の存在が心臓病発症の危険性を増加させること、歯周病患者では血糖コントロールが困難であること、さらには歯周病は誤嚥性肺炎や、早産・低体重児出産のリスクを高めることも明らかになってきました。心臓病や糖尿病などのメタボリックシンドロームと歯周病との関係が取りざたされるようになり、メタボリックシンドロームの予防的観点からも、歯周病への早期対応は重要です。
歯周病になると歯ぐきの炎症によってTNF-αという炎症性サイトカイン(細胞の機能を調節するタンパク質)が出てきます。血液中にTNF-αが増えすぎるとインスリンの働きが弱くなり、糖(グルコース)の取り込みが悪くなり、高血糖となり糖尿病になりやすくなります。


 

 

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また、糖尿病になると免疫力が低下して、歯ぐきの炎症がおこりやすくなります。このように、糖尿病と歯周病とは互いに密接に関わりあっているのです。
一方、妊婦さんが歯周病になると、早産(妊娠37週未満の出産)やおなかの赤ちゃんが小さく生まれる(低体重児出産:2,500g未満)リスクが高まることが知られています。これは、歯周病で産生されるサイトカインやプロスタグランジンが通常の分娩の引き金になる物質(子宮の収縮などに関わる生理活性物質)と共通であるため、歯周病になるとそれらの物質が影響し、早期に分娩をひきおこすためと考えられています。


 

 

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歯科医師会だより  2011年10月

根管治療

  

鹿児島県歯科医師会 松下 幸誠
(高見馬場歯科 院長)

  むし歯は、外側のエナメル質という「歯の皮」をバイ菌がとかして突破すると、内部の象牙質という「歯の肉」の部分に達してしまいます。このように、むし歯は、進行を遅らせることはできても自然に治ることはありません。皮ふや粘膜でいえば、潰瘍(かいよう)の状態です。
さらに進行すると血管や神経の部分にばい菌が感染して激しい痛みと腐敗が始まります。さらに、根の先から体内へばい菌の攻撃がおよんで腫れたり熱が出たりして、体力が劣っていたりすると生命への危険があります。むし歯の治療は、ばい菌で破壊された部分やばい菌をきれいにとり、材料で封鎖したりかぶせたりして人工の「歯の皮」で二度とバイ菌が侵入しないようにしてあげることです。

しかしながら、血管や神経のある「歯髄」と呼ばれる部分は、一度破壊されると他の体の部分のように再生しませんから、ばい菌のすみかとなってしまい、根の病気を引き起こします。そのために被せる治療のまえに「根の治療」が必要となります。
平成21年度の全国の永久歯の「根管治療(こんかんちりょう)」の保険診療請求回数は、約1350万件です。実に日本人の、のべ10人に1人は1年間に「根の治療」を受けたことになります。さらに、驚くことに、そのうちの約50%の治療は失敗に終わり、抜歯や再治療が行われていることが調査で分かっています。
これをみると根の治療になったら最後、最終的には抜歯なのかと思われがちですが、欧米先進諸国では90~100%近くの成功率をあげています。この違いは何でしょう?日本の保険制度における根管治療は、根の病気はばい菌が原因であるという考えが前提の治療にはなってないことが最大の理由でしょう。もっと、簡単に言えば、保険制度での根管治療への評価の低さでしょう。
例をあげれば、根の治療用の器具は、先進国では使い捨てがあたりまえですが、日本では何度も滅菌・消毒して、変形した器具を爪のさきで延ばして整えているありさまです。日米での根管治療費の格差は、10~20倍の開きがあります。器具代や治療時間を考えると、今の我が国の保険制度での根管治療は悲惨な状況であると言わざるを得ません。
しかしながら、現在の我が国の財政を考えると今後、根管治療への評価が改善されるとは思えません。したがって、根管治療を一生懸命に取り組む一部の歯科医の間では、保険診療に見切りをつけ、歯の保存のために保険外診療で行う傾向にあります。
確かに、治療費は高額ですが、将来、インプラントや入れ歯に高額な治療費をかけることを考えると理にかなっているかもしれません。

