メールレター第185号
鹿児島産業保健総合支援センター メールレター第185号 2018/08/01
発行:鹿児島産業保健総合支援センター 所長 草野 健
相談員からのメッセージ
「働き方改革法案」について
産業保健相談員 前田 雅人
(担当分野:産業医学)
西日本豪雨災害,その後のスーパー猛暑の中,「働き方改革法案」,「カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法」,「参院定数6増改正案」など がつぎつぎと国会にて成立した。この「働き方改革」については,主なポイントを上げると①初めて時間外労働の上限について,月45時間,年360時間を原則とし,臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間,単月100時間未満,複数月平均80時間を限度に設定されたことにある。週休2日制の労働者であれば,月45時間の時間外労働の場合,睡眠時間はおおむね1日7.5時間は確保されており,疲労が残らないと考えられているが,月100時間の時間外労働であれば1日5時間の睡眠時間が取れない状態,また月80時間であれば1日6時間の睡眠時間が取れない状態と考えられ,疲労が蓄積し,過労死をまねくラインと捉えられている。しかし自動車運転業務,建設事業,医師等は5年間の猶予期間を設けた上で規制の適用外となった。この制度の運用により,労働者の心身の健康が保持され,労働災害が減少するのか,注目したい。その他にも②終業から次の始業までの休息時間を確保する「勤務間インターバル」の導入が促進され,また③長時間労働者に対する医師による面接指導の充実が盛り込まれた。
さらに,職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が,高度の専門的知識を必要とする業務に従事する場合に労働時間,休日等の規定を適用除外とする高度プロフェッショナル制度も創設された。この制度の運用により,生産性の向上,生活自由度が高まることが見込まれる一方で,却って労働時間が延びることも考えられ,現時点でのこの制度の評価は難しい。
おすすめ教材(無料貸出し等)
当センターでは、産業保健に関する図書、ビデオ・DVDを無料にて閲覧・貸出ができます。
ぜひご利用ください。
★★★おすすめ図書 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
社員の健康管理と使用者責任
(分類:2-173,労働調査会, 2004年発行、219頁)
【概要】
第一部:労働者の健康管理に関するトラブルと判例動向
第二部:雇入時・定期の健康診断に関する法律問題
第三部:労働者の私傷病・メンタルヘルスと労務管理
第四部:過労死・精神疾患(過労自殺)の労災認定と企業補償
第五部:まとめにかえて -紛争の回避と拡大防止のために-
★★★おすすめビデオ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★)
第一巻 あなたの一日を再点検 ―食事・アルコール・たばこ・歯周病―
(分類:4-201,株式会社アスパ クリエイト 20分)
【内容】
若い女性、中年期の男性、高齢期の男性。3人それぞれの1日の生活習慣を食事を中心に再点検します。
1)食事―1日に必要な栄養の目安/カロリーコントロール/メニュー
のひと工夫で改善/BMIによる体重管理/ダイエットと健康
2)アルコールとの上手なつきあい方
3)たばこの害
4)歯周病の予防法など
研修セミナーのご案内
すべてのセミナーにどなたでもご参加いただけます。
(定員は各セミナー30名、場所は光健ボイスビルです)
8月
☆ 8月2日(木) 14:00~16:00【赤崎先生】
「心の癖を知る-性格は変えられるものか?-」
日医産業医認定単位:生涯(実地)2単位
● 8月 8日(水) 14:00~16:00【徳留先生】
「結核の現状と施設内(院内)感染」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位
☆ 8月18日(土) 14:00~16:00【東先生】
「産業医として知っておくべき化学物質のリスクアセスメント
(その2)~実測値を用いたリスクアセスメント~」
※会場:鹿児島市医師会館(鹿児島市加治屋町3-10)
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位
☆ 8月22日(水) 14:00~16:00【長友先生】
「うつ病への対応③ -性別・年代別の特徴-」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位
● 8月24日(金) 14:00~16:00【德永先生】
「快適睡眠で健康長寿を実践する」/THP対象研修会
日医産業医認定単位:生涯(実地)2単位
● 8月27日(月) 14:00~16:00【冨宿先生】
「職業性胆管がんとは何だったのか」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位
9月
☆ 9月 1日(土) 14:00~16:00【前田先生】
「職場における救命救急処置~AEDの使用について~」
※会場:鹿児島商工会議所(アイム)ビル(鹿児島市東千石町1-38)
日医産業医認定単位:生涯(実地)2単位
☆ 9月13日(木) 14:00~16:00 【黒沢先生】
「化学物質リスクアセスメントと作業環境改善の方法」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位
☆ 9月14日(金) 14:00~16:00【久留先生】
「メンタルヘルス・カウンセリングⅢ
「対人援助職者」の心理支援(感情管理、感情労働)
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位
● 9月18日(火) 18:00~20:00【門松先生】
「産業歯科医の役割」
日医産業医認定単位:生涯(専門)2単位
● 9月21日(金) 14:00~16:00 【德永先生】
「脳卒中の治療と仕事の両立支援」/THP対象
日医産業医認定単位:生涯(実地)2単位
☆ 9月21日(金) 16:10~17:10【当センター副所長】
「労働衛生関係法令」/THP対象
日医産業医認定単位:生涯(更新)1単位
☆…産業医対象で、産業医認定単位があります。
