お知らせ

メールレター第175号

鹿児島産業保健総合支援センター メールレター第175号  2017/10/02
発行:鹿児島産業保健総合支援センター 所長 草野 健

紅葉 ねこ

相談員からのメッセージ confident

「事業場におけるがん治療と職業生活の両立のために」

産業保健相談員 林 ユリ子(担当分野:カウンセリング)

平成29年8月17日付の南日本新聞で「がん患者年収2割減」の見出しの記事をみた。ライフネット生命保険の調査である(実施機関NPO法人キャンサーネットジャパン 今年の6月実施 インターネット全国のがん経験者男女566人が回答)。
それによれば、収入が減った人は56%、収入が半分以下になった人は47%となっている。また、収入が減った理由としては「休職」が35%、「業務量を抑えた」が33%、「退職」が25%となっており、4人に1人は退職している。
私の家族ががんで総合病院に数回入院していたときのことであるが、同じ病室の中にも職場で働いている人が何人もいた。話を聞いてみると、仕事を辞めざるを得ないと思っている人や退院後に通院しても周りに気を使うので居づらくなるかもしれないとこれからの生活に不安を抱く人もいた。
がん治療には医学の力はもちろんだが、本人の気力が大事と言われる。その気力を支えるのは、家族などの支えもさることながら、働くことがその人の生活を支えることもあるため、職場においては、仕事をしながら治療を続けることができるような治療支援のための制度の整備や同僚上司など周りの理解と励ましが求められているのではないだろうか。
特に、がんの罹患には、働き盛りで中高年齢の人が多い。がんとわかっただけで退職することとなると本人にとってダメージが大きいだけではなく、事業場にとっても経験豊富な人材の喪失は大きい。治療をしながら働き続けられる職場環境を作ることは、従業員にとって安心感を与えるとともに、また、お互い様の気持ちで働く人の意識を高め、職場における生産性の向上や健康経営の推進につながるのではないだろうか。
厚生労働省では、「事業場における治療と職業生活の両立支援」のためのガイドラインを公表して事業場の取組みを促している。また、鹿児島産業保健総合支援センターにおいても事業場からの相談を受けたり、事業場を訪問して治療と仕事の両立を図るための様々な支援を行っているので是非活用して欲しい。


おすすめ教材(無料貸出し等) book 

当センターでは、産業保健に関する図書、ビデオ・DVDを無料にて閲覧・貸出ができます。
ぜひご利用ください。

★★★おすすめ図書 book ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
メンタルヘルス不調をかかえた労働者に対する専門スタッフによる職場訪問型復職支援マニュアル

(分類:1-308,労働者健康安全機構、2017年,50頁)

【内容】
治療就労両立支援モデル事業」の一環として「職場訪問型復職支援」と「復職(両立支援)コーディネーターによる復職支援の実際」を紹介しています。

★★★おすすめDVDmovie ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
スムーズな職場復帰のために-職場復帰のノウハウと注意点-
(分類:7-78,株式会社自己啓発協会映像事業部,20分)

【内容】
  休職していた部下が復帰。その時の対応と配慮すべきポイントをわかりやすく解説しています。
本.jpg


10月のセンター関連行事 memo

  • 10月  2日(月):メールレター第175号配信
  • 10月13日(金):平成29年度労働セミナー (於:かごしま県民交流センター)
  • 10月20日(金):平成29年度労働セミナー (於:姶良保健所)
                          :メンタル合同研修会 (於:ウェルビューかごしま)
  • 10月27日(金):平成29年度労働セミナー (於:北薩地域振興局)
  • 10月31日(火):平成29年度調査研究発表会(10月31日~11月1日)

研修セミナーのご案内 pencil

すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(定員は各セミナー30名、場所は光健ボイスビルです)

10月

▽10月  5日(木)【赤崎先生】 14:00~16:00
「うつ状態、うつ病の病態と治療を知ろう~事例の提示も含めて~」
▼10月11日(水)【長友先生】 14:00~16:00
「職場におけるコミュニケーション~メンタルヘルス不調の予防~」
▽10月26日(木)【堀内先生】18:00~20:00
  「健診と検診~産業保健におけるこころと体の健康管理~」
○10月27日(金)【徳永先生】 <THP>14:00~16:00
  「タイプ別人間関係の方法(ロールプレイ)」留先生】

