お知らせ

メールレター第172号

鹿児島産業保健総合支援センター メールレター第172号   2017/07/04
発行:鹿児島産業保健総合支援センター 所長 草野 健

短冊


相談員からのメッセージ confident

自分の歯は何本ありますか?

産業保健相談員 松下 幸誠
(担当分野:産業医学)

 

  あなたは
Q1.かんで食べる時の状態はどれに当てはまりますか。
<回答> ①何でもかんで食べることができる ②一部かめない食べ物がある
Q2.自分の歯は何本ありますか(※親知らずは含みません)。
<回答> ①28本②20~27本③10~19本④9本以下
 上記は、第3期特定健診・特定保健指導に向けた見直しで新たに加えられた質問票の項目です。Q1についての質問根拠には、「歯の本数の減少が進むとともに咀嚼機能が低下すると、咀嚼可能な食品が少なくなったり、軟食へ移行する。これらにより、脂質やエネルギー摂取の増加や、野菜の摂取量の減少を介して、肥満や循環器疾患脂肪のリスク因子になる」とあります。歯の喪失のメタボリックシンドロームにおける問題は、軟食傾向による糖質摂取過剰とタンパク質やビタミン、ミネラル等の栄養不足の傾向がみられることです。さらに、これが高ずるとフレイル(可逆的心身虚弱)に先んじて発生する滑舌低下、食べこぼし、軽度のむせの頻度の増加、咀嚼能力の低下から始まるオーラルフレイル(口腔機能低下)の状態にも関係してきます。これはロコモティブシンドロームやサルコペニアの前兆とも考えられている一方で、予防可能であり早期に介入すれば改善します。これにより欠損歯部分の歯科補綴治療の重要性も再評価されてきています。Q2についての質問根拠には、「歯が少ない者は、保有歯数が多い者と比較し、死亡率や循環器疾患の死亡リスクが高い」とあります。死亡リスクと歯の本数とに何の根拠があるのかわかりにくいですが、Q1とも関連して、医療費や様々な疾患の罹患率と歯の機能歯数との有意な各方面からの調査結果を背景としていると思われます。自分の手足の指の本数は知っていても歯の本数を知らない、すなわち口の健康に関心がない、口腔衛生の習慣がない、歯周病の発生、病気にかかりやすい、医療費がかかるという悪い循環を断ち切る実にシンプルで効果的な質問です。歯周病は細菌による炎症性疾患でありますが、メタボ対策の大きなターゲットの一つ内臓脂肪も同じく、炎症性サイトカインによる慢性炎症が問題です。この局所的な炎症の「くすぶり」は両者とも生活習慣と結び付き4大疾病などの主要な疾患を引き起こします。「病は口から」の古くて新しい口腔保健の概念は、メタボリックシンドロームの公衆衛生上の最後のフロンティアでしょう。まもなくやってくる、我が国の社会保障制度の根幹を揺るがす2025年問題は、団塊世代の健康寿命をいかに延伸させるか、寝たきりにしないかにかかっていると言われます。このような特定健診の見直しは、すでに職域を離れてしまった団塊の世代を思えば20年遅きに失した感はありますが、産業衛生分野が今、すぐにでも取り組みを強化しなければならない未病対策の一つでしょう。今後、歯周病対策と口腔機能向上対策は、国家的社会保障政策の柱の一つになっていくものと思われます。
(執筆協力:鹿児島健口保健食育懇話会)
参照:鹿児島産業保健総合支援センターHP「さんぽ通信」(歯科医師会だより)
https://kagoshimas.johas.go.jp/magazine/dentist/post_11.html


おすすめ教材(無料貸出し等) book cd

  当センターでは、産業保健に関する図書、ビデオ・DVDを無料にて閲覧・貸出ができます。是非ご利用ください。

がんに罹患した労働者に対する治療と就労の両立支援マニュアル

(図書:1-305,労働者健康安全機構、2017年,114頁)

【内容】
 がんに罹患した労働者に対して治療を受けながら、生き生きと就労を続けられるように両立支援コーディネーターの必要性を事例を交えながら解説しています。

エゴグラムで気づこう!元気な職場をつくるメンタルヘルス3
ストレス時代のラインによるケア~職場風土づくりと管理職~

(DVD:7-86,労働者健康安全機構,25分)

