お知らせ

メールレター 第200号

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     ≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第200号   2019/11/1

            発行:鹿児島産業保健総合支援センター 
                        所長 草野 健
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相談員からのメッセージ confident

有害物質の経皮吸収に関するリスクアセスメント

産業保健相談員 東 正樹
         (担当分野:労働衛生工学)

 

平成29年1月1日より、オルト-トルイジンが特定化学物質として規制されるとともに、経皮吸収による健康障害のおそれのある物質について対策が強化されました。
これは、福井県内の化学工場で労働者が膀胱がんを発症した労働災害がきっかけとなっています。その後の災害調査の結果、オルトートルイジンに汚染されたゴム製手袋からの経皮吸収が原因であることが判明しました。
ちなみに、この労働災害では全員(9人)が労災認定され、さらに昨年損害賠償を求めて訴訟が起こされ、現在も裁判で争われています。

オルトートルイジンのように(空気中にはほとんど存在せず)経皮吸収のみによって生じるばく露の程度は、作業環境測定で把握することが難しく、健康診断等で尿中オルトートルイジン濃度を測定する必要があります。
しかし、尿中からオルトートルイジンが検出されるということは、既に労働者がばく露を受けていることを示しています。ばく露を受ける前にリスクを評価し、経皮吸収が起きないように作業を管理する仕組みが必要です。

したがって、経皮吸収による健康障害のおそれのある物質を取り扱っている事業場では、基本的な対策(適切な防護手袋・保護衣の選択、作業方法の改善、応急時の対応など)に取り組むと共に、経皮吸収に関するリスクアセスメントの実施が求められます。
最近、経皮吸収物質のリスクアセスメントに関して、比較的簡便でかつ効果的なものが厚生労働省ホームページ内の職場のあんぜんサイトで公開されました。CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)(詳しくはこちらのURLをご参照ください→https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07_3.htm)と呼ばれるもので、接触面積や物理化学的特性(分子量、水・オクタール分配係数、溶解度、蒸気圧)によってリスクレベルを決定することができます。
経皮吸収に関するリスクアセスメント実施の際は、ぜひ本ツールをご活用いただき、経皮吸収の予防対策にお役立てください。

研修セミナーのご案内 pencil

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令和元年度石綿(アスベスト)関連疾患診断技術研修会のご案内
~厚生労働省委託事業~

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呼吸器系の疾患を取り扱う医師を対象に、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水等の石綿関連疾患に係る適切な診断技術の向上及び労災補償上の留意事項の周知を図ることを目的とする研修会を下記のとおり開催します。

本研修会は、日本医師会認定産業医制度における産業医研修会として申請しており、受講された方は、生涯研修【専門研修 2 単位】の単位を取得できます。(基礎研修の単位としては、取得できません。)

日  時:令和元年12月7日(土)16:00~18:00
会  場:JR九州ホテル鹿児島(鹿児島市武1-1-2)
対 象 者:医師
講  師:富山労災病院 アスベスト疾患センター長 水橋 啓一先生
定  員:30名
受 講 料:無料
申込方法:FAX

▼案内・FAX申込票
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/08/asubesuto_kensyukai.pdf

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産業保健研修会のご案内(11月~12月)
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すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(定員は各セミナー30名、会場は光健ボイスビルです)

11月 ※特に記載のないものは会場 光健ボイスビルです。
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14:00-16:00

ABC ストレスチェックの集団分析をどう生かすか
※会場:鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)
冨宿 明子*
労働衛生コンサルタント
12(火)
18:00-20:00

ABC
THP
生活習慣病と運動療法について(症例検討を交えて) 前田 雅人*
鹿児島大学教育学部保健体育科 教授
14(木)
14:00-16:00

ABC 行動変容を促すためのコミュニケーション 網谷 東方*
鹿児島大学病院 心身医療科 講師
21(木)
14:00-16:00

ABC 作業環境管理と作業環境改善 黒沢 郁夫*
黒沢労働安全衛生コンサルタント事務所 所長
22(金)
14:00-16:00

ABC <出社拒否(うつ状態)>のメンタルヘルス・カウンセリング Ⅳ ~自我・自己の障害をめぐって~ 久留 一郎*
鹿児島大学 名誉教授
26(火)
18:00-20:00

ABC 歯科の視点からの禁煙指導について 市来 誠
市来歯科
12月 ※特に記載のないものは会場 光健ボイスビルです。
4(水)
14:00-16:00

ABC どこからがパワハラ? 冨宿 明子*
労働衛生コンサルタント
5(木)
14:00-16:00

ABC 「不安」を主症状とする病気~神経症性障害の治療の実際~ 赤崎 安昭*
鹿児島大学医学部保健学科 教授
7()
16:00-18:00

※B 石綿(アスベスト)関連疾患診断技術研修会
※会場:JR九州ホテル鹿児島(鹿児島市武1-1-2)
水橋 啓一
富山労災病院 アスベスト疾患センター長
11(水)
14:00-16:00

