お知らせ

メールレター第181号

鹿児島産業保健総合支援センター メールレター第181号   2018/04/02

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   発行:鹿児島産業保健総合支援センター 所長 草野 健

 

 

 

 

相談員からのメッセージ confident

「過重労働」と「生きる意味」のありよう

産業保健相談員 久留 一郎
(担当分野:カウンセリング)

   昨年、3月末、オーストリア・ウイーン医科大学(精神療法科)との学術交流を企画・実施する機会があり、その折、ビクトール・フランクル先生のアーカイブにも行ってきた。精神科医・フランクルは、過酷で残虐な生き方を強いられた「死の強制収容所」から奇跡的に生還できたのは、「生きる意味を喪失しないこと(生きる意味の確立)」であったと、多くの著書の中で述懐(著書「夜と霧」など)している。
   精神的に挫折し苦悩する人間は、多かれ少なかれ「生きる意味の喪失状況」にあることが臨床的に知られている。彼らの多くは、不まじめで、不誠実さのために、不適応人間になっているのではなく、むしろ、まじめで、誠実な人間であり、換言すれば「過重労働」の人間は、会社にとっては適応的人間ともいえる。即ち、彼らは「社会的には適応的であり、個人的(内面的)には自己喪失的生き方を強いられた挫折的状況にある」とも言える。
  「過剰適応」といわれる会社人間は、バーン・アウト(燃えつき)症侯群に陥りやすいという。会社という枠組みの中で行動している時は、厳しいノルマに忠実であり、過激な競争社会に打ち勝つために生きている。ところが、(過重労働のために)心身ともにエネルギーを消耗し、疲弊すると、彼らの「生きる意味」は喪失的になり、うつ的、心身症的人間に変容する危険性がある。
   「過重労働」の人間として身も心も会社に忠誠をつくしているとき、それは「会社依存的人間」であり、「生きる意味を失った人間」である、とフランクル先生は述べているように思われる。「生きる意味を失った人間」は、「自己を見失った人間」であり、昨今の「過労死」に至る危険性があるものと危惧するのである。

おすすめ教材(無料貸出し等) book 

当センターでは、産業保健に関する図書、ビデオ・DVDを無料にて閲覧・貸出ができます。
ぜひご利用ください。

★★★おすすめ図書 book ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
プロに聞く 部下を持つ人のためのメンタルヘルス対策

(分類:7-126,労働調査会、2010年,171頁)

【概要】
  1働く人のストレスの現状
  2パワーハラスメント(パワハラ)とは?
  3部下と上司の心の健康を保つための仕組みづくり
  4いま起きている職場問題の解決方法
  5その他の事業場外資源紹介s

★★★おすすめビデオmovie ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
職場におけるメンタルヘルス 事例集Pert.1-エンストを起こした新入社員-
(分類:7-8,労働基準調査会 健康事業部)

【内容】
運動習慣が無い、運動は苦手という人のための運動ビデオ。ちょっとした時間にできる筋肉
トレーニングとからだに負担をかけにくいウォーキングの方法を紹介しています。
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研修セミナーのご案内 pencil

すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(定員は各セミナー30名、場所は光健ボイスビルです)

4月

 10日(火) 14:00~16:00【徳留先生】
「結核の現状と施設内(院内)感染」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

16日(月)14:00~16:00【冨宿先生】
「古くて新しい色覚問題」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

20日(金)14:00~16:00【小田原先生】
「健診事後措置事例検討」
日医産業医認定単位:生涯(実地)2単位

 21日(土)14:00~16:00【黒沢先生】
※会場:鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)
「化学物質リスクアセスメント及び演習」
日医産業医認定単位:生涯(実地)2単位

23日(月)18:00~20:00【堀内先生】
「化学発がん「アスベストと有機溶剤」:労災と公害の視点」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

 27日(金)14:00~16:00【德永先生】
「細胞からみる若返り法」
 日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

5月

11日(金)14:00~16:00【冨宿先生】
「身近に起こりうる労災事例を掘り下げる」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

17日(木)14:00~16:00【東先生】
「産業医として知っておくべき化学物質のリスクアセスメント(その1)
 ~SDSの読み方と数理モデル~」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

  18日(金)14:00~16:00【久留先生】
「メンタルヘルス・カウンセリングⅠ
「対人関係障害」の心理支援(発達障害:ASD)」
 日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

 21日(月)14:00~16:00【冨宿先生】
「労働者が実践しやすい熱中症対策」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

23日(水)14:00~16:00【長友先生】
「うつ病への対応① -診断、治療、紹介-」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位