● …産業保健スタッフですが、産業医認定単位はあります。
《管理監督者向け》「治療と職業生活の両立支援」・「心の健康づくり」合同研修会
※産業医学研修会ではありません。
【対象者】管理監督者(衛生管理者・衛生推進者、産業保健スタッフ等)
【日 程】
■平成30年8月20日(月)鹿児島市会場(ホテルウェルビューかごしま)
13:30~16:30 ※13:00受付開始
■平成30年8月24日(金)大隅地区会場(鹿屋商工会議所)
13:30~16:30 ※13:00受付開始
■平成30年8月30日(木)南薩地区会場(南さつま市民センター)
13:30~16:30 ※13:00受付開始
詳細・お申込み
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/H30-goudoukensyukai.pdf
※各研修会には定員があります。申し込みがないまま当日来られた場合、会場や資料の関係で受講できない場合がありますので必ず申し込みをしてください。受講できなくなった場合は必ずご連絡ください。
お知らせ
◆◆鹿児島産業保健総合支援センター情報◆◆
産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。
当センターでは、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase
メンタルヘルス対策支援のご案内
従業員の心の健康対策への取組方法がわからないという事業場の皆さまへ私たちは、メンタルヘルス対策に取り組もうとする事業場を支援します。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/mental/cat426/work.html
地域産業保健センターのご案内
労働者数50人未満の小規模事業場では、労働者に対する産業保健サービスを充実させることを目的に、地域産業保健センターが設けられています。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/cat638/post_15.htm
治療と職業生活の両立支援事業
当センターでは、両立支援に関する各種支援を無料で提供しています。ぜひご活用ください。
▼ 両立支援事業
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/cat765/cat768/post_18.html
▼ 鹿児島産業保健総合支援センター両立支援相談窓口
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/ryouritusien-sanpo.pdf
8月~10月の両立支援出張相談窓口
当センターでは、センター内の相談窓口のほかに、鹿児島医療センターと鹿児島大学病院に、治療と職業生活のための両立支援出張相談窓口を開設しています。設置状況は次のとおりです。
(1)国立病院機構 鹿児島医療センター がん相談支援センター内
相談窓口開設日時・・毎月第1・3火曜日 10時~13時
8月の相談日 → 7日(火)・21日(火)
9月の相談日 → 4日(火)・18日(火)
10月の相談日 → 2日(火)・16日(火)
(2)鹿児島大学病院 地域医療連携センター内
相談窓口開設日時・・毎月第3木曜日 10時~12時(事前予約が必要です)
8月の相談日 → 16日(木)
9月の相談日 → 20日(木)
10月の相談日 → 18日(木)
鹿児島産業保健総合支援センターの産業保健専門職(保健師)および両立支援促進員がそれぞれの医療機関のソーシャルワーカーなどと連携してご相談に応じます。相談は無料です。両立支援に関するお悩み等にについてご相談下さい。
【詳細】
▼両立支援出張相談窓口
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/madoguchiitiran.pdf
▼鹿児島医療センター内(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/ryouritusien-iryousennta.pdf
▼鹿児島大学病院地域医療連携センター内(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/ryouritusien-kadaibyoin.pdf
▼鹿児島産業保健相談支援センター 相談窓口(リーフレット)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/ryouritusien-sanpo.pdf
◆◆◆厚生労働省情報◆◆◆
「治療と仕事の両立支援ナビ」ポータルサイト(再掲)
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/
事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン
「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)の参考資料として、ガイドライン掲載の様式例の作成ポイントや具体的事例を通じた様式例の記載方法について「企業・医療機関連携マニュアル」及び難病の治療の特色を踏まえた「難病に関する留意事項」が新たに作成されました。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000204436.pdf
平成29年「過労死等の労災補償状況」
厚生労働省では、このほど、平成29年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)を取りまとめ、公表しました。
【詳細】
▼脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/H29_no1.pdf
▼精神障害に関する事案の労災補償状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/H29_no2.pdf
▼裁量労働制対象者に関する労災補償状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/H29_no3.pdf
