メールレター第170号
鹿児島産業保健総合支援センター メールレター第170号 2017/05/01
発行:鹿児島産業保健総合支援センター 所長 草野 健
相談員からのメッセージ
糖の異常を指摘されたら専門医へ
産業保健相談員 橋口 良紘
(担当分野:産業医学)
糖尿病患者の80%以上を占める2型糖尿病は長年にわたる不摂生から起こってきます。肥満が大敵ですが、遺伝もあります。両親が糖尿病の場合75%以上、片親が糖尿病の場合25%以上の確率で発病します。糖尿病の推定患者数は全国で1,870万人、年間死亡者1万2,879人 治療を受けている人は246万9,000人、人工透析を始めた人は1万4,968人、透析を受けている人は平成18年に8万人を超えています。視力障害の発生は3,000人という数字が上がっています。
糖尿病は治りません。血糖が正常化してもそれは一時的なものです。初期は症状がありません。健診で異常を指摘されたら専門医に受診しましょう。高血糖が続くと有害な物質が血管の中に蓄積されてきて、それらが複雑に絡みあって血管の障害を引き起こします。そうすると色々な症状が出てきます。合併症として発症するのです。糖尿病でこわいのは合併症であり、糖尿病の治療はこの合併症を起こさせない、または悪化させないようにすることです。持続して血糖値をコントロールしていると合併症の発症を先送りでき予防できるのです。
糖尿病合併症は「神経」、「目」、「腎臓」に起こります。これらは細かい血管が密集した臓器で、高血糖が長期間続くとこれらの血管が損傷されます。三大合併症と呼ばれます。最初の糖尿病性神経障害は合併症の中で最も早く5年ぐらいで出てきます。末梢神経障害の障害が多く、手足のしびれや痛み、けがややけどの痛みに気づかない、こむらがえり、ほてりや冷感などです。そのほか自律神経障害として筋肉の萎縮、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常、インポテンツなどの症状も現れます。
おすすめ教材(無料貸出し等)
当センターでは、産業保健に関する図書、ビデオ・DVDを無料にて閲覧・貸出ができます。是非ご利用ください。
面接指導版 嘱託産業医のためのストレスチェック実務Q&A
(図書:2-203,中央労働災害防止協会、2016年,175頁)
【内容】
産業保健の実務に必要な法令・通達等の内容を表形式でコンパクトにまとめています。また、参考となる凡例等を「事例」として掲載しています。
熱中症をあなどるな 熱中症の危険と脳梗塞
(DVD:5-40,労働調査会,15分)
【内容】
熱中症は、本人が気づかないうちに体温が急上昇して、体内のミネラルが不足し急速に脱水症状におちいり、死にいたることもある恐ろしい急性疾患なのです。このDVDでは熱中症の発生しやすい条件や時間帯などを分析して、その予防対策を示しています。
5月のセンター関連行事
- 5月1日(月):メールレター第170号配信
- 5月11日(木):地域産業保健センターコーディネーター会議
- 5月11日(木):労働局合同会議
- 5月12日(金):地域産業保健センターコーディネーター会議
研修セミナーのご案内
すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(特に標記のない時間は、14:00~16:00,場所は光健ボイスビルです)
(5月)
▽5月13日(土):熱中症指標計の取扱法、事務所衛生基準規則の工学的作業環境測定の実務及びたばこ煙濃度測定器の取扱法の実務 鹿児島市医師会館
▽5月24日(水):労働安全衛生法における医師による2つの面接指導【長友先生】
▽5月24日(水)16時10分~17時10分:労働衛生関係法令【中村副所長】
▼5月26日(金):メンタルヘルス・カウンセリングⅠ~カウンセリングのいろいろとその特徴~【久留先生】
(6月)
○6月23日(金):がん罹患100万人時代、告知されたときのがん治療と仕事両立のための情報あつめ(ロールプレイ)【德永先生】
▽6月29日(木):性格と人格~「心の癖」を知ろう~【赤崎先生】
6/23(金)の研修会はTHPレベルアップ研修を兼ねています。
▽…産業医対象で、産業医認定単位があります。
▼…衛生管理者、産業医対象ですが、産業医認定単位はあります。
○…保健師対象ですが、産業医認定単位はあります。
各研修会には定員があります。申し込みがないまま当日来られた場合、会場や資料の関係で受講できない場合がありますので必ず申込みをしてください。
キャンセル待ちの方がおられますので、受講できなくなった場合は必ずご連絡下さい。連絡なしのキャンセルが続いた場合は、今後研修受講をお断りすることもあります。
お知らせ
職業生活と家庭生活の両立支援や女性の活躍に取り組む事業主の皆さまへ
平成29年度両立支援等助成金のご案内(厚生労働省)
従業員の職業生活と家庭生活の両立を支援するための取組を実施した事業主等に対して支給する助成金は、次の5種類です。
① 出生時両立支援コース
② 会議離職防止支援コース
③ 育児休業等支援コース
④ 再雇用者評価処遇コース
⑤ 事業所内保育施設コース
⑥ 助成活躍速化コース
詳細⇒http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=231253
