メールレター第173号
鹿児島産業保健総合支援センター メールレター第173号 2017/08/01
発行:鹿児島産業保健総合支援センター 所長 草野 健
相談員からのメッセージ
熱中症予防:血圧の高い方の塩分制限はどうすればよいのか
産業保健相談員 小田原 努(担当分野:産業医学)
暑い日々が続いていますが、皆様お元気に過ごされているでしょうか。夏バテを予防するには、十分な睡眠、たんぱく質、ビタミン、ミネラルをバランスよくとる、上手に汗をかくことが必要です。暑い夏に運動するのは抵抗がありますが、涼しい夕方にちょっと歩いてみる、半身浴をのんびりと行うことで十分な汗をかくことができます。s汗をかくとなると、塩分や水分の補給は十分行いたいところですが、血圧が高く、塩分を控えるように指導されている方々はどのようにしたらよいでしょうか。一般に日本人の高血圧の方は塩分が身体の中に過剰に蓄積している方が多いといわれています。塩分が身体の中に多くなると、体液が多くなり、血圧が上がることになります。血圧が高い方が塩分を控えるのはそのためですが、日本人の1日塩分摂取量は、平均10g程度とされており、本当に必要な量 1~2gをかなり超えているのが現状です。そのために高温環境下の下着まで濡れるような激しい身体活動を除き、一般にはちょっと汗をかくぐらいであれば、夏場でも塩分は控えた方がいいとされます。ただし、水分はしっかり補給すべきです。血圧が高くても水分だけはきちんと補給してください、かなり発汗が多い方でも意識的に塩分を多くとる必要はありませんが、血圧を下げる薬の中には、塩分を尿とともに排泄させる薬もあります。身体を使う作業で、発汗が多い場合は主治医に作業内容を伝えて、現在の薬の内服でよいか相談してください。
おすすめ教材(無料貸出し等)
当センターでは、産業保健に関する図書、ビデオ・DVDを無料にて閲覧・貸出ができます。是非ご利用ください。
糖尿病に罹患した労働者に対する治療と就労の両立支援マニュアル
(図書:1-306,労働者健康安全機構、2017年,77頁)
【内容】
糖尿病の疾患特異性を考慮した上で就労と糖尿病治療の両立支援のための導入マニュアルとして労働者健康安全機構が作成しました。
防ごう!メタボリック・シンドローム ―内臓脂肪をやっつけろ!―
(DVD:4-230,アスパクリエイト,21分)
【内容】
腹部の内臓脂肪が元凶のメタボリック・シンドロームは、日本の中高年にとって大変身近な疾患群です。このビデオはウエストたっぷりのサラリーマン・メタボ氏の日常生活を通して、メタボリック・シンドロームの恐ろしさと対策を紹介しています。
8月のセンター関連行事
- 8月1日(火):メールレター第137号配信
- 8月4日(金):合同管理監督者研修会
- 8月16日(水):平成29年度地域・職域・学域連携推進委員会
- 8月17日(木):曽於郡地域産業保健センター運営協議会
- 8月25日(金):鹿児島地域産業保健センター運営協議会
- 8月29日(火):合同管理監督者研修会
- 8月30日(水):鹿児島県歯科口腔保健推進協議会
研修セミナーのご案内
すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(特に標記のない時間は、14:00~16:00,場所は光健ボイスビルです)
(8月)
▼8月3日(木):不安が強い人たち~神経症性障害の事例を通して~【長友先生】
▼8月5日(土):熱中症指標計の取扱法及びたばこ煙濃度測定器の取扱法の実務【林先生】鹿児島市医師会館(鹿児島市中央町8-1)
▼8月18日(金):健康診断事後措置における事例検討【小田原先生】
▼8月23日(水):「介護」を巡る産業保健問題~介護離職・介護うつなど~【長友先生】
○8月25日(金):健康保持のための脳萎縮しない飲酒の量(ロールプレイ)【徳永先生】
(9月)
▽9月2日(土):職場における救急救命処置について 【前田先生】 鹿児島市医師会館(鹿児島市中央町8-1)
▽9月4日(月):作業環境改善の方法と化学物質リスクアセスメント 【黒沢先生】
▽9月15日(金):ストレスチェック制度における事例検討 【小田原先生】
▽9月22日(金):メンタルヘルス・カウンセリングⅢ~発達障害(ASD、ADHDの人間関係)の心理支援~【久留先生】
8/25(金)の研修会はTHPレベルアップ研修を兼ねています。
▽…産業医対象で、産業医認定単位があります。
▼…衛生管理者、産業医対象ですが、産業医認定単位はあります。
○…保健師対象ですが、産業医認定単位はあります。
各研修会には定員があります。申し込みがないまま当日来られた場合、会場や資料の関係で受講できない場合がありますので必ず申込みをしてください。
キャンセル待ちの方がおられますので、受講できなくなった場合は必ずご連絡下さい。連絡なしのキャンセルが続いた場合は、今後研修受講をお断りすることもあります。
お知らせ
平成28年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました。(厚生労働省)
過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、平成14年から、労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などが取りまとめられています。また、今回は過去6年分の裁量労働制対象者に係る支給決定件数についても取りまとめられています。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000168672.html
一般社団法人日本臨床栄養学会による認定診療栄養研修会が
鹿児島で開催されます。(日本臨床栄養学会)
一般社団法人日本臨床栄養学会による認定診療栄養研修会が鹿児島で開催されます。
開 催 日 平成29年8月6日(日)
会 場 鹿児島県民交流センター
主な対象者 栄養・食事療法に携わる医師・管理栄養士
