お知らせ

メールレター 第218号

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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第218号
               2021/5/7

   発行:鹿児島産業保健総合支援センター
              所長 草野 健

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相談員からのメッセージ

「トラウマ(心的外傷)の視点から見たメンタルヘルスのありようコロナ感染症などへの心理的対応から 」

産業保健相談員 久留 一郎
(鹿児島大学 名誉教授)

        (担当分野:カウンセリング)

「トラウマと体験のありよう」
人間は、凄惨な危機的出来事を回避し、強烈な体験(体験強度)から常に距離(体験距離)をとりながら生きている。

「その距離を安全に保つこと」は、自我の重要な機能の一つといえる。しかし、強烈で破壊的な出来事に曝され、体験距離がとれず、しかも自己防衛できない状況で体験した場合、自我が圧倒されるような状況に陥り、誰もが外傷性(トラウマ性)症状を被ることになる。

「コロナ感染症者やその家族」に対するSNSなどによる書き込み等、本人の力では防衛できない一方的嫌がらせなどはトラウマ反応をうみだしやすい。同様な状況として、職場におけるパワハラ、セクハラ、学校におけるいじめ、家庭における虐待やDVなども、自分の生命(精神や身体)の安心安全が脅威に曝されるとトラウマ性症状を被ることになる。

「トラウマの性質、特性」
トラウマには様々な性質、特性がみられる。その一つにフラッシュバック(よみがえり現象・Flash-back)がある。過去の忌まわしい出来事や体験が現実のように蘇ってくる現象である。その「出来事」について、一方的に(必要以上に)聞き出すことはフラッシュバックを煽ることになり、症状の重篤化(悪化)の危険性があることに気づいておくべきである。メンタルヘルス・カウンセリングにおいて慎重に配慮すべき点である。

目にみえない「モノ」を「見る」だけでなく、みえない「コト」を「視る、診る、看る」人間的感性が求められている。

<引用文献>
●鹿児島県医師会報 平成25年10月号 産業保健の話題(第146回)トラウマ(心的外傷)の視点から見たメンタルヘルスのありよう 2015(久留一郎)
●産業保健研修会「新型コロナ感染症(COVID-19)への対応と心理支援をめぐって」2020(久留一郎)

研修セミナーのご案内

下記、セミナーはどなたでも参加できます。

参加される皆様は、新型コロナウイルスの感染予防対策(以下URL)にご協力ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2020/05/kensyu-kai.pdf

なお、新型コロナウイルスの感染拡大等によっては、中止または延期させていただくことも考えられますが、その際はご理解をお願い申し上げます。

土曜日開催の研修会について
令和3年4月から土曜日の研修会場は、第12川北ビルBOIS鹿児島と鹿児島県医師会館の2か所になります。
日程により会場が異なりますので、事前にご確認の上、ご参加くださいますようお願い申し上げます。
また、当日13時以降は、センターや各会場へ連絡されても取次ぎができませんのでご注意ください。なお、各会場へのご連絡はお控えください。

 

≪ 5月 ≫【定員】14名【会場】光健ボイスビル2F ※5/22を除く
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☆5月6日(木)14:00~16:00
「新型コロナウイルス感染症流行下におけるメンタルヘルス問題とその対応」赤崎先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆5月7日(金)14:00~16:00 ※満席
「健康診断とその事後措置」小田原先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位

☆5月14日(金)14:00~16:00 ※満席
「感染症予防対策としての職場環境づくり」德永先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位

☆5月18日(火)14:00~16:00
「職場の結核対策」徳留先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆5月20日(木)14:00~16:00
「産業医・衛生管理者による職場巡視のポイント」黒沢先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆5月22日(土)14:00~16:00  ※定員25名
「職場での熱中症予防対策」冨宿先生
 ※会場:第12川北ビルBOIS鹿児島8F(鹿児島市上之園町24-2)
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆5月28日(金)14:00~16:00 ※満席
「メンタルヘルス・カウンセリングのいろいろ-Ⅰ
~見えない世界を(見、観、視、診、看)るカウンセリング~」久留先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

≪ 6月 ≫【定員】14名 【会場】光健ボイスビル2F ※6/12を除く
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☆6月2日(水)14:00~16:00
「眼に関する話題」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆6月12日(土)14:00~16:00 ※定員25名
「職場における受動喫煙対策
~健康増進法改正の概要と受動喫煙防止のためのガイドライン~」東先生
※会場:第12川北ビルBOIS鹿児島8F(鹿児島市上之園町24-2)
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆6月22日(火)18:00~20:00
「「産業歯科医の役割」-歯科医師による特殊健康診断-」門松先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆6月23日(水)14:00~16:00
「「働く人」におけるストレス関連障害」長友先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆6月28日(月)18:00~20:00
「職域における身体活動:具体的な工夫を考える」堀内先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

☆6月30日(水)14:00~16:00
「古くて新しい色覚問題」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

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◇…産業医対象
●…産業保健スタッフ対象
☆…産業保健スタッフ・産業医対象
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▼詳細
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/h2335

お知らせ

<鹿児島産業保健総合支援センター>

産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

当センターでは、メンタルヘルス対策や治療と仕事の両立支援対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。(オンラインによる相談も可能です。)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