「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」が公表されました(厚生労働省)
厚生労働省から、事業主が従業員の転勤の在り方を見直す際に参考にしてもらうためにまとめた資料「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」が公表されました。
この資料は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015年改訂版)」において、「転勤の実態調査を進めていき、企業の経営判断にも配慮しつつ、労働者の仕事と家庭生活の両立に資する『転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)』の策定を目指す」としていることを受け、平成29年1月から3月にかけて検討を行った研究会の報告書を踏まえて取りまとめられたものです。
この資料は、
① 転勤に関する雇用管理について踏まえるべき法規範
② 転勤に関する雇用管理を考える際の基本的な視点
③ 転勤に関する雇用管理のポイント
の3つのパートで構成され、転勤に関する雇用管理の事例などが紹介されています。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000160213.html
ストレスチェック制度の実施プログラム(「厚生労働省版ストレスチェック実施
プログラム」バージョンアップVer.2.0)のバージョンアップ版などが
公開されました(厚生労働省)
平成27年12月より施行のストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知してミスからのストレスの状況について気づきを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげる取組です。 今般、厚生労働省から、ストレスチェック制度の実施プログラム(「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」バージョンアップVer.2.0)のバージョンアップ版などが公開されました。
詳細⇒http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=231349
平成29年度「全国安全週間」が7月に実施されます(厚生労働省)
厚生労働省では、7月1日(土)から7日(金)までを「全国安全週間」に、6月1日(木)から30日(金)までを準備期間に、それぞれ設定し、各職場で巡視やスローガンの掲示、労働安全に関する講習会の開催など、様々な取組みを行うこととしています。
今年度の「全国安全週間」スローガン
「組織で進める安全管理 みんなで取り組む安全活動 未来へつなげよう安全文化」
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000158876.html
「治療と就労の両立支援マニュアル」が作成されました(労働者健康安全機構)
労働者健康安全機構では、「がん、糖尿病、脳卒中、メンタルヘルス」の疾病4分野についての「治療と就労の両立支援マニュアル」を作成しました。 このマニュアルでは、医療従事者のみならず、企業の労務管理担当者や産業保健スタッフの方々にも、両立支援の基本的な取組方法について、ご理解いただけるよう構成されています。
詳細⇒https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/1047/Default.aspx
石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアルの改訂版が厚生労働省から公表されました(厚生労働省)
建築物等の解体等の作業における労働者の石綿ばく露防止措置については、石綿障害予防規則や厚生労働大臣指針が定められていますが、今般、石綿ばく露防止を一層徹底するため、石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアルが改訂され、その2.10版が厚生労働省ウェブサイトに掲載されました。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/jigyo/ryuijikou/
医師、薬剤師等(国家試験免除の資格のある方)は、作業環境測定士登録講習を
受講することで、作業環境測定士の資格を取得することができます。
(一般社団法人西日本産業衛生会)
詳細⇒http://www.nishieikai.or.jp/iryo/course.html
第66回がん対策推進協議会(資料)(厚生労働省)
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000161874.html
平成29年4月から雇用保険料率が引き下がります(鹿児島労働局)
詳細⇒http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_hoken/2017-0403-3_2.html