  ☆…産業医対象で、産業医認定単位があります。 
  ●…産業保健スタッフですが、産業医認定単位はあります。

お知らせ sign01

◆◆鹿児島産業保健総合支援センター情報◆◆
  産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

当センターでは、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。

詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

メンタルヘルス対策支援のご案内

従業員の心の健康対策への取組方法がわからないという事業場の皆さまへ私たちは、メンタルヘルス対策に取り組もうとする事業場を支援します。
詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/mental/cat426/work.html

地域産業保健センターのご案内

労働者数50人未満の小規模事業場では、労働者に対する産業保健サービスを充実させることを目的に、地域産業保健センターが設けられています。
詳細
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/cat638/post_15.htm

治療と職業生活の両立支援事業

当センターでは、両立支援に関する各種支援を無料で提供しています。ぜひご活用ください。

詳細https://kagoshimas.johas.go.jp/about/cat765/cat768/post_18.html

両立支援出張相談窓口

当センターでは、鹿児島医療センターとの連携により、平成30年1月16日から治療と職業生活のための両立支援出張相談窓口を開設しています。相談は無料です。
両立支援に関するお悩み等についてご相談ください。

○ 場 所:鹿児島医療センター がん相談支援センター
○ 日 時:毎月第1・3火曜日 10時~13時
       4月の相談日 → 3日(火)・17日(火)
       5月の相談日 → 1日(火)・15日(火)
       6月の相談日 → 5日(火)・19日(火)
○ 対応者  鹿児島産業保健総合支援センター 両立支援促進員

詳細
★両立支援出張相談窓口
 https://kagoshimas.johas.go.jp/information/2018.03ryouritusien.pdf
★治療と職業生活のための両立支援相談窓口のご案内(鹿児島医療センター内)リーフレット
 https://kagoshimas.johas.go.jp/information/ryouritushien_A4-web.pdf

◆◆◆厚生労働省情報◆◆◆
「治療と仕事の両立支援ナビ」ポータルサイト

詳細https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/

平成30年度「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の実施

職場における熱中症予防対策の一層の推進を図るため、平成30年4月を準備期間、5月から9月までの実施期間とする「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」が実施されます。

詳細
★厚生労働省報道発表
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000195379.html
★STOP!熱中症 クールワークキャンペーン概要及び実施要綱」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11303000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Roudoueiseika/0000195638.pdf
★職場における熱中症による死傷災害の発生状況(H30年1月末速報値)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11303000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Roudoueiseika/0000195639.pdf

「伐木等作業における安全対策のあり方に関する検討会」報告書

【報告書のポイント】
1)チェーンソーによる伐倒時に受け口を作るべき立木を、胸高直径40cm以上から20cm以上とすること

2)チェーンソーによる伐倒時に、伐倒木の高さの2倍の範囲を立入禁止にすること。
3)かかり木処理の方法として、かかられている木の伐倒、浴びせ倒しを禁止すること。
4)チェーンソーによる伐木等作業時に、下肢を防護する防護衣の着用を義務付けるべきこと。
5)チェーンソーによる伐木等作業に係る教育の充実を図ること。

詳細
⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196140.html

「石綿障害予防規則等の一部を改正する省令案要綱」等の諮問と答申

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196491.html

「がん対策推進基本計画」の変更について

厚生労働省は、過労死やメンタルヘルス不調への対策の重要性が増していることや、就業構造の変化及び労働者の働き方の多様化を踏まえ、労働災害を少しでも減らし、安心して健康に働くことができる職場の実現に向け、国、事業者、労働者等の関係者が目指す目標や重点的に取り組むべき事項を定めた2018年4月~2023年3月までの5年間を計画期間とする「第13次労働災害防止計画」を2018年2月28日に策定し、3月19日に公示しました。
詳細
⇒  http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000181704.html

「健康増進法の一部を改正する法律案概要 ~受動喫煙対策~

詳細http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html

2018年4月から第13次労働災害防止計画がはじまります

「医師の働き方改革に関する検討会」が、このたび、「中間的な論点整理」及び「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を取りまとめました。

詳細
 ★第13次労働災害防止計画(2018年~2022年)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=241959
★第13次労働災害防止計画について
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=241961

平成30年度「全国安全週間」を7月に実施します

【平成30年度のスローガン】
新たな視点でみつめる職場 創意と工夫で安全管理
惜しまぬ努力で築くゼロ災

詳細http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=241967

治療と仕事の両立支援に関するガイドラインの新たな参考資料が公表されました

「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」では、これまで、参考資料として、「がんに関する留意事項」、「脳卒中に関する留意事項」、「肝疾患に関する留意事項」が示されていましたが、今回、「企業・医療機関連携マニュアル」と「難病に関する留意事項」が追加公表されました。