【内容】
管理職のコミュニケ―ジョン不全は職場にどのような影響をもたらすのか。エゴグラムのタイプ別に解決策を紹介しています。
本.jpg


7月のセンター関連行事 memo

  • 7月3日(月):鹿児島安全衛生大会
  • 7月4日(火):メールレター第172号配信
  • 7月7日(金):北薩地域産業保健センター運営協議会
  • 7月11日(火):平成29年度「健康かごしま21」推進協議会
  • 7月12日(水):大島郡地域産業保健運営協議会
  • 7月20日(木):労働衛生研究会
  • 7月25日(火):両立支援促進員会議 於:本部
  • 7月25日(火):鹿屋・肝属地域産業保健センター運営協議会
  • 7月26日(水):姶良・伊佐地域産業保健センター運営協議会
  • 7月27日(木):南薩地域産業保健センター運営協議会

研修セミナーのご案内 pencil

すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(特に標記のない時間は、14:00~16:00,場所は光健ボイスビルです)

(7月)

▽7月12日(水):高次脳機能障害【長友先生】
▼7月15日(土):酸素欠乏・硫化水素中毒災害の防止(発生原因・場所・措置及び測定「実技」)【黒沢先生】
flag鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)
▽7月22日(土):健康づくりのための運動指導について 【前田・桑原先生】 flag鹿児島県医師会館(鹿児島市中央町8-1)
▽7月22日(土)16時10分~17時10分:労働衛生関係法令 【中村副所長】 flag鹿児島県医師会館(鹿児島市中央町8-1)
▼7月27日(木)18時~20時:職域における身体活動と健康 【堀内先生】
▽7月28日(金):メンタルヘルス・カウンセリングⅡ~トラウマ(PTSD、ハラスメント、DV)の心理支援~ 【久留先生】

(8月)

▼8月3日(木):不安が強い人たち~神経症性障害の事例を通して~【長友先生】
▼8月5日(土):熱中症指標計の取扱法及びたばこ煙濃度測定器の取扱法の実務【林先生】flag鹿児島市医師会館(鹿児島市中央町8-1)
▼8月18日(金):健康診断事後措置における事例検討【小田原先生】
▼8月23日(水):「介護」を巡る産業保健問題~介護離職・介護うつなど~【長友先生】
○8月25日(金):健康保持のための脳萎縮しない飲酒の量(ロールプレイ)【徳永先生】

flair7/22(土)・7/27(木)・8/25(金)の研修会はTHPレベルアップ研修を兼ねています。

▽…産業医対象で、産業医認定単位があります。
▼…衛生管理者、産業医対象ですが、産業医認定単位はあります。

○…保健師対象ですが、産業医認定単位はあります。

sign03各研修会には定員があります。申し込みがないまま当日来られた場合、会場や資料の関係で受講できない場合がありますので必ず申込みをしてください。

sign03キャンセル待ちの方がおられますので、受講できなくなった場合は必ずご連絡下さい。連絡なしのキャンセルが続いた場合は、今後研修受講をお断りすることもあります。

お知らせ sign01

平成28年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)が
公表されました(厚生労働省)

 平成28年の職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は462人と、平成27年よりも2人少なく、うち死亡者は12人と、前年より17人減少しています。
 近年の熱中症による死傷者は、毎年400~500人台で高止まりの状態にあります。
 なお、平成28年の業種別の死亡者をみると建設業が最も多く、全体の約6割(7人)が建設業で発生しています。
 また、職場における熱中症予防対策として、5月1日から9月30日まで「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」を実施しています。
詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166428.html

産業保健関係助成金のページがリニューアルされました(労働者健康安全機構)

詳細https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1151/Default.aspx

「第104回労働政策審議会安全衛生分科会」資料(厚生労働省)

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000166493.html

鹿児島労働局労働災害防止対策 「緊急かごっまゼロ災運動」
― 平成29年5月25日~平成29年12月31日 ― (鹿児島労働局)

