メールレター 第219号
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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第219号
2021/6/1
発行:鹿児島産業保健総合支援センター
所長 草野 健
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相談員からのメッセージ
「遅々とした がん治療と仕事の両立支援充実への期待」
産業保健相談員 德永 龍子
(担当分野:保健指導)
がんは、日本人の2人に1人がかかる病気だ。がん患者の3人に1人は、20~60代で、仕事と治療の両立の悩みは誰でもが直面し得る。治療法や働き方に決まった解はないが、仕事と治療の両立をすれば経済的見通しが立つ。
両立支援に取り組む事業所は2018年55.8%で前年より9.1%増えた。
2020年10月の国立がん研究センター報告書によると、がん診断時に収入のある仕事をしていた人は44%だった。うち、治療のため「退職・廃業した」は20%で3年前より10%減ったが、再就職・副業した人は2割以下にとどまる。「休職・休業した」は54%、変化なし26%である。在宅勤務や短時間勤務など職場制度の利用は4割以下で、制度広報や事業所の両立支援充実に期待する。
一方、回答者の中で、がんや治療に伴う「身体的苦痛がある」は35%、「精神的苦痛がある」は24%で、がんを抱えながら日常生活を送る困難さが浮き彫りになった。国も、がん患者の相談対応や企業との調整役を担う「両立支援コーディネーター」を育成して支援策に力を入れている。
内閣府は、2019年7月全国18歳以上1647人を対象に「がん対策・たばこ対策に関する世論調査」(前回2016年11月)を行った。がん治療や検査で2週間に1回程度通院しながら、仕事を両立できる環境にいるかの質問に「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」の回答は計57.5%(前回より7%減)で半数以上。困難理由は、前回と同様に「代わりに仕事をする人がいない、いても頼みにくい」が20.9%、「職場が休むことを許してくれるかどうかわからない」が19.1%、「体力的に困難」が19.9%、「休むと収入が減ってしまう」15.9%だった。心配はするが、がん検診受診は約半数で欧米のがん検診率8割より低い。
労働者や事業所は、自分事としてがん予防、がん検診の受診、支援を求めやすい職場づくりへの意識改革をして、既存の支援制度の活用促進やがんに罹患しても就労可能な職場環境づくりが急務である。国立がん研究センター等のがん予防ガイドラインでは、5つの健康習慣を実践するとがんリスクが男性で43%、女性で37%低下するという。5つは、(1)食生活を見直す、(2)体を動かす、(3)節酒する、(4)禁煙する、(5)適正体重を維持するである。しかし、がん対策、メタボ対策共になかなか成果が出ない。英国の研究グループは、2030年の平均寿命予測で日本は男性11位、女性3位まで下げるとした。日本人は、今こそ自分事としてがん予防、がん検診受診、がん就労の職場環境整備の実施が急務と気づき実践開始すべき時である。
研修セミナーのご案内
下記、セミナーはどなたでも参加できます。
参加される皆様は、新型コロナウイルスの感染予防対策(以下URL)にご協力ください。
⇒ https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2020/05/kensyu-kai.pdf
なお、新型コロナウイルスの感染拡大等によっては、中止または延期させていただくことも考えられますが、その際はご理解をお願い申し上げます。
土曜日開催の研修会について |
令和3年4月から土曜日の研修会場は、第12川北ビルBOIS鹿児島と鹿児島県医師会館の2か所になります。 日程により会場が異なりますので、事前にご確認の上、ご参加くださいますようお願い申し上げます。 また、当日13時以降は、センターや各会場へ連絡されても取次ぎができませんのでご注意ください。なお、各会場へのご連絡はお控えください。 |
≪ 6月 ≫【定員】14名 【会場】光健ボイスビル2F ※6/12を除く
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☆6月2日(水)14:00~16:00
「眼に関する話題」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆6月12日(土)14:00~16:00 ※定員25名
「職場における受動喫煙対策
~健康増進法改正の概要と受動喫煙防止のためのガイドライン~」東先生
※会場:第12川北ビルBOIS鹿児島8F(鹿児島市上之園町24-2)
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆6月22日(火)18:00~20:00
「「産業歯科医の役割」-歯科医師による特殊健康診断-」門松先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆6月23日(水)14:00~16:00
「「働く人」におけるストレス関連障害」長友先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆6月28日(月)18:00~20:00
「職域における身体活動:具体的な工夫を考える」堀内先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆6月30日(水)14:00~16:00
「古くて新しい色覚問題」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
≪ 7月 ≫【定員】14名【会場】光健ボイスビル2F ※7/10、7/17を除く
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☆7月9日(金)14:00~16:00
「検査異常者の改善行動を促す保健指導」德永先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位
☆7月10日(土)14:00~16:00 ※THPレベルアップ研修
「健康づくりのための運動指導について」前田先生
※会場:鹿児島県医師会4F大ホール(鹿児島市中央町8-1)
日医認定産業医:生涯(実地)2単位
☆7月10日(土)16:10~17:10 ※THPレベルアップ研修