詳細
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=242145

◆◆◆鹿児島労働局情報◆◆◆
平成29年・30年の労働災害発生状況(H30.3.12速報)

  【平成29年の労働災害発生状況】
・死亡者数は18人で、前年比同数。
・休業4日以上の死傷者数は1,901人で、前年比7人(0.4%)増。

詳細 http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0115/5934/H29saigai_2018-0312-4.pdf

  【平成30年(2月末)の労働災害発生状況】
・死亡者数は0人で、前年比同数。
・休業4日以上の死傷者数は177人で、前年同期比22人(11.1%)減。

詳細http://kagoshima-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0115/5933/H30saigai_2018-0312-4.pdf

◆◆◆労働者健康安全機構情報◆◆◆
労災疾病等医学研究者普及サイトのご案内

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。今回のテーマは、次のとおりです。

1「メタボローム」
メタボロームとは、生体内の細胞や組織においてたんぱく質等が作り出す代謝物質の総称(アミノ酸、脂肪酸、糖等)をいいます。この研究は、「メタボローム解析」に焦点をあて、過労死の要因の一つになっている「心臓疾患」発症を予測する因子を本解析により見いだすことができるか、またストレスによる大量飲酒によって惹き起こされる膵炎の予測因子を見いだせるかについて研究を行っています。
詳細http://www.research.johas.go.jp/metabolome/index.html

2「女性介護離職者の軽減をめざして取り組んだ、働く女性における介護ストレスに関する研究報告」
介護には肉体的精神的ストレスが伴い、実際どのような因子が介護担当者のストレスになっているかの分析は未だ多くなされていませんでした。今回の研究により、介護対象者の認知機能障害、認知機能障害に伴う問題行動、排泄介助などの負担が介護者の抑うつ度を強くする因子であることが示されました
詳細http://www.research.johas.go.jp/22_jyosei/thema05.html

所長よりひと言 pen

   年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず、とは古い言葉ですが、この時期には一番相応しく感じます。とはいっても、今年はソメイヨシノが早々と開花し、咲く花ではなく散る花が新人を迎える風情となりました。見方を変えれば、盛りを過ぎたものが座を新しい芽に譲り新たな成長が促される戊戌という年らしい現象とも言えそうです。
 
  国会や中央官庁は何かと騒がしく、産業保健政策も足踏みしそうな気配ですが、労働現場は休みなく動いています。地球的規模で俯瞰すると、地下資源をエネルギー源とする物質的付加価値生産には限界が見えています。多くの国が自国権益優先主義に走るのは、20世紀的経済発展を目指す以上は当然です。ここらで、今までのような経済成長路線を根本から見直さなければ地球人類に未来はないように思われます。
   少なくない知識人が色んな分野から今日の世界の在り様に警鐘を鳴らしていますが、耳を傾ける為政者は殆どいないように感じます。ましてや現場で経営に苦労している企業人には目先の問題に追われているのが現状でしょう。
   こうした中で世界に先駆けて少子高齢化とそれに伴う労働力減少社会が進行している我が国では、労働に伴うストレスが増大の一途を辿っています。長寿国とは言いながら健康寿命と平均寿命とには未だに大きな差があります。労働力不足を補うためにも健康寿命を延伸し高齢者にも相応の労働力を提供して貰うことがこれからは必須ですから、労働によって心身の健康が損なわれることが無いような労働環境を構築することが、これからの最重要な課題です。
   今般喧伝されている「働き方改革」の根本は、働く人が働くことで健康を害するのではなくむしろ働くことがより健康になるような状況・社会構造を創出することと考えます。そのためには、事業主の姿勢も重要ですが、働く現場から意義や価値を見いだせない作業を無くすことです。生産性のない「働き甲斐」のない作業ほど大きなストレスです。この国の「遺伝子」には働くこと=はた(傍)をらく(楽)にすることというような意識があり働くことそのものが喜び、と感じる心性があります(尤も、近年薄らいでいるようにも感じられて心配ですが)。
   1事業場単位で非生産的な作業を放逐することは無理ですから、少しでもそのような作業を減らす方向に社会全体で向かっていく必要を強く感じています。
   平成時代の最後の年度の開始に当たり、今年が戊戌年であることに後世から見て大きな意義づけができる年度にしたいと強く願っています。