11月

▼11月 6日 (月)【黒沢先生】14:00~16:00
「労働災害発生原因分析(演習)と危険予知訓練」
▽11月14日(火)【前田先生】 <THP>18:00~20:00
「生活習慣病と運動療法について」
▼11月24日(金)【久留先生】14:00~16:00
「メンタルヘルス・カウンセリングⅣ
  ~自我・自己のありよう(適応・不適応)と心理支援~」

flair10/27(金)、11/14(火)の研修会はTHPレベルアップ研修を兼ねています。

▽…産業医対象で、産業医認定単位があります。
▼…衛生管理者、産業医対象ですが、産業医認定単位はあります。

○…保健師対象ですが、産業医認定単位はあります。

sign03各研修会には定員があります。申し込みがないまま当日来られた場合、会場や資料の関係で受講できない場合がありますので必ず申込みをしてください。

sign03キャンセル待ちの方がおられますので、受講できなくなった場合は必ずご連絡下さい。連絡なしのキャンセルが続いた場合は、今後研修受講をお断りすることもあります。

お知らせ sign01

◇◇鹿児島産業保健総合支援センター情報◇◇
  産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

鹿児島産業保健総合支援センターでは、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。電話やFAX、ホームページからもお気軽にご相談ください。

詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

◇◇◇厚生労働省情報◇◇◇
第107回労働政策審議会安全衛生分科会が開催されました。

産業医・産業保健機能の強化等に関する法整備等について

 詳細http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=235809

第139回労働政策審議会労働条件分科会が開催されました

「労働基準法等の一部を改正する法律案」について

詳細http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=235693

平成28年労働安全衛生調査(実態調査)の概況

【事業所調査】
〇リスクアセスメントを実施している事業所の割合は46.5%
〇メンタルヘルス対策に取組んでいる事業所の割合は56.6%。そのうち、ストレスチェックを実施
  した事業所の割合は62.3%
〇受動喫煙に取組んでいる事業所の割合は85.8%

【労働者調査】
  〇現在の自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄
  がある労働者は59.5%
  〇ストレスとなっていると感じている事柄(主なもの3つ以内)は「仕事の質・量」が53.8%と最も
  多い。
  〇職場で他の人のたばこの煙を吸引すること(受動喫煙)がある労働者は34.7%。そのうち、不快
  に感じること、体調が悪くなることがある労働者は37.1%

詳細

≪Press Release≫
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h28-46-50_houdou.pdf
≪調査結果の概況≫
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h28-46-50_gaikyo.pdf

11月は「過労死等防止啓発月間」です

  厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取組を行います。
  この月間は「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について国民に自覚を促し、関心と理解を深めるため、毎年11月に実施しています。

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177422.html

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の答申

  厚生労働省が、平成29年9月8日に、労働政策審議会に諮問した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」について、労働政策審議会の各分科会・部会で審議が行われた結果、9月15日、同審議会から加藤勝信厚生労働大臣に対して答申が行われました。
  厚生労働省では、この答申を踏まえて法律案を作成し、次期国会への提出の準備が進められます。
≪主な項目≫
 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
  (1) 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法)
  (2) 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)
  (3) 産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法等)

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177380.html

熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)

詳細http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/necchusho16/index.html

新規学卒就職者の離職状況(平成26年3月卒業者の状況)

新規学卒就職者の3年以内の離職率は新規高卒就職者40.8%、新規大卒就職者32.2%

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553.html

第2回 医師の働き方改革に関する検討会 資料

医師の働き方改革に関する検討会の進め方や主な論点など

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000178021.html

「職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請」を実施

平成29年の労働災害による死亡者数(1月~8月の速報値)が対前年比で増加し、特に8月に急増したことを受け、厚生労働省は業界団体などに安全衛生活動の総点検などを要請。

≪9月20日公表 平成29年の労働災害発生状況(1月~8月の速報値)≫
死亡者数・・・・・・・・・・・対前年比9.6%(49人)の増加
休業4日以上の死傷者数・・・・対前年比0.9%(600人)の増加
8月単月の死亡者数・・・・・・対前年同月比57.1%(24人)の大幅な増加

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000178011.html

 

◇◇◇鹿児島労働局情報◇◇◇
鹿児島県最低賃金が改定されました

鹿児島労働局長は、鹿児島県最低賃金を1時間あたり737円とすることを決定し、平成29年10月1日より発効することとなりました。
鹿児島県最低賃金の改正については、平成29年6月30日に鹿児島労働局長が鹿児島地方最低賃金審議会に対して諮問し、平成29年8月7日に同審議会より答申があり、異議申出に係る法定の手続き等を経て、答申の意見どおりに改正することとなったものです。平成28年10月1日に発効した現行額(1時間あたり715円)より、22円の引上げとなります。

詳細http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/news_topics/topics/topics_h29/ 2017-0901-4.html

【仕事休もっ化計画】10月は年次有給休暇取得促進期間です

仕事は計画を立てて行うもの。それでは休暇は?