第8回医師の働き方改革に関する検討会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00164.html
平成30年度 「全国労働衛生週間」を10月に実施します
厚生労働省は、10月1日(月)から7日(日)まで、平成30年度「全国労働衛生週間」を実施します。
今年で69回目となる全国労働衛生週間は、昭和25年から毎年実施しており、労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での自主的な活動を促して労働者の健康を確保することなどを目的としています。
【週 間】10月1日から7日まで
【準備期間】9月1日から30日まで
【今年のスローガン】こころとからだの健康づくり みんなで進める働き方改革
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000170527_00001.html
「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更が閣議決定
【詳細】
▼厚生労働省発表
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000101654_00003.html
▼「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/30_TAIKOU_HOUDOU_BETTEN1.pdf
▼「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(本文)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/30_TAIKOU_HOUDOU_BETTEN2.pdf
▼「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更について
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/30_TAIKOU_HOUDOU_BETTEN3.pdf
看護師・精神保健福祉士の方がストレスチェックの実施者になるための研修
ストレスチェックの実施者は、医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師若しくは精神保健福祉士です。看護師・精神保健福祉士に対する研修(実施者になるために必要な研修※)に関する情報は次のとおりです。
※3年以上労働者の健康管理等の業務に従事した経験を有する看護師又は精神保健福祉士は、研修を受けなくても実施者となることができます。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150601-1.pdf
平成30年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172722_00001.html
障害や傷病治療と仕事の両立支援制度導入事業主への助成金が拡充されました
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/koyouanteijyoseikin.pdf
◆◆◆労働者健康安全機構情報◆◆◆
「島耕作×労働者健康安全機構の特別マンガ」について
労働者健康安全機構が、産業保健総合支援センター、労災病院の治療就労両立支援センター及び両立支援部における「治療と仕事の両立支援の取組」を紹介する「島耕作×労働者健康安全機構の特別マンガ」を作成し、機構のホームページ及び「治療と仕事の両立支援ポータルサイト」にバナーを配置しました。
【詳細】
▼治療と仕事の両立支援ポータルサイト
https://www.ryoritsushien.johas.go.jp/
所長よりひと言
未曽有といっていい程の広範囲、大規模な水害に続いて炎熱地獄とも言えそうな猛暑が列島を襲っています。「熱中症」の文字が連日新聞の1面に踊っています。このような「異常」気象は日本だけでなく世界中至るところで起こっているようです。温暖化の影響もあるとのことですが、地球自体の数十億年の歴史からみれば誤差範囲の変動との説もあるようです。また、ある学者によると太陽黒点が異常活発化しており地球表面への紫外線量が増加しているとのこと。これらの現象に対し一部宗教家等の間では人間の「驕り」に対する地球の拒否反応と捉える向きもあるようです。
翻って人間社会を概観すれば、大国エゴが露骨に剥き出され覇権争いが激化した第一次世界大戦後の状況と通じるような世界情勢です。単純なアナロジーは禁物ですが、政治面でも経済面でも調和が大きく乱れつつあるようです。
余りにも古臭い表現ですが、天界、地界、人界いずれも「乱」の時期に入っているという警句もあながち無視できないような気がします。こうした中、物質的には成長の限界に達したかに見える我が国は、世界に先駆けて少子高齢社会に突入しています。自国資源に乏しい日本は世界各国からの資源輸入に頼って奇跡とも言われる経済成長を遂げてきましたが、それも地球資源が有限であることから限界点に到達したようです。それでも経済成長を持続しようとするなら物的資源以外の何かを求めるのは必然の成り行きです。現在の経済は金融資本主義を基調とするようになっていますので、収奪の対象は労働者の「時間」となり易いといえるでしょう。
働く人々にとって、少なくとも日本の大多数の国民からみれば、今必要なものは、「モノ」ではなく「時間」ではないでしょうか。自主的に各人なりに有意義に使える時間こそが今後増加すべき対象と考えます。意義を見いだせない強制的に費消させられる時間はその身体的負担如何に関わらずストレス以外の何物でもありません。
今回、働き方改革の各種法律が改定成立しましたが、その一つひとつは兎も角、全体として改革の方向性に大きな疑問を持ちます。今なすべきことは、時間当たりの生産性を向上させ一人ひとりの自主的自由時間を増大させることと思いますが、あらゆる面での管理のための作業が増加するなど逆行しているように思えてなりません。
「経済戦争」という武力を伴わない戦争の時代に入っているという識者もいるようですが、それらの弁説に乗じてか「尽忠報国」や「滅私奉公」なぞといった古色蒼然たる言辞も仄聞します。明治維新から73年経って日本は第二次大戦に突入しました。敗戦から今年も73年目を迎えます。無謀な破局へと向かう動向の恐れを感じますが、それが杞憂であること祈ります。