詳細⇒http://www.jscn.gr.jp/activities/designated/file/2017kagoshima5.pdf
平成28年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の
相違に係る申出等の件数が公表されました。(厚生労働省)
平成28年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件が相違して いたと申出があった件数は9,299件であり、前年度の10,937件に比べ、15.0%減少しています。申出等の内容の上位は、「賃金に関すること」が2,636件(28%)、「就業時間に関すること」が1,921件(21%)、「職種・仕事の内容に関すること」が1,311件(14%)であり、申出等のうち、「 求人票の内容が実際と異なる」件数は3,608件(39%)でした。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000170422.html
平成28年度の鹿児島労働局管内の個別労働関係紛争
解決制度の施行状況が公表されました。(鹿児島労働局)
相談件数は前年度に比べて減少しましたが、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は3年連続でトップとなりました。
詳細⇒http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0112/9147/2017-0703-3.pdf
独立行政法人労働者健康安全機構では、じん肺健康診断等に携わる
産業医等の医師を対象とした「第11回じん肺診断技術研修」を開催します。
((独)労働者健康安全機構)
本研修をすべて受講しますと、日本医師会認定産業医制度に係る認定単位9.5単位(生涯単位のみ)のほかに、日本職業・産業医学会が認定する労災補償指導医制度の認定単位2単位(選択単位 職業上疾病の労災補償)も取得することができます。
詳細⇒https://www.johas.go.jp/index/tabid/754/Default.aspx
平成29年度「全国労働衛生週間」が10月に始まります。(厚生労働省)
厚生労働省は、10月1日(日)から7日(土)まで、平成29年度「全国労働衛生週間」を実施します。s今年のスローガンは、「働き方改革で見直そう みんなが輝く 健康職場」です。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000170527.html
「熱中症予防のために」のリーフレットがアップされました。(厚生労働省)
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170795.html
労災疾病等医学研究者普及サイトのご案内(労働者健康安全機構)
労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。 今回の紹介テーマは次のとおりです。
- ①「職場復帰のためのリハビリテーション」について
職場復帰に向けた対応としてリハビリテーション分野での研究をご紹介します。この研究では、全国の労災病院における脳血管障害(15歳から64歳)の早期復職のモデルシステムの研究を行いましたが、発症後1年半までの復職率は46.2%であり、経時的には発症3ヵ月前後と1年半前後の二つにピークがあることが認められました。 職場復帰のためのリハビリテーションは、発症当初から綿密かつ多面的アプローチが不可欠ですが、近年、医療経済情勢の変化により病院態勢の急性期化が進み、在院日数の短縮化が強まっています。こうした中で、特に注目される治療と就労の両立支援に向けた取り組みにおいて、参考になる指標です。
詳細⇒http://www.research.johas.go.jp/22_riha/past03.html
- ② 「働く女性の健康」について
アベノミクスで「介護離職ゼロ」がうたわれていますが、介護・看護のため離職する方の約8 割は女性です。この研究では中部労災病院の医師が中心となり、働く女性における介護ストレスに関する調査、検討を行いましたが、介護者の介護ストレスには、認知機能障害や認知症による問題行動の有無が大きく関与していることが示唆されました。
詳細⇒
研究概要 http://www.research.johas.go.jp/22_jyosei/past04.html
研究結果報告書 http://www.research.johas.go.jp/booklet/pdf/2nd/11-4.pdf
「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」の諮問と答申(H29.7.24)
~ 社会保険労務士による電子申請の代行における申請者の電子署名等の省略 ~
行政手続きを簡素化し、申請者の負担を軽減するため、社会保険労務士が申請者に代わり電子申請を行う際には、委任状など、その社会保険労務士が申請者の申請手続きを代行する契約を結んでいることを証明する書面をもって、申請者の電子申請及び電子証明書を省略できるよう、省令の改正を行うとなっています(平成29年12月1日施行予定)
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172245.html
平成29年7月25日、「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない
社会の実現を目指して~」が閣議決定されました。 (厚生労働省)
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172203.html
長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果が公表されました。(厚生労働省)
