お知らせ

メールレター第180号

  鹿児島産業保健総合支援センター メールレター第180号 2018/03/02

  発行:鹿児島産業保健総合支援センター 所長 草野 健

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相談員からのメッセージ confident

「死戦期呼吸を知っていますか」

産業保健相談員 冨宿 明子(担当分野:産業医学)

   マラソン大会が各地で行われている真っ最中です。ランナーが致死的な不整脈を起こしたときに救ってくれるAEDという自動体外式除細動器を持ったボランティア隊のおかげで九死に一生を得た、という話がよく聞かれます。

   一方で昨年の7月、痛ましいニュースが流れました。新潟の高校野球部の女子マネジャーが、3.5キロ離れた野球場から選手と一緒に走って高校に着いた途端、倒れ込みました。直後に駆け付けた監督は「呼吸はある」と判断して、救急車が来るまでの間、AEDを使いませんでした。その後、女子マネジャーは低酸素脳症で亡くなりました。AEDを使うべき状況なのに使わなかったから不幸な結果になったのか、真実はわかりませんが、「呼吸があるようにみえて、実は呼吸をしていなかったのではないか。すでに心肺停止状態だったのではないか。」という仮定で話を掘り下げてみましょう。

   心臓が急に止まって脳に酸素が届かなくなると、しゃくりあげるように下あごを動かすという動作が数分間、見られます。これを「死戦期呼吸」といいます。「呼吸」という言葉が付いていますが、実際には呼吸はしていません。さも呼吸をしているように見えるだけです。

  この動作が見られたら、心肺停止の状態になったばかりということです。AEDが大変有効な時なのです。
  心肺蘇生のマニュアルには「普通の」呼吸をしていなければ心肺停止と判断して蘇生を開始する…などと書かれています。わざわざ「普通の」呼吸と書かれている理由は、死戦期呼吸を見て「呼吸しているから心肺停止ではない」と誤って判断しないようにするためです。

  動画サイトで「死戦期呼吸」で検索すると、海外の実際のケースや、日本人の俳優が演じているものが見られます。職場で蘇生法を教育する立場の方は、動画で予習をしておいて、社員全員の前で死戦期呼吸を演じることをお勧めします。強烈に社員の脳裏に焼き付くはずです。

おすすめ教材(無料貸出し等) book 

当センターでは、産業保健に関する図書、ビデオ・DVDを無料にて閲覧・貸出ができます。
ぜひご利用ください。

★★★おすすめ図書 book ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
プロに聞く 部下を持つ人のためのメンタルヘルス対策

(分類:7-126,労働調査会、2010年,171頁)

 

【概要】
  1働く人のストレスの現状
  2パワーハラスメント(パワハラ)とは?
  3部下と上司の心の健康を保つための仕組みづくり
  4いま起きている職場問題の解決方法
  5その他の事業場外資源紹介s

★★★おすすめDVDmovie ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
職場におけるメンタルヘルス 事例集Pert.1-エンストを起こした新入社員-
(分類:7-8,労働基準調査会 健康事業部)

【内容】
運動習慣が無い、運動は苦手という人のための運動ビデオ。ちょっとした時間にできる筋肉
トレーニングとからだに負担をかけにくいウォーキングの方法を紹介しています。
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研修セミナーのご案内 pencil

すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(定員は各セミナー30名、場所は光健ボイスビルです)

3月

▽ 3月 1日(木)【赤崎 産業保健相談員】14:00~16:00
「大人の発達障害を知ろう」

▽ 3月 3日(土)【徳留 産業保健相談員】15:00~17:00
<※会場:鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)>
「職場の喫煙対策:最近の話題」

▼ 3月 5日(月)【黒沢 産業保健相談員】14:00~16:00
「職場巡視と労働衛生管理」

▽ 3月 7日(水)【冨宿 産業保健相談員】14:00~16:00
「コンピュータ画面を見る労働者の健康管理」

▽ 3月 9日(金)【久留 産業保健相談員】14:00~16:00
「メンタルヘルス・カウンセリングⅥ
~生きる意味のありよう(自殺・自死)と心理支援~」

▽ 3月13日(火)【前田 産業保健相談員】18:00~20:00
「職場で起こった循環器疾患について」

▽ 3月14日(水)【東 産業保健相談員】14:00~16:00
「作業環境測定結果報告書の読み方」

▼ 3月16日(金)【小田原 産業保健相談員】14:00~16:00
「ストレスチェック制度における事例検討」

4月

● 4月10日(火)【徳留 産業保健相談員】14:00~16:00
「結核の現状と施設内(院内)感染」

▽ 4月16日(月)【冨宿 産業保健相談員】14:00~16:00
「古くて新しい色覚問題」

▽ 4月20日(金)【小田原 産業保健相談員】14:00~16:00
「健診事後措置事例検討」

● 4月21日(土)【黒沢 産業保健相談員】14:00~16:00
<※会場:鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)>
「化学物質リスクアセスメント及び演習」