では、成功率の低い根管治療や高額な治療費の根管治療を避けるにはどうしたらいいのでしょうか。
当たり前のことですが、むし歯にならないことです。事業所健診で勤労者の方々のお口を拝見すると、前回、むし歯を指摘されたにもかかわらず、受診していない方が多いのに驚かされます。多くのかたは「忙しくてなかなか・・」というのが共通の理由のようですがはたして・・?いまだに、「痛み」が受診動機になっている国民の意識が垣間見えます。
欧米のように一本の歯の治療に数十万円かかったとしたら、別な意味で「痛み」が伴いますから受診動機も高まるのかもしれませんね。そして、当然ながらむし歯予防にむかうことでしょう。
また、予防が行われれば医療費の軽減につながります。世界に誇る日本の医療制度は、安価な治療費がゆえにある意味で健康には役に立っていない一面もあるのかもしれません。

歯科医師会だより  2011年6月

 

 

歯科医師会だより

  

鹿児島県歯科医師会 常務理事 奥 猛志
(おく小児矯正歯科 院長)

事業所歯科健診のおすすめ

労働安全衛生法第66条第3項により、『塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗(ふつ)化水素、黄 りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務』に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び当該業務に就いた後六月以内ごとに一回、定期に、歯科医師による健康診断を行なわなければなりません。
鹿児島県歯科医師会では、事業所から健診の要望があればいつでも応じる体制をとっております。しかし、平成21年度は、11の事業者で401名の就業者に対してのみに事業所歯科健診が行 われただけでした。健診というとむし歯の数や、歯周病の有無で一喜一憂するという事が多いかもしれません。受診者の現在の口の中の状態が、なぜ起きたのかをまず知っていただくことが重要であると考えております。そのため、治しても又悪くなることを防ぐことに主眼をおいた健診システムがつくられています。

社員の健康のために事業所歯科健診をおすすめします。

歯に対する一般的認識は、歯が痛み始めてからその重大さに気づき、歯を喪失して初めて歯の大切さに気づくということを繰り返しています。特に、仕事に従事している方の多くは、時間的制約の中で健診や治療より仕事を優先し、ますますひどい状態になってしまいます。
事業所単位での歯科健診は、従業員の健康保持はもちろん、口臭やストレス予防のためにも大切な事業だと認識され、近年その需要が増えています。

「歯科健診」の目的

(1)歯科疾患の早期発見
健診により、むし歯、歯周病を早期発見することで、その後の治療が短期間で簡単に済むことになります。
(2)歯を長持ちさせ8020へ
健診、その後の治療により、口の中を常に健康に保つことができ、歯の寿命を延ばせます。 歯科健診実施事業所の従業員は健診を実施していない人と比較して抜ける歯の数が少なくなるという結果が出ています。奥歯が1本抜けただけでも、物を噛み砕く能率は半分以下になります。また、1本歯が抜けると他の歯のすべての寿命にも影響します。
(3)生活習慣の改善
自分の口の中の状態を知ることによって歯磨き習慣の見直し、または、歯磨きの動機づけになります。

事業所としてのメリット

(1)健康増進による生活習慣病の減少
50歳以降で歯を失う最大の原因は歯周病です。歯ぐきの健康は、食生活を楽しみ、活力を持って仕事をするために重要です。
(2)労働意欲の向上、作業能率の増進
「歯が痛くて仕事にならない」といった問題点が軽減されます。
(3)遅刻・早退・欠勤の減少
歯の治療のために仕事を休むことが少なくなります。
(4)事故・トラブルの減少
(5)明るい職場づくり
慢性疾患である歯周病は従業員に潜在的な不健康状態をもたらし、能率や職場の人間関係にも影響しています。特に歯周病は口臭に原因となる他、生活習慣病との関わりも強いことから、歯周病の対応が行われることによりさわやかな職場になります。
(6)治療期間・医療費の節約
治療に必要な歯科医療費のみでなく総医療費の軽減に繋がります。

歯科医師会だより  2010年11月

 

「産業歯科医」の役わり

  

鹿児島県歯科医師会 松下 幸誠
(高見馬場歯科 院長)