 鹿児島労働局は、急増する労働災害の発生に歯止めをかけ、減少に転じさせることを目指し、「鹿児島労働局労働災害防止対策(緊急かごっまゼロ災運動)」を設定・展開し、県下の各事業場及び労働者並びに関係団体等に対し労働災害防止への取組の促進を働きかけ、一層の労働災害防止対策の強化を図ることとしています。
詳細http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/news_topics/topics/topics_h29/2017-0606-2.html

労働政策審議会建議「時間外労働の上限規制等について」(厚生労働省)

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166799.html

労働政策審議会建議「働き方改革実行計画を踏まえた今後の産業医・産業保健
機能の強化について」~産業医制度等に係る見直しが行われます~(厚生労働省)

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166927.html

「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画」が策定されました(厚生労働省)

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167292.html

労働政策審議会 労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会 同一労働同一賃金部会報告
~ 同一労働同一賃金に関する法整備について ~ (厚生労働省)

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000167470.html

未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル(厚生労働省)

 本マニュアルは、経験年数の少ない未熟練労働者が、作業に慣れておらず、危険に対する感受性も低いため、労働者全体に比べ労働災害発生率が高い状況を鑑み、特に製造業、陸上貨物運送事業、商業の中小規模事業場における雇入れ時や作業内容変更時等の安全衛生教育に役立つよう、作成されたものです。
詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html

労働政策審議会建議 ― 同一労働同一賃金に関する法整備について ―(厚生労働省)

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167781.html

「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。(厚生労働省)

総合労働相談は9年連続100万件超、内容は「いじめ・嫌がらせ」が5年連続トップ
詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167727.html

平成29年度「安全衛生に係る優良事業場、団体又は功労者に対する
厚生労働大臣表彰」の受賞者を決定しました(厚生労働省)

 厚生労働省は、平成29年度の「安全衛生に係る優良事業場、団体又は功労者に対する厚生労働大臣表彰」の受賞者として、26事業場と個人46名を決定し、公表しました。
詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167899.html

受動喫煙防止対策の徹底に関する厚生労働大臣談話(厚生労働省)

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000168103.html

労災疾病等医学研究者普及サイトのご案内(労働者健康安全機構)

①「メンタルヘルス」について
②「じん肺の労災補償」について
 労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。今回の紹介テーマは次のとおりです。
① 「メンタルヘルス」について
 メンタルヘルスとストレス管理に関する利用者の気づきとセルフコントロールを促進することを目的に開発した「勤労者メンタルヘルスチェックシステム(MENTAL-ROSAI)」について紹介します。
 このシステムは、勤労者の皆さんがインターネットを使ってストレスチェックを行い、自分のストレスの状態、ストレスに影響する要因、ストレス対処の特徴等を知り、ストレスとうまく付き合うための方法について瞬時にアドバイスを受けられるシステムです。
 なお、現在このシステムの無料モニターを募集しています。詳しくは、労災疾病等医学研究普及サイトの「メンタルヘルス」分野の「メンタルろうさい(MENTAL-ROSAI)」からアクセスしてください。
詳細http://www.research.johas.go.jp/22_mental/thema01_index.html
② 「じん肺の労災補償」について
 じん肺診断技術研修における木村清延医師の講義「じん肺の労災補償」の動画について紹介します。これは毎年秋に当機構総合研修センターで開催しているじん肺診断技術研修の講義の一部です。
 この研修は、じん肺健康診断に従事する医師が必要な法制度の知識及び専門技術を修得することを目的とし、じん肺専門家の医師が講師を務めているものです。
 毎年、夏に開催案内を当機構ホームページに掲載していますので、動画をご覧になって興味をもたれましたら、研修の受講をご検討ください。
詳細http://www.research.johas.go.jp/jinpai2015/movie.html

厚生労働省から、「平成28年度 石綿による疾病に関する労災保険給付などの
請求・決定状況まとめ(速報値)」が公表されました。 ~労災保険給付の請求・支給
決定件数は、前年度と比べやや増加~(厚生労働省)