ABC 「働く人」のメンタルヘルスと自殺 長友 医継*
医療法人玉水会病院 心療内科部長
13(金)
14:00-16:00

ABC 感染症が流行る時の環境整備と自己管理   德永 龍子*
鹿児島純心女子大学 名誉教授
14()
14:00-16:00

ABC  職場の結核対策
※会場:鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)
徳留 修身*
元・保健所長(鹿児島県及び鹿児島市)
17(火)
14:00-16:00

AB 産業医として知っておくべき化学物質のリスクアセスメント(その1)~SDSの読み方と数理モデル~ 東 正樹*
(株)鹿児島環境測定分析センター 代表取締役
23(月)
18:00-20:00

ABC 職域における食と健康 堀内 正久*
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科衛生学・健康増進医学 教授

※講師*印:当センター産業保健相談員
※各研修会には定員があります。申し込みがないまま当日来られた場合、会場や資料の関係で受講できない場合がありますので必ず申し込みをしてください。
※受講できなくなった場合は必ずご連絡ください。

お知らせ

<鹿児島産業保健総合支援センター>

産業保健総合支援事業のPR動画について

当センターが行う各種事業の取り組みについて「のんさん」が紹介する動画を公開しています。
https://kagoshimas.johas.go.jp

産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

当センターでは、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

11月~1月の両立支援(出張)相談窓口

当センターでは、センター内の相談窓口のほかに、鹿児島医療センターと鹿児島大学病院に、治療と職業生活のための両立支援出張相談窓口を開設しています。

また、令和元年10月に薩摩川内市の「済生会川内病院」、「川内市医師会立市民病院」と治療と仕事の両立支援事業実施に係る協定を締結し、令和元年11月以降、「両立支援相談窓口」を開設します。設置状況は次のとおりです。

  1. 鹿児島産業保健総合支援センター
    相談窓口開設日時・・平日 8:30~17:15
  2. 国立病院機構 鹿児島医療センター がん相談支援センター内
    相談窓口開設日時・・毎月第1・3火曜日 10時~13時
    11月の相談日 → 5日(火)・19日(火)
    12月の相談日 → 3日(火)・17日(火)
    1月の相談日 → 7日(火)・21日(火)
  3. 鹿児島大学病院 地域医療連携センター内
    相談窓口開設日時・・毎月第3木曜日 10時~12時(事前予約が必要です)
    11月の相談日 → 21日(木)
    12月の相談日 → 19日(木)
    1月の相談日 → 16日(木)
  4. 済生会川内病院
    相談窓口開設日時・・毎月第2木曜日 10時~12時
    ※上記日時以外でも、事前予約の場合は日程調整のうえ対応します
    11月の相談日 → 14日(木)
    12月の相談日 → 12日(木)
    1月の相談日 →  9日(木)
  5. 川内市医師会立市民病院
    相談窓口開設日時・・毎月第4木曜日 13時~15時(事前予約が必要です)
    11月の相談日 → 28日(木)
    12月の相談日 → 26日(木)
    1月の相談日 → 23日(木)

鹿児島産業保健総合支援センターの産業保健専門職(保健師)および両立支援促進員がそれぞれの医療機関のソーシャルワーカーなどと連携してご相談に応じます。相談は無料です。両立支援に関するお悩み等にについてご相談下さい。

詳細
▼両立支援出張相談窓口
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/10/ryouritsushien-madoguchi.pdf
▼鹿児島医療センターがん相談支援センター内(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/05/ryoritu-iryousenta.pdf
▼鹿児島大学病院地域医療連携センター内(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/05/ryoritu-kadasibyoin.pdf
▼鹿児島産業保健総合支援センター 相談窓口(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/05/ryoritu-sanpo02.pdf
▼済生会川内病院がん相談支援センター内(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/10/ryouritsushien-sendaibyouin.pdf
▼川内市医師会立市民病院患者サポート窓口内(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/10/ryouritsushien-sendaishiminbyouin.pdf

▼治療と仕事の両立支援申込み
ホームページから
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat767
FAXから
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/2019ryouritsushien.pdf

 

<労働者健康安全機構情報>

労災疾病等医学研究普及サイトのご案内

○労災疾病等医学研究普及サイト

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。

○労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html

○「作業関連疾患」について
http://www.research.johas.go.jp/sagyou/thema01.html

○「職業性外傷」について
http://www.research.johas.go.jp/gaisho/
http://www.research.johas.go.jp/22_gaisho/index.html

第13回じん肺診断技術研修のご案内

https://www.johas.go.jp/index/tabid/595/Default.aspx?itemid=867&dispmid=1466

<厚生労働省情報>

11月は「過労死等防止啓発月間」です

【シンポジウム案内・FAX申込(鹿児島会場)】
https://www.p-unique.co.jp/karoushiboushisympo/pdf/kagoshima.pdf

