お知らせ

令和6年12月

産業医雑感

      仮屋 雅仁
(南薩医師会幹事)
(かりや内科クリニック院長)

今年(2024年)は、元旦に甚大な被害をもたらしたM7.6の能登半島地震に始まり、米国トランプ大統領の再登板、日本は自民・公明党の衆議院過半数割れによる政局不安定、全く予断を許さない年になってしまった。

私は開業前に産業医の資格を取得して、四半世紀以上経過した。まとまった単位取得のために、北九州の産業医科大学ラマツィーニホールにて集中講義を受けたが、この立派な講堂は大学の病理学大学院生時代にスライドカンファランスという研究会でも訪れたことのある建物である。因みにRamazzini(1633-1714)は産業医の父と呼ばれているイタリアの医師である。その後、息子が6年間お世話になる大学とはその時は想像もしなかった。

私は現在、100人余りの職員が働く半導体・電子部品製作工場と50人余りの菓子工場の嘱託産業医をしている。半導体工場の職員数は数年前の全世界規模のコロナ流行に伴って中国のサプライチェーンの停滞で、日本国内で部品調達の依頼増加で、一時期1.5倍程度職員数が増えたが、コロナの流行が収まると、従業員数がまた流行前に戻った。職員の2割程度、インドネシア人、ベトナム人などの外国人が占めている。工場の安定的運営のため職員数確保には苦慮しているようであり、当方の医療機関と同様働き手不足を感じる。

先日、インフルエンザワクチンの集団接種を行ったが、私はインドネシア語、ベトナム語は話せない、英語も通じない状態で、通訳不在で、どのくらい外国人とのコミュニケーションがとれたかわからないが、痛みを伴う医療行為で、消滅自治体に指定された南九州市、日本人労働者数の減少で、今後も外国人労働者数の増加が見込まれ、改善点と思われた。彼の国は、日本同様にインフルエンザ流行前の時期に毎年ワクチンをする習慣や制度があるのかは不明である。

今月(2024年11月)になって、近くの菓子工場の従業員数が50人を超え、産業医をすることになり、初回の職場巡視を行った。たくさんのたい焼きをたくさんのガスコンロで焼いて作っていたが、50℃と室温が高く、冬場はまだしも四季を問わず、職員が熱中症にならないか不安であった。そこで作られた菓子はコンビニにて販売される商品をお土産でもらってありがたく頂いたが、甘くて美味しかったが、私の場合は血糖値が上がり、食べ過ぎないように気をつけなければならない。「美味しいものは体に悪い」

健康診断も重要な産業医の仕事であるが、前述の菓子工場のある職員の健康診断に際し要精密の判定に対して、「精密検査を受けることは義務ですか」と聞かれた。義務ではないかもしれないが、精密検査を受けないことで自分に不利益になるとは考えないのか不思議である。また、労務中に心身の不調でイベントが起こった時に労災の可能性もあり、会社にとっても従業員が医療機関受診することが望ましい。

これからも不慣れな産業医ではあるが、医療業界とは違う職場巡視を通して、社会を見るいい機会と思った。

産業医だより 2024年12月