お知らせ

メールレター 第201号

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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第201号   2019/12/2

            発行:鹿児島産業保健総合支援センター 
                      所長 草野 健
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相談員からのメッセージ confident

増える大人の発達障害

産業保健相談員 野添 新一
         (担当分野:メンタルヘルス)

 

昨今、産業医や産業保健師が発達障害の疑われる事例に遭遇する機会が増加している。最近の遺伝研究によると「環境要因が遺伝子に影響を与えて、その働きを変化させるということ」が理由とされており、昨今の環境激変ぶりから思うに当然な気がする。2症例を紹介する。症例1 56歳女性 元公務員 離婚歴あり。幼少時よりマルトリートメントの家庭で育つ。青年期自立の必要性を自覚して30歳代で夜間の看護学校を卒業。1995年1月阪神淡路大震災救助班の一員として参加、災害現場を目にした途端トラウマが甦って就労不能に陥り帰院、以来対人不安、無力感、疲弊性うつ状態などで長期治療を受けた。この間,二回の離婚や精神身体症状(特に免疫不全による皮膚疾患)に悩まされ続け56歳時当院を受診、本例を発達障害(ASD)とトラウマ性ストレス障害併存症例と初めて診断して対応。現在60歳を超えるも月一回の面接療法を受けながら、某施設で就労中である。
症例2、48歳、既婚男子 幼稚園時期から登園拒否と対人関係不穏などASD者としての特性があったが診断に至らず19歳で現会社へ就職、29歳で結婚、経過中気持ちの落ち込み、不眠、食欲不振に襲われ出勤不能によく陥っていた。就職20年目頃から頑張ろうとする気持ちに反して対人不安と事故(警察による誤認逮捕など)による気分低下をきたし49歳時から3か月間入院、その際ASD、ADHD併存例と診断した。以後寝つきが悪い、退屈、生きる意味不明の訴えが続き、50歳時話し合いで退職となる。退職後台所や洗濯などは可能だが再就職は拒否している。2症例ともASD特性に気づけないまま長年うつ病やパニック障害などの治療を受けていた。発達障害は「社会性」と「イマジネーション」「コミュニケーション」の特性を認識できれば、早期診断が期待できる疾患である。ただ4,50歳代まで放置されると思考パターンが固着し回復は妨げられる。

研修セミナーのご案内 pencil

すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(定員は各セミナー30名、会場は光健ボイスビルです)

12月 ※特に記載のないものは会場 光健ボイスビルです。
4(水)
14:00-16:00

ABC どこからがパワハラ? 冨宿 明子*
労働衛生コンサルタント
5(木)
14:00-16:00

ABC 「不安」を主症状とする病気~神経症性障害の治療の実際~ 赤崎 安昭*
鹿児島大学医学部保健学科 教授
7()
16:00-18:00

※B 石綿(アスベスト)関連疾患診断技術研修会
※会場:JR九州ホテル鹿児島(鹿児島市武1-1-2)
水橋 啓一
富山労災病院 アスベスト疾患センター長
11(水)
14:00-16:00

ABC 「働く人」のメンタルヘルスと自殺 長友 医継*
医療法人玉水会病院 心療内科部長
13(金)
14:00-16:00

ABC 感染症が流行る時の環境整備と自己管理 德永 龍子*
鹿児島純心女子大学 名誉教授
14()
14:00-16:00

ABC 職場の結核対策
※会場:鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)
徳留 修身*
元・保健所長(鹿児島県及び鹿児島市)
17(火)
14:00-16:00

AB 産業医として知っておくべき化学物質のリスクアセスメント(その1)~SDSの読み方と数理モデル~ 東 正樹*
(株)鹿児島環境測定分析センター 代表取締役
23(月)
18:00-20:00

ABC 職域における食と健康 堀内 正久*
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科衛生学・健康増進医学 教授
1月 ※特に記載のないものは会場 光健ボイスビルです。
10(金)
14:00-16:00

ABC 居眠りする従業員にどう対応するか 冨宿 明子*
労働衛生コンサルタント
18()
14:00-16:00

ABC 石綿の基礎知識(種類・解体・廃棄)
※会場:鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)
黒沢 郁夫*
黒沢労働安全衛生コンサルタント事務所 所長
21(火)
18:00-20:00