◎当センターの草野所長が講演を行います。
【ポータルサイト(厚生労働省HP)より申込】
https://www.p-unique.co.jp/karoushiboushisympo/
【過重労働解消キャンペーン】  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign.html
【過労死等防止啓発パンフレット】  https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000549720.pdf
【過労死等防止啓発リーフレット】  https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000549721.pdf

「令和元年版 過労死等防止対策白書」を公表します

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07039.html

【過労死等防止対策白書】 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html

<鹿児島労働局情報>

平成 30 年度長時間労働が疑われる事業場に対する立入調査結果を公表

https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/2019-1018-2_20191017.pdf

令和元年の労働災害発生状況

○令和元年(9月末速報)
□ 死亡者数は9人で、前年同期で2人(28.6%)増。
□ 休業4日以上の死傷者数は1,328人で、前年同期比で29人(2.2%)増。

https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/H31saigai_2019-1008-1.pdf

<  鹿児島県難病相談・支援センター >

難病患者就労支援セミナーのご案内

鹿児島県難病相談・支援センター主催のセミナーを開催いたします。支援者や企業等が難病および難病患者の就労に理解を深め、難病患者のよりよい就労について考えるためのセミナーです。是非ご参加くだ
さい(参加費無料)。

詳細は以下よりご確認ください。

[日時] 令和元年12月20日(金) 13:30~16:00 (13:00~受付開始)
[場所] ハートピアかごしま2階大会議室(鹿児島市小野1丁目1-1)

[内容]

  1. 難病患者就職サポーターの支援について
    講師:松元沙紀氏(ハローワーク鹿児島難病患者就職サポーター)
  2. 仕事と治療の両立支援について
    講師:江並朋子氏(鹿児島産業保健総合支援センター)
  3. 事例発表
    1)難病患者の就労支援の取り組み
    ~在宅テレワークを希望する方への支援について~
    発表者:就労サポートセンターラシーネ
    2)企業からの報告
    発表者:アルバック九州株式会社
  4. 意見交換

[対象者]
難病患者の雇用に関心のある企業
相談支援事業所・就労移行支援事業所
難病患者支援を行う医療機関
障害者就業・生活支援センター、行政職員

▼詳細・申込書
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/10/R1.12.20seminor.pdf

編集後記

いつまで続くのかと思わせる夏の暑さも、即位礼正殿の儀とともに急速に秋めいてきました。台風19号とそれに続く豪雨で関東から東北に甚大な被害が出ています。風水害はこの列島の宿命とは言え、言葉にできない思いです。

ありとあらゆる厳しい自然災害の多い花菜列島ですが、一方で四季折々の繊細な美しさも格別で豊かな恵みを与えてくれる国土です。そうした中でも秋は色んな意味で人々の活動が活発になる季節で、ラグビーワールドカップも開催され日本のベスト8入りで俄ファンも増えたようです。スポーツ以外にも読書や行楽の時季でもあります。鹿児島は以前から春秋が短い土地ですが、今年は一段と短く紅葉狩りや虫の音を愛でる等の期間は早々と終わりそうです。

その短い秋には鹿児島でも様々な会議・集会が集中します。各種の学会も相次ぎますが、産業保健分野でも先月末には両立支援セミナーがあり、今月は過労死対策シンポに両立支援コーディネーター基礎研修と厚労省や労働者健康安全機構主催の行事が続きます。当産保センターも、相談員会議に運営協議会と相次いで会議を開催します。

昨今の大きな話題は、両立支援と過労死対策ですが、いずれも働き方改革に絡むもの。働き方改革の必要性は少子高齢化も一つの大きな要因ということになりますが、少子化は以前より進行していた現象で最近始まったことではありません。多産多死の社会から少産少死の社会へと発展するのは歴史の発展経過として当然ですが、少子化の進行が行き過ぎた結果が今の日本です。少子化自体は忌避すべきことではありませんが、特殊出生率が1.5にも満たない状態が継続することが根本的な課題です。産業保健の立場からこの課題に取り組む必要性に疑問を呈する声もありますが、働き方に大きな影響を与えている以上、無関心では済まされないと思います。

両立支援では治療と仕事に関心が集中していますが、出産・育児との両立支援も極めて重要です。できることは何か、どのような支援が有効か、等早急に取り組む要があります。

高齢化は医療や介護の側面が大きくなるのは当然ですが、高齢者の就労を可能にする両立支援も不可欠です。身体能力の衰えは止められませんが、そのことを前提とした就労形態の創出こそが望まれます。

AI活用や作業の簡素化に加え、無駄な作業や生産性のない作業を省くことで過重労働を無くし、「はたらく」こと自体が喜びであるような産業社会こそが望まれます。一億総活躍社会とは、国民皆が働くこと自体に意義と喜びを見出す社会で、上に立つ者ほど下の者が「気の毒」と思うほど苦労し責任を取る社会のことと考えます。