  みなさんは、「産業歯科医」という言葉をご存知でしょうか。法令的には、労働安全衛生法(歯科医師による健康診断)、同規則(産業医および産業歯科医、歯科医師による健康診断)、同施行令(健康診断を行うべき有害業務)などにその文字をみることができます。
「健康診断を行うべき有害業務」とは、「塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄リン、その他 歯またはその支持組織に有害なもののガス蒸気または粉じんを発散する場所における業務」を言います。
例えばメッキ工場のように特殊で限られた職場環境を指しますので、それ以外の一般の職場では「産業医」のような選任義務もありません。そのため、「産業歯科医」という言葉があまり知られていないのかもしれません。

ここで、産業衛生というところから離れて、歯や口と健康のかかわりを考えてみましょう。歯は、肺や心臓などの内臓と同じように身体の大切な器官の一つです。最大の歯の役目は、まずは咀しゃくですね。「よく噛む」ことは、だ液分泌を促し、食べ物の消化とそれを助ける働きがあります。だ液には、消化酵素のほか、抗菌物質や抗酸化物、アンチエイジングなどのホルモン等など体に有益なものが多く含まれています。
また、むし歯の予防にはだ液による中和作用が絶対に欠かせません。むずかしい話はこれくらいにして、「よく噛む」ことのメリットは、なんといっても食事をおいしくいただけるという幸せでしょう。
自然界では、食事を摂れない生き物は死に至るのが法則です。歯を失うことは死に直結するといわれる動物もおり、その記憶の残る人類は歯の痛みに敏感で恐怖を覚えるのだと、いう人もいます。食べ物を苦痛なく味わって食べるということこそ、生きていることの根本であり大原則です。おいしく食べられるという質の高い生活は、いろんな社会活動、精神活動に大きなよい結果をもたらすことは当然なことで健康で文化的な生活には欠かせません。

このことから、職域における健康ということを考え直してみると、質の高い労働は健康な食生活と「よく噛む」ことに支えられることがおわかりでしょう。生活習慣から引き起こされる歯科疾患は、メタボリックシンドロームと相互に深い関係があり、今後は職場の歯科健診は、むし歯や歯周病の早期発見から全身における健康にいかに関わっていくかという観点への転換が求められます。
これを受け日本歯科医師会では、新しく、歯科疾患の早期発見早期治療から疾病予防(一次予防)を中心とした歯科健診の具体的な指針「標準的な成人歯科健診プログラム・保健指導マニュアル」を作成いたしました。この新しい歯科健診は、20の質問に回答することで従来の病気発見型から、受診者に必要なグループ化を行う支援型歯科健診へと転換するものです。

ご興味のある方は以下のアドレスよりダウンロードできますのでご参考にしてください。
pc (https://www.jda.or.jp/program/)

日本歯科医師会は、産業衛生の分野でも、大いに国民の健康にお役に立っていきたいと思っております。酸蝕症など一部の狭い職場環境での「産業歯科医」ではなく、多くの働く方々の健康に貢献できる本当の「産業歯科医」を目指して参ります。
みなさんも、「よく噛む」ことで生きていることの喜びを実感できる幸せな毎日を送ってください。

歯科医師会だより  2010年6月

 

 

さんぽ鹿児島掲載分

歯周病と認知症

 


鹿児島県歯科医師会 常任理事 田中 勉
(田中歯科医院 院長)

  認知症とは、ちょっとした物忘れから始まり、日付けの間違い、場所や人、時間を覚えられなくなり、妄想まで現れてしまうという脳の病気です。歯周病を防ぐことが認知症を予防することにつながるのでないかと言われるようになってきました。

1)脳血管性認知症の原因は脳卒中。脳卒中予防には動脈硬化を防ぐことが重要です。
歯周病菌が動脈硬化を促進しますので、歯周病を防ぐことが動脈硬化のリスクを減らし、脳血管性認知症のリスクを減らすことにつながります。