詳細http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/hatarakikata/2017-0904-2.html

平成29年度の労働災害発生状況

詳細http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0113/7107/H29sa igai_2017-0908-2.pdf

 

◇◇◇労働者健康安全機構情報◇◇◇
労災疾病等医学研究者普及サイトのご案内

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。
今回の紹介テーマは次のとおりです。
①「アスベスト関連疾患の予防」について
「アスベスト関連疾患の予防」におけるマスク効率についてご紹介です。産業保健総合支援センターにおいて、現場で石綿除去作業を行っている労働者の防じんマスクのマスク効率と作業環境について検討したものです。
アスベストの使用は段階的に規制されてきましたが、古い建物の一部には使用されているものもあります。地震が頻繁に起きている現在、古い建物の倒壊によりアスベストばく露の危険性があります。

詳細http://www.research.johas.go.jp/asbesto/09.html

②「じん肺診断技術研修」について
じん肺診断技術研修における木村清延医師の講義「じん肺の労災補償」の動画についてのご紹介です。これは毎年秋に当機構総合研修センターで開催しているじん肺診断技術研修の講義の一部です。
この研修は、じん肺健康診断に従事する医師が必要な法制度の知識及び専門技術を修得することを目的とし、じん肺専門家の医師が講師を務めているものです。
本年は、11月1日(水)・2日(木)の2日間にわたって研修を開催しますので、動画をご覧になって興味をもたれましたら、研修の受講をご検討ください。

詳細
動画:http://www.research.johas.go.jp/jinpai2015/movie.html
研修案内:https://www.johas.go.jp/index/tabid/754/Default.aspx

③「働く女性の健康」について
労働者健康安全機構では、女性特有の月経関連障害、更年期障害が働く女性のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)にどのような影響を与えるのか、夜勤や長時間労働は女性に特有の影響を与えるのか等、性差による健康への影響について研究を行ってまいりました。また、その研究を活かし、特に女性のQOLと就労支援について考えて働く女性のための医療フォーラムを開催し、医療関係者や一般の参加者の方と、女性の就労支援について考える場をもっています。

今年度も平成29年10月21日(土)に和歌山市の「和歌山県JAビル」で女性医療フォーラムの開催を予定しております。

詳細http://www.research.johas.go.jp/22_jyosei/index.html
過去の女性医療フォーラムの様子はこちらから(女性医療フォーラム)
https://www.johas.go.jp/yobo/mental/tabid/367/Default.asp

 

★★メンタルヘルス対策支援のご案内★★

従業員の心の健康対策への取組方法がわからないという事業場の皆さまへ
私たちは、メンタルヘルス対策に取り組もうとする事業場を支援します。

詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/mental/cat426/work.html

 

★★地域産業保健センターのご案内★★

労働者数50人未満の小規模事業場では、労働者に対する産業保健サービスを充実させることを目的に、地域産業保健センターが設けられています。

詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/cat638/post_15.html

所長よりひと言 pen

今月は予期せぬ選挙の月になりました。衆議院選挙は政権選択の選挙ですが、過去の総選挙での多くの国民の選挙行動を見ると何処までそのことを理解しているのか、やや疑問を感じざるを得ません。日本は立憲民主主義の法治国家です。憲法は大なり小なり国家権力を行使する者に対して制約を加える、言い換えれば権力を縛ることで国家の形を示すものです。憲法に基づいた各種法令は全ての国民が遵守する義務を負いますが、憲法を守る義務を負うには政治家や公務員など何らかの国家権力を付与された者だけで、一般国民は法令に従う必要はありますが憲法擁護の義務はありません。このことを十分に理解している国民は多くないように感じているのは私だけでしょうか。
厚労省は今度臨時国会に産業保健に関するいくつかの法案提出を予定していましたが、冒頭解散ですから先送りとなります。私たちの活動に影響するものとしては「働き方改革」の一環として、長時間労働の規制、勤務間インターバル制度、産業医機能の強化、裁量労働制の見直し、高度プロフェッショナル制度の創設、等が予定されていました。選挙により次の政権がどうなるか分かりませんが、高度プロフェショナル制度以外は与野党が対立するような法案とは思われないので次の国会で成立すると思われます。
制度化され法が施行されて後、総体的に改革が進むのは望ましいことですが、時間当たりの生産性が向上しない状況では中小企業にとって厳しい経営を強いられることになりそうです。また、産業医への負担は増加する一方で、産業医の事業場への勧告の効力増大を目指しているのは評価できるものの、その実効性には疑問符が付きます。
ところで、本県でも「治療と職業生活の両立支援」対策の始まる準備が整いつつあります。既に動き出している県もありますが、中には形だけは整えているものの、効果を挙げるという面からは果たしてどうなのかという疑問を感じる県もあります。鹿児島県では、形だけ整えたという結果にならないよう、初期の目的をそれなりに果たしていけるものにしたいものです。どんな制度でもそこに活きた魂を入れるのは現場で活動するスタッフです。