お知らせ

令和3年4月

日医認定産業医アンケートにみる現在の問題点

佐藤 大輔  

(鹿児島市医師会)
(公益社団法人いちょうの樹 メンタルホスピタル鹿児島)

 

この機会に、産業医の定義、要件、職務を改めて確認してみたい。

産業医とは、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を言い、労働安全衛生法により、一定の規模の事業場には産業医の選任が義務付けられている。要件として、産業医となるためには、事業場において労働者の健康管理等を行う産業医の専門性を確保するため、医師であることに加え、専門的医学知識について法律で定める一定の要件を備えなければならない。職務は、労働安全衛生規則第14条第1項に規定されており、「医学に関する専門的知識を必要とするもの」と定められている。また、産業医の職場巡視等について、労働安全衛生規則第15条第1項で次のとおり定められており、産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害なおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならないとある。

定義・要件はその通りだとしても、職務を考えてみると、十分に果たされているのであろうか。特に巡視に関しては、様々な問題があり、厳格に運用されているとは言えないのではないだろうか。そこで今回、令和2年3月に鹿児島県医師会が実施した日医認定産業医アンケートの結果から、現在の主な問題点を拾い上げてみたい。

まず、産業医研修会について、問題ありが24%あり、その内容は「時間帯の問題」「実地研修が少ない」「会場が遠い」が上げられている。それに対する具体的な意見・希望として「土日実施」「19時以降」「テレビ放映」「まとめて単位取得できる研修会がない」などが上がっている。

次に現在事業所と契約している産業医は68%で、事業規模ごとの契約数は50人未満が96(44%)、50人以上~100人未満が69(32%)と二つで約4分の3を占めている。一方、契約していない産業医にその理由を問うと、「日常診療で多忙のため」「事業所からの依頼がないため」で約9割を占めている。その他の理由として「事業所の担当者に問題あり、契約更新しなかった」という意見もみられた。

事業との契約(報酬)等での問題としては、「報酬が安すぎる」「事業所により職務内容や報酬に差がある」という意見がある一方、希望額の再検討に関しては、「必要なし」との答えが82%に上っている。ちなみに、再検討してほしいと答えた人の具体的な希望額は、従業員数50人未満の事業所では4~6万円、50~99人の事業所では5~6万円であったが、令和元年に行った調査では、希望額にも産業医によって3~6倍の差がみられている。

その他、「鹿児島県医師会の上限・報酬のめやす(ガイドライン)を教えて欲しい」「職場に安衛委員会を設置していないケースを放置しないで欲しい」「産業医活動を理解していない」「巡回させてくれない」等、事業所側の問題が多く指摘される一方、「仕事を紹介してほしい」「メンタルヘルス・ストレスチェック後の対応に苦慮する」など、産業医側の問題もあり、これらの問題に取り組んでいく必要性がある。(特にストレスチェックへの対応が産業医のストレスになるという皮肉な結果にならないように)。

問題点を大まかにまとめると、①事業所への産業医の業務の周知徹底、②事業所と産業医のマッチング(時間、場所など)、③報酬額の基準、④メンタルヘルスへの具体的対応(ストレスチェック後の対応)、に絞られるのではないかと思われる。

さらに複数の職場を掛け持ちしている人やコロナ禍で注目されている、一見時間や場所に縛られない自由な働き方のように見えるデリバリーなどの配達員などの非正規雇用労働者の問題も重要である。健康管理については労働安全衛生法による規定が示されているが、法的な整備等が後手に回っているため、実際の現場ではさまざまな問題が提起されている。産業医としてというより、国として医師会としてどう対応していくのか、今一度、考える時期に来ているのではないだろうか。

今後、働き方改革や新型コロナウイルスを含む感染症対策など、産業医が果たす役割はますます大きくなっていくと思われるが、定義にもあるように、「事業場において労働者の健康管理」が正規・非正規雇用の区別なく適切に行われることを願いたい。

 

産業医だより 2021年4月