2)アルツハイマー型認知症は、脳の萎縮がみられるのが特徴です。
認知機能検査であるMMSE(Mini-Mental State Examination)の点数(30点満点)をもとに70歳以上のかたを正常群(28点以上)軽度認知障害疑い群(22〜27点)認知症疑い群(21点 以下)の3群に分類して各群の現在歯数を算出すると、平均14.9本、13.2本、9.4本とMMSEの点数が低い群ほど現在歯数が少ない傾向を認めました。さらに脳のMRI検査を行った結果、現在歯数が少ないほど記憶に関係する海馬付近の容積が減少しているという報告があり、「噛むことで脳が刺激される が、歯が無くなり、歯の周辺の神経を失うと脳が刺激されなくなるのではないか」と述べています。

残存歯数とアルツハイマー型認知症の関係の調査でアルツハイマー型認知症の人は健康高齢者に比べて明らかに歯数が少ないという報告があります。噛むこと が脳を活性化することもわかってきています。噛むことで刺激が歯から脳へ伝わり、アセチルコリン(学習能力に深く関わっている伝達物質)を増やすということです。

また、40〜50歳代に歯を喪失した人は、喪失していない人に比べて20年後、30年後にアルツハイマー認知症になるリスクが2倍になっているという報告もあります。
歯を喪失する原因として30歳代までは「むし歯」によるものが多いのですが、40歳代からは歯周病による抜歯が急増すると言う鹿児島県での調査結果があります。そのことからも、現役世代の歯周病を予防することは認知症予防に効果があるのではないでしょうか。

  ここで歯周病について述べます。

3)歯周病とは歯肉と歯を支えている骨(歯槽骨)におこる病気で、痛くもかゆくも無く静かに進行するsilent diseaseです。
放置しておくと進行して歯槽骨が溶けて、歯がぐらぐらするようなり、食べものを噛めなくなります。成人の8割が罹患している疾患です。
自覚症状を記しますので自己チェックして健康保持に努めてください。

  1. 歯肉が赤く腫れている
  2. 歯磨きの時に出血する
  3. むず痒い感じがする
  4. 時々腫れて痛む
  5. 歯が長く伸びたように見える
  6. 歯がぐらぐら動く感じがする
  7. 歯と歯の間に食べ物がはさまる
  8. 歯肉を押さえると膿がでる
  9. 朝起きたときに口の中がねばついて変な味がする
  10. 口臭があると言われる

さんぽ鹿児島 第49号(2009年1月)掲載

 

からだの健康は歯と歯ぐきから

 


鹿児島県歯科医師会 常任理事 田中 勉
(田中歯科医院 院長)

生活習慣病の予防は歯周病対策から

歯周病菌がからだのさまざまな病気に影響していることがわかってきています。中でも、とくに注目を集めているのが生活習慣病との関係。歯周病予防が生活習慣病を防ぐことにつながります。歯周病の原因は歯周病菌だが、それを暴れさせるのは、「間食が多い、タバコを吸う、食べてから歯みがきしないで寝てしまう」などの悪い生活習慣です。歯周病予防は生活習慣を改めることから始まります。

歯周病予防は肥満の予防・解消につながる

食生活において歯周病予防を心がけると、肥満防止につながります。そのポイントは規則正しい食事をして、間食を減らし、よく噛んで食べることです。  間食を減らせば、食べかすが歯につく機会が減り、歯周病が防げます。余分な間食をやめるだけでも肥満防止になります。またしっかりとよく噛めば、唾液がよく出て口の中をきれいにし、歯周病を防ぎます。よく噛んで食べると満腹感が得られて、食べ過ぎが少なくなるので肥満予防・解消につながります。

歯周病を治療すると糖尿病もよくなる

歯周病は、網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳梗塞に次いで、糖尿病の第6番目の合併症といわれ、糖尿病が歯周病を引き起こすことは、よく知られています。糖尿病の人は、免疫力が低下して、歯ぐきの炎症がおこりやすくなるため、糖尿病が歯周病をもたらし、悪化させます。歯周病がひどくなると炎症性サイトカインTNF--αが出てきてインスリンの働きを妨げて、糖尿病の状態を悪くするといわれています。そこで、歯周病を改善すると、糖尿病もよくなることがあるという報告もあります