ABC オーラルフレイルと口腔機能低下症 鎌下 祐次
つくし歯科医院
29(水)
14:00-16:00

AB 安全衛生委員会での衛生講話ネタを蔵出し・上半期 冨宿 明子*
労働衛生コンサルタント

※講師*印:当センター産業保健相談員
※各研修会には定員があります。申し込みがないまま当日来られた場合、会場や資料の関係で受講できない場合がありますので必ず申し込みをしてください。
※受講できなくなった場合は必ずご連絡ください。

お知らせ

<鹿児島産業保健総合支援センター>

産業保健総合支援事業のPR動画について

当センターが行う各種事業の取り組みについて「のんさん」が紹介する動画を公開しています。
https://kagoshimas.johas.go.jp

産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

当センターでは、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

12月~2月の両立支援(出張)相談窓口

当センターでは、センター内の相談窓口のほかに、鹿児島医療センターと鹿児島大学病院に、治療と職業生活のための両立支援出張相談窓口を開設しています。

また、令和元年10月に薩摩川内市の「済生会川内病院」、「川内市医師会立市民病院」と治療と仕事の両立支援事業実施に係る協定を締結し、令和元年11月以降、「両立支援相談窓口」を開設します。設置状況は次のとおりです。

  1. 鹿児島産業保健総合支援センター
    相談窓口開設日時・・平日 8:30~17:15
  2. 国立病院機構 鹿児島医療センター がん相談支援センター内
    相談窓口開設日時・・毎月第1・3火曜日 10時~13時
    12月の相談日 → 3日(火)・17日(火)
    1月の相談日 → 7日(火)・21日(火)
    2月の相談日 → 4日(火)・18日(火)
  3. 鹿児島大学病院 地域医療連携センター内
    相談窓口開設日時・・毎月第3木曜日 10時~12時(事前予約が必要です)
    12月の相談日 → 19日(木)
    1月の相談日 → 16日(木)
    2月の相談日 → 20日(木)
  4. 済生会川内病院
    相談窓口開設日時・・毎月第2木曜日 10時~12時
    ※上記日時以外でも、事前予約の場合は日程調整のうえ対応します
    12月の相談日 → 12日(木)
    1月の相談日 →  9日(木)
    2月の相談日 → 13日(木)
  5. 川内市医師会立市民病院
    相談窓口開設日時・・毎月第4木曜日 13時~15時(事前予約が必要です)
    12月の相談日 → 26日(木)
    1月の相談日 → 23日(木)
    2月の相談日 → 27日(木)

鹿児島産業保健総合支援センターの産業保健専門職(保健師)および両立支援促進員がご相談に応じます。
相談は無料です。両立支援に関するお悩み等についてご相談ください。

事業場内での両立支援教育、体制の整備、規定等の整備、勤務・休暇制度の整備、両立支援の進め方についても、両立支援促進員が事業場を訪問してアドバイスを行いますので、ご利用ください。

詳細
▼両立支援出張相談窓口
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/10/ryouritsushien-madoguchi.pdf
▼鹿児島医療センターがん相談支援センター(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/05/ryoritu-iryousenta.pdf
▼鹿児島大学病院地域医療連携センター(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/05/ryoritu-kadasibyoin.pdf
▼鹿児島産業保健総合支援センター 相談窓口(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/05/ryoritu-sanpo02.pdf
▼済生会川内病院がん相談支援センター(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/10/ryouritsushien-sendaibyouin.pdf
▼川内市医師会立市民病院患者サポートセンター(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/10/ryouritsushien-sendaishiminbyouin.pdf

▼治療と仕事の両立支援申込み
ホームページから
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat767
FAXから
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/2019ryouritsushien.pdf

 

<労働者健康安全機構情報>

労災疾病等医学研究普及サイトのご案内

○労災疾病等医学研究普及サイト

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。

○労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html

○「じん肺診断技術研修」について
https://www.johas.go.jp/index/tabid/595/Default.aspx?itemid=867&dispmid=1466

○第2期「メンタルヘルス」分野について
https://www.research.johas.go.jp/22_mental/thema02_index.html

台風19号等被災者のための専用電話相談窓口を開設しました

令和元年10月に発生した台風19号等で被災した地域の産業保健活動を支援するため、被災された事業者、労働者、その家族等からのメンタルヘルスに関する相談及び健康に関する相談に対応する専用電話相談窓口(フリーダイヤル)を開設しました。