▽ 4月23日(月)【堀内 産業保健相談員】18:00~20:00
「化学発がん「アスベストと有機溶剤」:労災と公害の視点」

● 4月27日(金)【德永 産業保健相談員】14:00~16:00
「細胞からみる若返り法」

 

▽…産業医対象で、産業医認定単位があります。
▼…衛生管理者、産業医対象ですが、産業医認定単位はあります。

○…保健師対象ですが、産業医認定単位はあります。
●…産業保健スタッフですが、産業医認定単位はあります。

お知らせ sign01

◆◆鹿児島産業保健総合支援センター情報◆◆
  産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

鹿児島産業保健総合支援センターでは、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。電話やFAX、ホームページからもお気軽にご相談ください。

詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

メンタルヘルス対策支援のご案内

従業員の心の健康対策への取組方法がわからないという事業場の皆さまへ私たちは、メンタルヘルス対策に取り組もうとする事業場を支援します。
詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/mental/cat426/work.html

地域産業保健センターのご案内

労働者数50人未満の小規模事業場では、労働者に対する産業保健サービスを充実させることを目的に、地域産業保健センターが設けられています。
詳細
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/cat638/post_15.htm

治療と職業生活の両立支援事業

近年、がん等の治療は進歩し、がん等になっても仕事を辞めず、働き続けることが出来るようになってきました。企業としては、今後、労働者の高年齢化に伴い、がん等に罹患する社員の増加が見込まれるため、経営の観点からも、社員が治療を続けながら働くことができる環境を整備する必要があります。「治療と職業生活の両立支援対策」は、メンタルヘルス対策と同様に、今、企業が取り組むべき大きな課題の一つです。
鹿児島産業保健総合支援センターでは、両立支援に関する各種支援を無料で提供しています。ぜひご活用ください。

詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat768

両立支援出張相談窓口

鹿児島産業保健総合支援センターでは、国立病院機構 鹿児島医療センターとの連携により、平成30年1月16日から治療と職業生活のための両立支援出張相談窓口を開設しています。相談は無料です。
両立支援に関するお悩み等についてご相談下さい。

○ 場 所 国立病院機構 鹿児島医療センター がん相談支援センター
○ 日 時 毎月第1・3火曜日 10時~13時(3月は6日(火)・20日(火))
○ 対応者 鹿児島産業保健総合支援センター 両立支援促進員

詳細
★両立支援出張相談窓口
 https://kagoshimas.johas.go.jp/information/ryouritushienmadoguchi.pdf
★治療と職業生活のための両立支援相談窓口のご案内(鹿児島医療センター内)リーフレット
 https://kagoshimas.johas.go.jp/information/ryouritushien_A4-web.pdf

◆◆◆厚生労働省情報◆◆◆
「治療と仕事の両立支援ナビ」ポータルサイト

詳細https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/

平成30年4月に向けた無期転換ルールに関する取組の強化について

厚生労働省では「無期転換ルール」(※)に関する相談に対応する全国統一番号の相談ダイヤル「無期転換ルール緊急相談ダイヤル」を開設します。

相談窓口開始日:平成30年2月13日(火)
無期転換緊急相談ダイヤル:(ナビダイヤル)0570-069276

  ※無期転換ルールとは、
  平成25年4月1日以降の有期労働契約期間が同一の事業主との間で更新されて通算5年を超えた有期
  契約労働者が、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)への申込みをした場合、事業主は当該申込
  みを承諾したものとみなされ、無期労働契約に転換されるルールのこと。

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000193500.html

第10回過労死等防止対策推進協議会 配布資料

詳細⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192071.html

看護師・精神保健福祉士の方がストレスチェックの実施者になるための研修

ストレスチェックの実施者は、医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師若しくは精神保健福祉士です。看護師・精神保健福祉士に対する研修(実施者になるために必要な研修※に関する情報は次のとおりです。

※3年以上労働者の健康管理等の業務に従事した経験を有する看護師又は精神保健福祉士は、研修を受けなくても実施者となることができます。

≪主な項目≫
 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
  (1) 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法)
  (2) 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)
  (3) 産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法等)

詳細http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150601-1.pdf

第7回医師の働き方改革に関する検討会 資料

詳細⇒  http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000194099.html

4月1日から定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります

【変更のポイント】
  ○ 対象となる健康診断
    □ 規則第43条(雇入時の健康診断)
    □ 規則第44条(定期健康診断)
    □ 規則第45条(特定業務従事者の健康診断)
    □ 規則第45条の2(海外派遣労働者の健康診断)
  ○ 規則で定めた健康診断項目に変更はないこと
  ○ 血中脂質検査において、LDLコレステロールの評価方法を示したこと
  ○ 血糖検査において、空腹時血糖に加え、随時血糖を認めることとしたこと
  ○ 尿検査において、医師が必要と認めた場合には、血清クレアチニン検査を
      実施することが望ましい検査項目としたこと。