歯周病予防は心臓の病気も防ぐ

動脈硬化をおこしている心臓の血管壁から歯周病菌が30%の人に見つかっています。歯周病菌が血管を狭める作用を促進する悪化因子のひとつにあげられ、歯周病が狭心症や心筋梗塞などの心臓病のリスクを高めることもわかってきました。歯周病が悪化して、歯周病菌が血液中に流れ込み、心臓の内膜に付着し、心内膜炎を引き起こすこともあります。歯周病予防が心臓の病気を防ぐことにつながります。

歯周病はタバコ病のひとつ、歯周病の最大のリスクは喫煙

タバコががんや心臓病、脳血管の病気など原因になることはよく知られています。歯周病にとっても、喫煙はもっとも大きな危険因子です。  禁煙が歯と歯ぐきをを救い、全身も救うことになります。一日あたり20本以上吸うヘビースモーカーは吸わないひとの5倍以上歯周病になりやすいとの報告があります。

歯周病菌が妊娠・出産時にも悪影響

妊娠中は、つわりなどで歯磨きが難しくなりがちで、歯ぐきの炎症がおこりやすく、歯周病になる人が多くなります。さらに、妊婦さんが歯周病になると、おなかの赤ちゃんが、小さく生まれたり、早産となるリスクが高まることが知られています。歯周病の炎症で出てくるプロスタグランジンなどの物質が胎盤に影響するためであると考えられています。妊娠中は自分自身のためだけでなく、生まれてくる赤ちゃんのためにもお口の健康を保持しましょう。

以上8020推進財団発行の小冊子をまとめました。

 

さんぽ鹿児島 第48号(2008年10月)掲載

 

平成19年度 政府管掌保険歯科保健モデル事業のアンケートから

 


鹿児島県歯科医師会 地域歯科保健委員会(Ⅰ) 大久保 章朗
(大久保歯科口腔外科医院 院長)

  平成19年度も政府管掌保険歯科保健モデル事業を鹿児島県歯科医師会が社会保険事務局より委託をされ、平成20年2月から3月にかけて行いました。政管健保の被保険者について歯科疾患の予防及び早期発見・早期治療の取り組みを推進することにより、歯の喪失を予防し、健康の保持増進を図ること目的として、

  1. 歯の健康教育
  2. 歯科健診
  3. 歯の健康相談

の3つが行われました。鹿児島県歯科医師会では平成18年度に同事業が行われた事業所を中心にモデル事業実施事業所を選定しました。
44事業所でモデル事業を実施しました。健診受診者総数は647名で、申込者(737名)の88%でした。受診者に対し、このモデル事業についてのアンケートを行ましたので、その概要について述べてみたいと思います。

アンケートは588名(受診者の91%)の方からご回答いただきました。このモデル事業に以前参加したことがある人は236名(36.5%)で、そのうちの半数以上127名(53.8%)が検診の結果を受けて歯科受診をされています。また健診を受けた多くの方が歯磨きなどの口腔衛生に気をつけるようになったと回答されています。
今回の健診結果を受けて409名(63.2%)が治療に行くと回答されており、多くの方が口腔衛生に気をつけるようにすると回答されています。これはこのモデル事業の目的を十分達成していると考えられます。
歯の健康教育や歯の健康相談については8割近くの方が非常に良かったあるいは良かったと回答され、受診者から高い評価を受けています。さらに497名(76.8%)の方がこの様な歯科保健事業の継続を希望されています。

今日、歯周疾患が糖尿病をはじめとする様々な全身疾患と密接に関係することが明らかになり、健康長寿には口腔機能を健全に保つことが大切です。したがって歯科健診の果たす役割は大きく、このモデル事業だけでなく、全事業所で歯科健診が行われることが望まれます。

 

さんぽ鹿児島 第47号(2008年7月)掲載

 

歯垢による全身疾患の誘発-動物モデルを用いての検討-

 


鹿児島大学大学院医歯学総合研究科発生発達成育学講座
口腔保健推進学分野 於保 考彦
(長田 恵美  岡山 秀仁  井上 昌一)