受動喫煙防止対策の強化について(基本的な考え方の案)(厚生労働省))
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000153190.html
「受動喫煙防止対策助成金」のご案内について(厚生労働省)
「受動喫煙防止対策助成金」の平成29年度の申請受付が開始されています。詳しくは、鹿児島労働局雇用環境・均等室並びに鹿児島労働局労働基準部健康安全課までお問い合わせください。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html
厚生統計要覧(平成28年度)が公開されました(厚生労働省)
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/index-kousei.html
労災疾病等医学研究普及サイトのご案内(独立行政法人労働者健康安全機構)
詳細⇒http://www.research.johas.go.jp/index.html
独立行政法人労働者健康安全機構から「職場高血圧に関する調査研究結果の
概要(「月曜日の午前に要注意!」)が公開されました(独立行政法人労働者健康安全機構)
詳細⇒http://www.research.johas.go.jp/seikatsu/docs/monday.pdf
平成29年度全国労働衛生週間のスローガンの募集について(厚生労働省)
全国労働衛生週間は、厚生労働省と中央労働災害防止協会の主唱により、労働者の健康管理や職場環境の改善等の労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での自主的な活動を促して労働者の健康の確保等を図ることを目的として、昭和25年から実施されており、本年で68回を迎えます。
○ 全国労働衛生週間 10月1日から10月7日まで
○ 全国労働衛生週間準備期間 9月1日から9月30日で
厚生労働省は、この労働衛生週間を実施するにあたり、国民のみなさまが改めて労働衛生の重要性について考えていただく契機となるようなスローガンをインターネット等により広く一般から募集しています。
詳細⇒http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=231731
ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等(厚生労働省)
ストレスチェック制度、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」、働く人のメンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する相談窓口、過重労働による健康障害防止対策などの内容が掲載されています。
詳細⇒http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=231679
建築物等の解体等の作業での労働者の石綿ばく露防止の実施について(厚生労働省)
「建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」(技術上の指針公示第21 号)については、石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアルによりその具体的留意事項などが示されていましたが、今般、このマニュアルが改正され、石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.10 版]として厚生労働省ウェブサイトに掲載されました。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouk ijun/sekimen/jigyo/ryuijikou/index.html
特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等が改正されました(厚生労働省)
三酸化ニアンチモンを特定化学物質(管理第2類物質)に追加し、作業環境測定の実施、発散抑制措置、特殊健康診断の実施等を義務付ける特定化学物質障害予防規則及び作業環境測定基準等が改正(施行日:平成29年6月1日)されました。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000163262.html
平成28年における鹿児島県内の業種別労働災害発生状況が発表されました。(鹿児島労働局)
平成28年における鹿児島県内の業種別労働災害発生状況が発表されました。 休業見込日数4日以上の死傷者数は1,985人で、死亡者数は20人となり、平成27年と比べ、死傷者数は234人(13.4%)増加しています。第12次労働災害防止計画では、平成29年時点で死傷者数を平成24年よりも15.0%以上減少させることを目標としていますが、4年経過時点で、16.7%増加するなど、目標を達成することには相当の取組が必要となっています。
詳細⇒http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/toukei/saigaitoukei_jirei.html