 平成28年度分の労災保険給付の請求件数は1,106件(石綿肺を除く)で、支給決定件数は981件(同)と、前年度と比べると、ともにやや増加しています。平成28年度分の特別遺族給付金の請求件数は36件(前年度比6件、20%の増)で、支給決定件数は13件(前年度比7件、35%の減)となっています。
詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000169046.html

メンタルヘルス対策における登録相談機関のご案内(再掲)

登録相談機関とは、国の基準を満たしていることが確認された機関で、事業者と契約を結び、有料で、面接による労働者の心の健康に関する相談を行う専門機関です。
詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/mental/organ_list.html

情報誌「産業保健21」をお送りします! (再掲)

 情報誌「産業保健21」は、産業医をはじめ、保健師、看護師、労務担当者等の労働者の健康確保に携わっている皆様方に、産業保健情報を提供することを目的として、独立行政法人労働者健康安全機構が発行しています。
申込・案内https://kagoshimas.johas.go.jp/about/sanpo/activity.html

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」開設中!(再掲)

  厚生労働省の委託により、(社)日本産業カウンセラー協会において、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』が開設されています。
 映像メッセージ『わたしの体験』、シリーズインタビュー『生きる力』のサイト等、あらゆる方に役立つメンタルヘルス関連の最新情報を提供しています。
 また、働く人のメンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する電話相談窓口として平成27年9月に開設された「こころほっとライン」が平成28年10月1日から「こころの耳電話相談」に名称変更されています。
詳細http://kokoro.mhlw.go.jp/
電話相談窓口https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/

【東日本大震災等の関連情報窓口(参考)】


所長よりひと言 pen

 入梅以後暫く晴れが続き今年の梅雨は空梅雨かと思われたのも束の間、例年通り災害が心配される空模様になりました。奄美は梅雨明けしましたが薩摩大隅はこれから梅雨本番のようです。今年の夏は猛暑の予想とか。熱中症が多発しないかと気が揉めます。s異常気象が当たり前のようになっている今日ですが、政治経済も先が見え難い混迷の度を深めています。社会システムが綻ぶとその影響を一番強く受けるのは下層の「働く人々」です。あらゆる面での格差拡大は働く人の働く意義と価値を見失わせ、労働そのものがストレス要因になります。我が国の政府も「働き方改革推進本部」を設置し、矢継ぎ早に各種の施策を打ち出しています。メンタルヘルス対策としてのストレスチェック制度から過重労働対策としての残業規制と産業医面接の強化に続き、「国民総活躍社会」実現の一環としての「治療と職業生活の両立支援」対策が施行されることになりました。
 これらの施策はいずれも立派な目的を掲げており理念としては評価できるものです。然しながら、格差拡大が進行し、少子高齢化現象が止まらない現状では実効性に疑問符を付けざるを得ないのが実情です。
 今年の産業保健上のトピックスは「治療と職業生活の両立支援」ですが、労働安全衛生体制の確立している一部の大規模事業場を除き、多くの特に地方の中小事業場では受け入れは困難と思われます。また、この施策を支援する中心は主治医と産業医が果たすよりないと思いますが、事業場の実情を承知せず、産業保健への理解が不十分な主治医が有用な意見書を作成できるか、極めて疑わしい。
 産業医は今までの任務に加えてストレスチェックが加わり負担が大きくなっている上に、「治療と職業生活の両立支援」において事業場が両立支援プランを作成する指導まで加わることになります。真摯に産業保健活動に取り組む産業医にとって明らかに過重負担となります。
 厚労省は「産業医のあり方に関する検討会」を設置し、産業医の過重負担軽減策も検討してきましたが、答申を見る限り殆ど効果のない対策です。現場の産業医は、その活動を今まで以上に効率的に行うことが要求されていることになります。
 本県の事業場の大部分は各種の経済施策の恩恵に浴することが少なく、従業員だけでなく経営者層もその健康保全に厳しい状況にあります。産業医には事業場の産業保健スタッフとの連携強化に加えて経営層との意思疎通が今まで以上に必要とされます。さらに、今後は主治医との緊密な協働が必須となります。
 永田町や霞が関の動きに振り回されることなく、現場からの視点で産業保健推進を強化したいものです。