はじめに

バイオフィルムの一種であるヒト歯垢中には約500種類をも超える菌が棲息しており、その数は湿重量1mgあたり約1億個にもおよぶと言われている。口腔内細菌が原因となり、心臓、肝臓、脳、腎臓、肺などにしばしば重篤な感染症が引き起こされることが臨床的に報告されており、近年、全身の健康管理における口腔衛生の重要性が注目されている。

しかしながら今までの報告は、主に臨床細菌学的知見に基づいて病巣から口腔内に存在する菌が同定されるがゆえに、口腔内細菌を感染源とする間接的なものであり、直接的に歯垢が心臓、肝臓、脳、腎臓、肺などに感染症を引き起こすことを実証したものはない。

また歯垢中には雑多な菌が棲息しているにもかかわらず、深部感染巣から検出される菌は特定の菌種に限定されている場合が殆どであり、なぜ混在する菌の中から比較的限定された菌種のみが深部局所に感染、定着し得るのかについても不明である。従来の”一種類の特定の菌のみ”を用いての研究は、多数の口腔常在菌が混在したバイオフィルムである”歯垢”による感染を再現しているとはいえない。そこで我々は歯垢による全身疾患誘発能を明らかにするために、ヒトの歯垢そのものを用いてマウスおよびラットにおける膿瘍、感染性心内膜炎、誤嚥性肺炎誘発実験を行い、その発症頻度の検討および感染部位から菌の分離、同定を行った。

ヒト歯垢による膿瘍、感染性心内膜炎、誤嚥性肺炎の誘発
膿瘍

全身的に健康で口腔内に問題のない成人(10人)から歯肉縁上プラークを採取し、それぞれの歯垢の懸濁液をマウスの背中に皮下注射したところ、計85匹中76匹(89.4%)に膿瘍が形成された。膿瘍から検出された菌の構成は元々の歯垢のそれとは異なり、歯垢中ではごくわずかにしか存在しないStreptococcus anginosus groupの菌(S. anginosus、S. constellatus 、S. intermediusの3種類)が優勢であった(図省略)。

臨床的にもS. anigonosus groupの菌はヒトの膿胸、肺膿瘍で優勢であり、肝膿瘍、脳膿瘍からも検出されている。歯垢を感染源として誘発された膿瘍から分離されたS. anginosus groupの菌はヒト好中球に貧食されにくいという特徴を持っており(図省略)、これがS. anginosus groupの”生き残り”に優位に働いた可能性がある。

感染性心内膜炎

全身的に健康で口腔内に問題のない成人(3人)から歯肉縁上プラークを採取し、それぞれの歯垢の懸濁液をあらかじめカテーテルで動脈弁に損傷を与えておいたラットの尾静脈から注入したところ、計27匹中26匹(96.3%)に感染性心内膜を発症した。
この内12匹は症状が進行し心不全を起こして死亡した。感染性心内膜炎を発症したラットの心臓を調べてみると、損傷を起こした心臓の動脈弁には感染疣贅(ゆうぜい)と呼ばれる白い固まりが形成されていた。これが感染性心内膜炎の感染巣である(図省略)。
感染疵贅から検出された菌の構成を調べてみると、元々の歯垢の菌種構成とは異なり、Streptococcus oralisが優勢であった(図省略)。臨床的にもS. oralisはStreptococcus sanguisと並んで高頻度に感染性心内膜炎の患者さんから検出される菌である。

誤嚥性肺炎

全身的に健康で口腔内に問題のない成人(3人)から歯肉縁上プラークを採取し、それぞれの歯垢の懸濁液をマウスの気管から肺に向けて注入したところ、計18匹の全てのマウスが肺炎を発症した。この内12匹 66.7%)は炎症が重篤化し死亡した。死亡したマウスの肺からは生存したマウスの肺よりも有意に多くの菌が検出された。肺から検出された菌は膿瘍や感染性心内膜炎の場合とは異なり、特定の菌種の優位性は認められなかった。