「労働衛生関係法令」当センター副所長
※会場:鹿児島県医師会4F大ホール(鹿児島市中央町8-1)
日医認定産業医:生涯(更新)1単位
☆7月17日(土)14:00~16:00 ※定員30名
「職場での応急手当(救急蘇生法を除く)」冨宿先生
※会場:鹿児島県医師会3F中ホール(鹿児島市中央町8-1)
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆7月20日(火)14:00~16:00
「喫煙対策の推進」徳留先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆7月30日(金)14:00~16:00 ※満席
「境界性人格障害(BPD)とメンタルヘルス・カウンセリング-Ⅱ
~巻き込み、打ち負かしに苦慮する家族、同僚、上司をめぐって~」久留先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
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◇…産業医対象
●…産業保健スタッフ対象
☆…産業保健スタッフ・産業医対象
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▼詳細
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/h2335
お知らせ
<鹿児島産業保健総合支援センター>
産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。
当センターでは、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。(オンラインによる相談も可能です。)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase
両立支援(出張)相談窓口のご案内
両立支援(出張)相談窓口の設置状況は次のとおりです。
なお、医療機関における両立支援(出張)相談窓口では、新型コロナウイルス感染症の状況によっては、中止の可能性があります。
▼両立支援(出張)相談窓口一覧
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2020/02/ryouritsushien-madoguchi.pdf
鹿児島産業保健総合支援センターの産業保健専門職(保健師)および両立支援促進員がご相談に応じます。
相談は無料です。両立支援に関するお悩み等についてご相談ください。(オンラインによる相談も可能です。)
事業場内での両立支援教育、体制の整備、規定等の整備、勤務・休暇制度の整備、両立支援の進め方についても、両立支援促進員が事業場を訪問してアドバイスを行いますので、ご利用ください。
▼治療と仕事の両立支援申込み
ホームページから
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat767
FAXから
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/ryoritusien-mousikomi-ura.pdf
メンタルヘルス対策支援
鹿児島産業保健総合支援センターでは、メンタルヘルス対策に取り組もうとする事業場を支援しています。事業場にメンタルヘルス対策促進員が訪問して、「心の健康づくり計画」の策定、体制の整備、職場環境の把握と改善、管理監督者向けの研修、若年労働者(含む全社員)向けの研修などの支援を行っています。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat426
<労働者健康安全機構情報>
令和3年度産業保健関係助成金のお知らせ
令和3年度からは、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」の改正を踏まえて、事業者が継続的かつ計画的に心身両面にわたる積極的な健康保持増進対策を推進するために、「事業場における労働者の健康保持増進計画助成金」を新たに開始します。職場における労働者の健康管理等のために、ぜひご活用ください。
【助成金の種類】
・事業場における労働者の健康保持増進計画助成金
・副業・兼業労働者の健康診断助成金
・治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース、制度活用コース)
・ストレスチェック実施促進のための助成金
・職場環境改善計画助成金(事業場コース、建設現場コース)
・心の健康づくり計画助成金
・小規模事業場産業医活動助成金
(産業医コース、保健師コース、直接健康相談環境整備コース)
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1944/Default.aspx
令和3年度両立支援コーディネーター基礎研修開催のご案内
令和2年度に引き続きオンライン形式での研修開催を予定しています。
研修日程等の詳細につきましては、6月上旬頃に機構ホームページ上で公開いたしますので、ご確認いただきますようお願いいたします。
https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/1968/Default.aspx
【動画解説】オンラインによる医師の面接指導を実施するに当たっての留意事項
労働者健康安全機構では、産業医科大学産業生態科学研究所 産業精神 保健科学研究室教授 江口 尚先生による講演を撮影した動画を公開しています。
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/johoteikyo/tabid/1942/Default.aspx
ポータルサイト「さんぽセンターWebひろば」を開設しました!(再掲)
https://www.johas.go.jp/Portals/0/sanpocenter/webhiroba.html
労災疾病等医学研究普及サイトのご案内
労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。
○労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html
<厚生労働省情報>
「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)が公表されました!