【台風19号等被災者のための心の相談ダイヤル】
(1)開設日及び時間帯
平日:10時から17時まで(土日祝日を除く)
(2)設置日
令和元年11月1日(金)
(3)電話番号
全国統一フリーダイヤル:0120-012-684

【台風19号等被災者のための健康相談ダイヤル】
(1)開設日及び時間帯
月・水・金曜日:13時から17時まで(祝日を除く)
(2)設置日
令和元年11月1日(金)
(3)電話番号
全国統一フリーダイヤル:0120-361-437

<厚生労働省情報>

依存症対策の周知について

【詳細】
▼依存症対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html
▼依存症の理解を深める普及啓発事業 特設ページ
https://www.izonsho.jp/
▼依存症の理解を深めるための普及啓発リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/izon_26.pdf

<鹿児島労働局情報>

鹿児島県特定(産業別)最低賃金の改正について

https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/2019-1119-1_20191119.pdf

働き方改革関連法の制度について解説動画等が掲載されました

https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hatarakikata.html

令和元年の労働災害発生状況

○令和元年(10月末速報)
□ 死亡者数は11人で、前年同期で1人(8.3%)減。
□ 休業4日以上の死傷者数は1,509人で、前年同期比で38人(2.6%)増。

https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/H31saigai_2019-1125-1.pdf

編集後記

紅葉狩り等の風光を愛でる暇も取れないうちに師走になりました。年齢を重ねる毎に月日の過行く流れを早く感じるのは古来から言われていることですが、特に師走の声を聴く頃には強く実感します。特に今年は改元という節目だけでなく「働き方改革」元年でもあり、法改訂関係、過労死、両立支援等々セミナーやシンポが集中しました。講師や座長などを務めたことよりも日程調整に苦労しました。

働き方改革の焦点が長時間労働に絞られた感があります。長時間労働はライフワークバランスの観点からは大きな問題ですが、長時間労働を無くすだけで現在起こっている働く人の種々の健康問題が解決するとは到底思えません。セミナー、シンポの中でも「残業規制をすれば過労死は減りますか」という趣旨の質問・発言が相次ぎました。当然の疑問です。職業性ストレスの最たるものは生産性のない、意義を見出せない作業にあります。過労死や過労自死は第2次産業よりも第3次産業で増加する傾向にありますが、時間当たり生産性でも第3次産業の相対的低下が顕著です。第1次、第2次産業の時間当たり生産性は先進国の中でもトップクラスを維持していますが、第3次産業は昭和の終わりには世界でもトップだったものが平成の間に先進国中最下位にまで低下しています。

特に製造業関連は自動化が進みAIの活用で益々生産性向上が期待可能ですが、第3次産業分野で可能か聊かならぬ疑問を感じています。労働時間の在り様を見直すとともに、個々の作業をも見直し、生産性において直接のみでなく間接的にも生産性向上に結び付く、換言すれば人々の生活に役立つ、そのような要素のないものを排除することが重要と考えます。日本では株式会社の従業員を社員と呼び、多くの経営者が大きな課題に対応するときによく「社員一丸となって」という意味の言葉を出します。英国初の株式資本主義では、株式会社の至上命題は株主の利益増大であり、それ以外の目的はありませんが、我が国の株式会社を始めとする営利法人は「会社のため、社員のため、社員家族のため、社会のため」というような主旨の社是や社訓等を掲げます。株主の利益は後回しのような運営を行い、そのような企業が信頼され、またそういう経営者が尊敬されてきました。これらは欧米諸国とは大きく異なるもので、まさに日本型修正資本主義と称されるようなシステムでした。昨今の強欲資本主義とは真逆のものといえますが、それが崩壊しつつあるようです。

このような中では、「働き方改革」に伴う法制度や諸政策を遵守するのみでは働く人の健康を保持増進としては不十分でしょう。法制度を守ることを最低限として、各職場で出来ることを追求し、それこそ「全社員」一丸となって(正確には社員ではなく従業員:社員とは株式会社では株主、非営利法人では出資者のこと)働くことから健康阻害を守るのではなく、働くことが健康増進になるような対処法・対策を構築していくことです。令和2年を、国の零落ではなく安定的な心的に健康な国になる始まりの年となる準備の月としたいものです。