令和7年8月
奄美の産業医として思うこと
嘉川 潤一
(大島郡医師会 副会長)
(よしかわクリニック院長)
奄美市で産業医活動を行っているよしかわクリニックの嘉川です。私はいつか産業医が役にたつからと先輩に言われ、鹿児島大学病院に勤務している間に夏休みを利用して、産業医科大学で集中研修を受け産業医を取得しました。
奄美は当初、単位の取得が困難で私は土日を利用して東京まで出かけることもありました。今は鹿児島から講師の先生方が奄美までいらして研修会も開いていただけたり、WEB参加ができることも有難い。最近は奄美に居るだけで更新できるようになってきました。
開業して約20年になりますが、最初の頃は産業医の依頼がありませんでしたが、8年ほど前にいきなり3施設で職員合計1000人以上の産業医となりました。主に安全衛生委員会の出席、長時間勤務、高ストレスの方との面接、健診などを行っています。コロナ禍の頃、長時間勤務はかなり減りましたが、最近はまた多くなってきました。長時間勤務が多いからストレスが多いかというと必ずしもそうではないようです。職場の対人関係、職場の人数が足りない、仕事の分担がうまくいかず個人の仕事量の負担が多くなり、責任感の強い方は一人で仕事を抱えてしまいます。また職場巡視で問題となるのが喫煙所などもあります。屋根がない場所に設置されているので私は喫煙者ではありませんが、雨の日には傘を差しながらタバコを吸っているのを見ると少し気の毒に思います。
職場の健診で、高血圧や糖尿病など今すぐにでも治療の必要な職員を見かけます。そういう方がすべて病院受診されていれば良いのですが、なかなかそうではありません。また生活習慣病は健診でわかりますが、早期癌の発見はそうはいきません。残念ながら、奄美には予防的な早期癌の発見に関与している施設が少ない現状です。私は胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査などを行っていますが、見つかったときには手遅れな症例を何例も経験しています。私は40歳以上の方は一度大腸内視鏡検査を受けた方が良いと思っています。特に今まで大腸内視鏡検査を受けたことがない方、特に男性の方は受けた方が良いと思います。高率に何かあることが多い。奄美では若い男性はお酒を飲む方も多く、健康寿命を縮めている原因の一つであると思われます。
産業医確保の問題点としては、奄美は医師の高齢化も進んで開業医が減っています。奄美の産業医は20人程いますが 50人以上の企業・施設は少ない。産業医の依頼は平日の勤務時間内にあるのが通常です。開業医が平日1-2時間診療を空けるのはかなりの痛手でとなります。開業医に働き方改革はなく、経営、人員確保、診療等のストレスも多く、診療後の会議などいわゆる残業時間も多くとられます。今は、仕事の負担を減らし自身の健康管理のため平日を休みにする病院も多くみられます。産業医を継続するためには研修会もこなさなければならず、これからの奄美の開業医の産業医不足が進まないことを願っております。
産業医だより 2025年8月