令和2年における職場での熱中症による死亡者数は22人で、前年から3人減少しましたが、死傷者数(死亡者数と休業4日以上の業務上疾病者数を加えた数)は959人と前年から130人増加しています。
熱中症による年間の死傷者数は400~500人台でしたが、平成30年に1,178人と急増した後は800~900人台で推移しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000746739.pdf
【関連情報】
■職場における熱中症予防情報(熱中症ポータルサイト)
熱中症予防のための社内教育に活用ください
https://neccyusho.mhlw.go.jp/
■令和3年「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000747102.pdf
■職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000633853.pdf
呼吸用保護具のフィットテスト実施者に対する教育の実施について
溶接ヒュームへのばく露による健康障害防止のため、令和5年4月1日以降、事業者は、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において当該作業に労働者を従事させるときは、1年以内ごとに1回、定期的に「フィットテスト(呼吸用保護具が適切に装着されているか確認する事)」を厚生労働大臣の定める方法により実施し、実施結果の記録を3年間保存することとなりました。
フィットテストを実施する者には、呼吸用保護具が適切に装着されているか確認することができる知識と経験が必要になります。今般、フィットテスト実施者に対する教育実施要領が定められました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000767737.pdf
2021年世界禁煙デー【 5月31日~6月6日は「禁煙週間」です 】
世界禁煙デー 5月31日
令和3年度「禁煙週間」テーマ
「たばこの健康影響を知ろう!~新型コロナウイルス感染症とたばこの関係~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202210_00007.html
6月は「外国人労働者問題啓発月間」です
厚生労働省では、毎年6月を「外国人労働者問題啓発月間」と定めています。
【標語】
「ともに働き、ともに活躍 ~外国人雇用はルールを守って適正に~」
【実施期間】
令和3年6月1日(火)から6月30日(水)までの1か月間
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18664.html
<鹿児島労働局情報>
「チェスト!緊急ゼロ災運動」に取り組みます!
鹿児島労働局では、近年急増する労働災害の発生に歯止めをかけ、減少に転じさせることを目的として、令和3年4月20日から令和3年12月31日の期間で「チェスト!緊急ゼロ災運動」を展開し、各事業場において無災害を目指すための労働災害防止対策への重点的な取組の促進を広く働きかけ、一層の労働災害防止対策の強化を図ることとしました。
鹿児島労働局労働災害防止対策【チェスト!緊急ゼロ災運動】
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/news_topics/topics/2021-0510-2.html
令和3年の労働災害発生状況
○令和3年(3月末速報)
□ 死亡者数は5人で、前年同期比で2人(33.3%)増。
□ 休業4日以上の死傷者数は367人で、前年同期比で13人(3.7%)増。
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/r3saigai_2021-0511-1.pdf
<新型コロナウイルス関連情報>
職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(日本渡航医学会)
令和3年5月12日に第5版へ改訂されています。
https://plaza.umin.ac.jp/jstah/index2.html
<鹿児島県労働委員会>
県労働委員会委員による「労使間のトラブルに関する相談会」の開催
http://www.pref.kagoshima.jp/ea01/sangyo-rodo/rodo/rodoiinkai/assen/soudannkai.html
編集後記
緊急事態宣言が再度延長された。人流増大を何とかしよう・3密を徹底しようとの対策である。パンデミックに温暖化による気候異変、さらには地殻変動本格化の兆しか、と思わせるような地震などの多発。「地球という生命体が免疫機能を発揮して、ホモサピエンスの排除に動き出した」というような荒唐無稽と一蹴したいような言説も一概には無視できない思いにもなる。
我々産業保健に携わる者にとっては、3密回避・人流抑制等の感染拡大防止策を要請される中では、その活動も制約が大きくならざるを得ない。衛生委員会もリモートや書面で、巡視も、面接もWebで、となると最先端のIT技術活用で効率的との意見もある。しかし、それらの業務に代替できる業種・事業場は極めて限定的。少なくとも鹿児島の場合、3分の2以上は50人未満の小規模・零細規模の事業場。政府やマスメディアの勧める働き方など縁遠いのが実情。
さらに、特に巡視や面接などの活動は五感全てを用いて行うもの。Web活用は視覚と聴覚のみ。効果に大いに疑問を持たざるをえない。実のある協議を行うにも、その場の「空気」を重視することは必要であろう。
こんな中、若い者の間でマルクスが見直されているとか。半世紀以上も前にマルキシズムの洗礼を受けた身としては一種の感懐を持つ。確かに働き方改革の本質は、労働の阻害性を無くすことであるから、労働により得られた付加価値は働いた者本人が得るべき、には理がある。労働も商品として扱う資本主義経済は止揚されるべき経済システムという思想には一時期傾倒した。しかし、労働の価値は生み出された付加価値の多寡のみにあるのではない。少なくとも、日本人の多くは「働く=端を楽にする」的な精神性が通底していると思う。アダム・スミス流の個々の利益追求が国家自体の利益自体と等価であり、自由な営利追求は神の意志にも適うというマルクスの時代の欧州では、労働による付加価値が貨幣価値に換算できるもの以外にもある、等は想像だにできなかった精神性であろう。
ワクチン接種による集団免疫が何時獲得できるのか、今後も新たな変異株出現可能性を考慮すれば、果たしてワクチンが解決策になるのか。
このパンデミックを機に、働き方を根本から見直すとともに、開発や発展を目標とはしない経済システムの追求が必須であろう。
産業保健の現場では、以上の観点に立った業務分析を行い、働く者が意義・意味を見いだせない「阻害された労働」を排除していくことが肝要であろう。