平成28年4月から平成29年3月までに、全国の労働基準監督署が長時間労働が疑われる事業場に対して実施した監督指導結果が公表されました。 対象となった23,915事業場のうち、10,272事業場(43.0%)で、違法な時間外労働が確認されました。このうち、実際に月80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、7,890事業場(76.8%)でした。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172536.html
ストレスチェック制度の実施状況が施行後はじめて公表されました。(厚生労働省)
厚生労働省が、全国の事業場から労働基準監督署に報告のあった、ストレスチェック制度の実施状況について公表しました。 この報告結果によれば、ストレスチェック制度の実施が義務付けられている事業場(常時50人以上の労働者を使用する事業場)の8割を超える事業場がストレスチェック制度を実施済みであることがわかりました。
詳細⇒http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172107.html
メンタルヘルス対策における登録相談機関のご案内(再掲)
登録相談機関とは、国の基準を満たしていることが確認された機関で、事業者と契約を結び、有料で、面接による労働者の心の健康に関する相談を行う専門機関です。
詳細⇒https://kagoshimas.johas.go.jp/about/mental/organ_list.html
情報誌「産業保健21」をお送りします! (再掲)
情報誌「産業保健21」は、産業医をはじめ、保健師、看護師、労務担当者等の労働者の健康確保に携わっている皆様方に、産業保健情報を提供することを目的として、独立行政法人労働者健康安全機構が発行しています。
申込・案内⇒https://kagoshimas.johas.go.jp/about/sanpo/activity.html
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」開設中!(再掲)
厚生労働省の委託により、(社)日本産業カウンセラー協会において、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』が開設されています。
映像メッセージ『わたしの体験』、シリーズインタビュー『生きる力』のサイト等、あらゆる方に役立つメンタルヘルス関連の最新情報を提供しています。
また、働く人のメンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する電話相談窓口として平成27年9月に開設された「こころほっとライン」が平成28年10月1日から「こころの耳電話相談」に名称変更されています。
詳細⇒http://kokoro.mhlw.go.jp/
電話相談窓口⇒https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/
【東日本大震災等の関連情報窓口(参考)】
所長よりひと言
全国各地で「治療と職業生活の両立支援」事業が動き出しています。労災病院の多くは既に「両立支援窓口」を設けスタッフの研修を始めているようです。また、労災病院のない県では「がん診療拠点病院」等の中核医療機関に「両立支援相談窓口」設置を呼び掛けたり契約を進めたりしているようです。医療機関内に設置される窓口は産業保健総合支援センターの出先窓口と位置付けられますが、その運営方法に関してはこれから詰めて行くことになります。「両立支援」活動の要となるのは両立支援促進員で、患者と治療機関と事業場の3者のコーディネートを行い、事業場における当該患者の「両立支援プラン」作成を支援します。「両立支援プラン」は「主治医意見書」を基に産業医が主導して事業場の責任で作成することとなります。
本県では「治療と職業生活両立支援促進チーム」を立ち上げました。事務局は労働局が努めますが、この政策に関与するべき殆どの組織・団体の代表が参加するチームで、「両立支援相談窓口」設置の促進や事業場の理解促進、さらには両立支援促進員養成の促進、等の活動を協議していくチームです。
治療と職業生活を両立させることは、今後の労働力人口減少が必須の社会状況を鑑みれば国として採らざるを得ない政策ですが、一方で医学医療の進歩を考えると治療する当人にとっても望ましいことです。政策は当初「がんを中心」としていましたが、がんだけでなく脳血管疾患、心疾患、糖尿病、肝疾患、若年性認知症、不妊(治療)、に加え難病等反復・継続治療の必要な疾病(短期で治癒する疾病は除外)と対象を拡げました。
人口の高齢化が進む社会では中高年労働者の割合が高くなるのは当然ですが、現代社会の中高年者は何らかの治療を継続しながら就労している者が少なくありません。その多くは特に就労に障害を及ぼすほどではないものが大きな割合を占めていると思われますが、就労の状況が治療に悪影響を与える場合や治療が就労の阻害要因となることも大いにあり得ることです。今回の両立支援は、治療も就労も支障なく両立できるプランを事業場に作って貰い、治療と就労が両立できるようにしようというものですから、治療中の患者、事業場双方にとって歓迎すべき政策です。
この政策の実効性を挙げるための課題は、大きくは3点あると考えられます。 一つは、全ての事業場に浸透し理解を深めてもらうことがどこまでできるか、です。二つ目は「主治医意見書」と思われます。産業保健を十分に理解している主治医なら有用な「意見書」を比較的容易に作成できると思われますが、そうでない主治医も存在します。三つ目として産業医の負担が増加すると思われることです。事業場は主治医意見書を提供されても事業内の医師以外のスタッフで「両立支援プラン」作成は困難です。産業医が主導しなければ有効な「プラン」とはならないことが十分に考えられます。政策の主旨は大いに歓迎されるものです。この政策に関わる予算措置が十分でないという不満はありますが、現場のスタッフでこの活動に「魂」を入れて行きたいものです。