おわりに

我々は健康な成人の歯垢(歯肉縁上プラーク)は膿瘍、細菌性心内膜炎、そして誤嚥性肺炎を誘発する病原性を有していることを動物モデルによって明らかにした。特筆すべきはこれらの実験で用いた歯垢懸濁液中に含まれる菌数は、ヒト唾液の0.01から0.1ml中に存在する数に相当するものであったことである。身体の免疫機能が低下している高齢者や有病者においては、歯垢の為害作用をより強く受ける可能性がある。

我々の教室では”口腔衛生状態が全身の健康に及ぼす影響”をテーマとした研究を進めている。これらの研究で得られた知見が、「口腔衛生の実践はう蝕、歯周病の予防管理のみならず、全身の健康管理のために重要である」ことの科学的エビデンスとなり、患者さんへの動機付け、あるいは高齢者および有病者への口腔ケアの重要性を説くために活用されることを期待している。

 

さんぽ鹿児島 第46号(2008年4月)掲載

 

歯周病と糖尿病

 


鹿児島県歯科医師会 地域歯科保健委員会(Ⅰ) 大久保 章朗
(大久保歯科口腔外科医院 院長)

  最近の研究で歯周病と糖尿病は密接に関連していることがわかってきました。日本歯科医師会では「なくそう減らそう糖尿病 なくそう減らそう歯周病」シンポジウムの開催、日本糖尿病対策推進会議への参画、日本糖尿病協会との連携を通じて歯周病と糖尿病の関係について啓発を行っています。
また、日本糖尿病協会歯科医師登録医制度も始まり、糖尿病を考慮した歯科治療、歯周病治療が充実してきました。

歯周病と糖尿病は初期症状がなく、中年以降に多く、生活習慣病の側面があり、そのコントロールには自己管理が重要であることが類似点としてあげられます。糖尿病は歯周病に影響を及ぼします。

  1. 糖尿病に罹っている人は、糖尿病でない人に比べて歯周病に罹りやすくなります。
  2. 糖尿に罹っている人は糖尿病でない人に比べて歯周病がより進行しやすくなります。
  3. 血糖コントロールが悪いと歯周病が進行するリスクが高まります。

また、歯周病も糖尿病に影響を及ぼします。

  1. 糖尿病に罹っていて進行した歯周病もある人が歯周病の治療をしないで放置すると、血糖のコントロールが悪化します。
  2. 糖尿病に罹っていて歯周病もある人に歯周病の治療をすると、歯周病が治っていくとともに血糖のコントロールも改善します。

糖尿病に罹っている人の口の中の特徴は

  1. 傷の治りが悪く、細菌感染しやすい
  2. 唾液の量が低下して、口が渇きやすく、むし歯や歯周病になりやすい
  3. 歯周病が進行しやすい

などです。

歯周病のチェックリストを掲載しておきますので、チェックしてみてください。点数の高い人は早めに歯科医院を受診して、詳しく検査してもらいましょう。

歯周病チェックリスト
 チェック項目  点数
 1  朝起きたとき口の中がねばねばする  1  歯周病が疑われる症状
 2  口臭があると言われたことがある  1
 3  食事のあと、歯の間にものがはさまる  2
 4  歯肉から出血することがある  3  歯周病の代表的症状
 5  歯肉がはれることがある  4
 6  ぐらつく歯がある  5
 7  あまり歯磨きをしない  1  歯周病にかかりやすい要因
 8  タバコをよく吸う  1
 9  歯科医院には歯が痛いときしか行かない  1
 10  ストレスを感じることが多い  1
 11  糖尿病にかかっている  1
 12  骨密度が低いと言われたことがある  1

点数を合計してください。

【0点】      今は歯周病の心配はありません。しかし、油断禁物。歯周病のごく初期には自覚症状がありません。歯みがきを欠かさず、定期的に歯科でチェックを受けましょう
【1〜4点】    歯周病になっているか、なりやすい要因を持っています。歯みがきと定期的な歯科検診を忘れずに
【5〜9点】    歯周病にかかっている可能性大、歯科を受診して下さい。歯みがきもしっかり行いましょう.
【10点以上】  歯周病がかなり進行している可能性があります。必ず歯科を受診し、毎食後ていねいに歯をみがいて下さい.

 

さんぽ鹿児島 第45号(2008年1月)掲載