詳細
平成29年8月4日付け基発0804第4号
「定期健康診断等における診断項目の取扱い等について」(リーフレット)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000194701.pdf

労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会の報告書
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000149460.html

「医師の働き方改革に関する検討会」における「中間的な論点整理」など

「医師の働き方改革に関する検討会」が、このたび、「中間的な論点整理」及び「 医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を取りまとめました。

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000195337.html

◆◆◆鹿児島労働局情報◆◆◆
平成30年の労働災害発生状況(H30.2.20速報)

○ 死亡者数は0人。
○ 休業4日以上の死傷者数は63人で、前年同期比で7人(12.5%)増。

詳細http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0115/3212/H30saigai_2018-0220-2.pdf

◆◆◆労働者健康安全機構情報◆◆◆
労災疾病等医学研究者普及サイトのご案内

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。今回のテーマは、次のとおりです。

1「メンタルろうさい」
メンタルろうさいは、職場におけるメンタルヘルス不調予防をテーマにした研究によって構築されたシステムで、簡単なストレスチェックの項目に回答することで、自身のストレス状態やストレスの対処法を知ることができます。働かれている方や休業中の方が対象で、利用登録すればどなたでも利用できます。また、ストレスチェック完了後には、メールや電話等での相談窓口も紹介しています。詳細は次のとおりです。
詳細https://www.yokohamah.johas.go.jp/medical/mhc/home.htm

2「女性の勤務環境が内分泌環境に及ぼす影響についての研究」
例えば、看護師では、夜間労働により不規則な月経周期を示す例が多いことの機序解明のため、内分泌ホルモンの夜間労働による変動を検討してみると、夜の暗闇による血中メラトニンの上昇が、夜間明るい所で働くため、上昇していないことが判明しました。詳細は次のとおりです。
詳細http://www.research.johas.go.jp/22_jyosei/past02.html

所長よりひと言 pen

   今冬は例年にない寒波に見舞われましたが、如月中旬からは早々と春の陽気になり、梅の盛りも過ぎて種々の桜の開花が報じられています。休眠打破が遅いために九州でも開花宣言が遅くなりがちなソメイヨシノも今年は早まるのではと思わせるこの冬でした。
   過去最多のメダルを獲得してマスメディアを賑わした冬季オリンピックも終わり、メディアの関心が「働き方改革」関連法案の行方にシフトしつつあります。高齢人口は、今後20年以上は増加し続ける一方で、出生率は低下傾向が継続することが予想されています。このことは労働人口減少が長期間続くことを意味します。労働生産性を向上させることが必要とされることになりますが、課題とすべきは労働者一人当たり生産性ではなく、単位労働時間当たりの生産性です。確かに1980年代に比較すると労働者一人当たりの実総労働時間は大幅に減少し、年間2000時間を下回っています。
   しかしそれでもドイツ、フランス、イギリス等とは年間で500時間ほどの差があります。時間当たりの労働生産性は向上していると言えますが、これらのデータは正規雇用者中心で前世紀末より急増している非正規労働者の実態については正確なデータは存在しません(恣意的な調査結果は多数あるようですが)。
   高ストレス者の医師面接が2年目には初年度より増加している印象を受けます。それらの面接に関する産業医からの相談も増えてきました。自身の経験からも感じることですが、ストレス要因としては単なる長時間や過重というよりも作業内容に意義を感じているか否かが重要と思われます。どのような業種であれ作業そのものが何らかの「価値」を生み出しているか否か。「価値」が貨幣に換算できるかではなく、自らの行う作業に価値を見出していれば少々の過重さは「ストレス」とはなっていないように思われます。
   働き方改革の中心は、個々の労働者が価値を見出せない作業を少なくすることであり、「はたらく」ことに意義と誇りを持てるようにすることと考えます。人口が右肩上がりの時期の高度経済成長政策の踏襲や模倣ではなく、人口減少社会における経済の在り方や働き方を根本から追及すべき時と考えます。
   政府がどのような「働き方」政策を策定しても、産業保健現場で活動するスタッフとしては、法制度は順守しつつもマニュアル通りではなく、マニュアルの応用を工夫する必要があります。一人ひとりの働く人の健康を保持・増進するための方法は労働者の数ほどあることを銘記し、個別性・特殊性を確実に捉えた活動を構築すべきと思います。
   3月は各事業場とも新年度に向けた取り組みが本格化する月です。平成時代の終わりになるであろう30年度こそ、メンタルヘルス対策や両立支援対策も取り入れた「健康経営」へ向けて大きく前進する年にしたいものです。