メンタルヘルス対策における登録相談機関のご案内(再掲)
登録相談機関とは、国の基準を満たしていることが確認された機関で、事業者と契約を結び、有料で、面接による労働者の心の健康に関する相談を行う専門機関です。
詳細⇒https://kagoshimas.johas.go.jp/about/mental/organ_list.html
情報誌「産業保健21」をお送りします! (再掲)
情報誌「産業保健21」は、産業医をはじめ、保健師、看護師、労務担当者等の労働者の健康確保に携わっている皆様方に、産業保健情報を提供することを目的として、独立行政法人労働者健康安全機構が発行しています。
申込・案内⇒https://kagoshimas.johas.go.jp/about/sanpo/activity.html
鹿児島県衛生管理担当者協議会(事務局:鹿児島産業保健総合支援センター)(再掲)
本協議会は、事業場における高年齢化、技術革新に伴う職場環境及び作業の変化による労働衛生上の諸問題に対応するため、衛生管理者,安全衛生推進者,衛生推進者等(以下「衛生管理担当者」という)に対する情報の提供、その他の支援を行うことによって、事業場における労働衛生管理の充実等を図るとともに、衛生管理者制度の発展に寄与することを目的としています。 多くの衛生管理担当者に入会(会費無料)いただきますようお願いいたします。
申込・案内⇒https://kagoshimas.johas.go.jp/about/cat422/post_7.html
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」開設中!(再掲)
厚生労働省の委託により、(社)日本産業カウンセラー協会において、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』が開設されています。
映像メッセージ『わたしの体験』、シリーズインタビュー『生きる力』のサイト等、あらゆる方に役立つメンタルヘルス関連の最新情報を提供しています。
また、働く人のメンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する電話相談窓口として平成27年9月に開設された「こころほっとライン」が平成28年10月1日から「こころの耳電話相談」に名称変更されています。
詳細⇒http://kokoro.mhlw.go.jp/
電話相談窓口⇒https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/
【東日本大震災等の関連情報窓口(参考)】
所長よりひと言
春の晴れは三日と続かない、とは古来言われてきたが、確かに変わり易い天候が続き、特に昼夜の寒暖差の大きさに惑わされた4月でした。自然界の異変は為政者の所為とは古代中国以来の言い伝えですが、現今の国際情勢は当に気象と連動しているかの様です。
私達産業保健に関わる者にとっても様々な産業保健上の課題が顕在化し、それに対して政府が相次いで種々の施策を打ち出してきました。一昨年の「ストレスチェック制度」も未だに有効な活用法の模索が続き明確な方法論がはっきりしないうちに今度は「がん治療と就労の両立支援」という施策が本格化することになりました。緩やかな回復傾向という経済面も中央の一人勝ち的状況で地方の中小零細事業場では経営に苦慮している中での矢継ぎ早の施策です。事業場にとっては、その重要性は理解できても有効な方法で取り組むことはかなり厳しいことです。一方、医学的立場から産業保健活動を支援・指導する産業医にとっても、これらの施策は悩ましいものです。施策自体の主旨目的は医学上大いに評価できますが、産業医の多くは臨床医です。特に鹿児島県で現に活動している産業医の大半は臨床医でしかも開業医です。日常の臨床業務は各種の管理強化により病者と向き合う以外の業務が大幅に増加し、加えて診療上の色々なガイドライン遵守の圧力もあり、以前にも増して多忙になっています。産業医として割ける時間が減少する中での産業医業務の増加は解決困難な大きな「壁」となりそうです。
昨年、鹿児島県の産業医活動の実態を解明する目的で調査を行いました。その集計作業中ですが、産業医が思うほどには事業場側は産業医への親近感や信頼感を持っていないようです。産業医の「熱意」は十分には通じていないことを示唆しているようです。また、多くの産業医は「時間がない」ことが最大の悩みで、産業医個々のスキルアップで克服していけるような産業保健状況ではないようです。
労働人口は今後何十年かが減少を続けると予想されています。AIの進化により労働生産性が上昇して労働人口減少を充分に補えるものなら兎も角、時間当たり労働生産性は低下の一方です。日本の労働者の健康を守るためには何よりも時間当たり生産性向上が急務と言えますが、そのような政策が実行されるまでは眼前の「労働による健康破壊」を少しでも止める活動を現場のスタッフ自らが工夫し、協力して努力することが重要です。産保センターとしても対応すべき活動が増加してもセンタースタッフは現有人員のままで対応しなければならないのですが、仕事の能率化も図りながら医師会や労働局は当然ですが、その他のあらゆる機関等と協力して必要な支援を強化しようと思っています。