両立支援(出張)相談窓口のご案内

両立支援(出張)相談窓口の設置状況は次のとおりです。
なお、医療機関における両立支援(出張)相談窓口では、新型コロナウイルス感染症の状況によっては、中止の可能性があります。

▼両立支援(出張)相談窓口一覧
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2020/02/ryouritsushien-madoguchi.pdf

鹿児島産業保健総合支援センターの産業保健専門職(保健師)および両立支援促進員がご相談に応じます。
相談は無料です。両立支援に関するお悩み等についてご相談ください。(オンラインによる相談も可能です。)

事業場内での両立支援教育、体制の整備、規定等の整備、勤務・休暇制度の整備、両立支援の進め方についても、両立支援促進員が事業場を訪問してアドバイスを行いますので、ご利用ください。

▼治療と仕事の両立支援申込み
ホームページから
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat767
FAXから
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/ryoritusien-mousikomi-ura.pdf

メンタルヘルス対策支援

鹿児島産業保健総合支援センターでは、メンタルヘルス対策に取り組もうとする事業場を支援しています。事業場にメンタルヘルス対策促進員が訪問して、「心の健康づくり計画」の策定、体制の整備、職場環境の把握と改善、管理監督者向けの研修、若年労働者(含む全社員)向けの研修などの支援を行っています。

https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat426

<労働者健康安全機構情報>

ポータルサイト「さんぽセンターWebひろば」を開設しました!(再掲)

https://www.johas.go.jp/Portals/0/sanpocenter/webhiroba.html

労災疾病等医学研究普及サイトのご案内

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。

○労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html

「会議を行うにあたって新型コロナウイルス感染症感染防止のためのポイント」の動画教材を公開しています!(再掲)

https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/johoteikyo/tabid/1923/Default.aspx

 

<厚生労働省情報>

令和3年度「全国安全週間」を7月に実施!(再掲)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17450.html

令和3年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します!

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17076.html

○ 令和3年「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」実施要綱
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000642212.pdf
○ リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000747102.pdf

事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(令和3年3月改訂版)

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000760961.pdf

企業医療機関連携マニュアル 令和3年3月改訂版

事例一覧が加わり、事例も追加されました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000760983.pdf

令和3年度における建設業の安全衛生対策の推進について

https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000764713.pdf

令和3年度における林業の安全対策の推進について

https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000764967.pdf

~はしごや脚立からの墜落・転落災害を発生させないために~

「はしご」または「脚立」の作業前点検のチェックリストとして活用できます。
○「はしごを使う前に/脚立を使う前に」(令和3年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/000746780.pdf

○「はしごや脚立からの墜落・転落災害をなくしましょう!」(平成29年3月)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/170322-1.pdf

情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210401K0070.pdf

「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務することについて」の一部改正について

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210401K0080.pdf

<中央労働災害防止協会情報>

令和3年度「熱中症予防対策シンポジウム」の開催について

https://www.jisha.or.jp/seminar/kyoiku/y7150_necchusho_sympo.html

<鹿児島労働局情報>

令和2年・令和3年の労働災害発生状況

令和2年(令和3年3月9日現在の速報値)

○令和2年(確定)
□ 死亡者数は14人で、前年比で1人(6.7%)減。
□ 休業4日以上の死傷者数は2,100人で、前年比で90人(4.5%)増。
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/r2saigai_2021-0412-3.pdf

○令和3年(3月末速報)
□ 死亡者数は5人で、前年同期比で2人(33.3%)増。
□ 休業4日以上の死傷者数は367人で、前年同期比で13人(3.7%)増。
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/r3saigai_2021-0412-3.pdf

 

<鹿児島働き方改革推進支援センター>

令和3年度の鹿児島働き方改革推進支援センターについて

令和3年度も鹿児島県社会保険労務士会の事務局内に鹿児島働き方改革推進支援センターが開所されました。
新年度も既に4月1日より、ご相談(電話・来所)の受付を開始しています。

https://hatarakikata.sr-kagoshima.jp/

編集後記

COVID-19のパンデミックも地球温暖化もその真犯人は新自由主義・市場原理主義による資本主義経済だ、という言説がある。確かに営利企業の利潤追求に何ら規制を加えないということは、資源と市場が無限大に存在するなら利潤即ち富の増大も無限であり、「経済」は成長を続けることになる。しかし、地球資源は無限ではないことが明確になり市場開拓も限界に近づいている今日では、無制限の利潤増大追求は自然破壊と富の偏在即ち貧富格差拡大が強化されるのみであり、確かにその意味では今回のパンデミックは自然災害ではなく人災といえる。

我が国は、欧米に比べれば新型コロナウィルスの感染者割合もCOVID-19による死亡者割合も極めて低いが、東アジアやニュージーランド等に比較するとはるかに多い。感染力の強い変異株が増加しつつあり、ワクチン接種も計画通りには進んでいない中で病床逼迫が現実となり医療崩壊の危機も高まっている。私には弥縫策にしか見えない蔓延防止策だの緊急事態宣言の再々発令だのが話題になっているが、一医師の立場からは「医療崩壊」の真の要因は近年の医療政策にあると考える。国民一人当たり医療費は先進国の中では驚異的に低いにも関わらず総医療費抑制対策を一貫して実施してきた結果、急性期病棟や感染症対応施設が大幅に縮小され保健所機能も大きく低減してきた。今回のようなパンデミックへの適応能力を、経済成長という面からは生産性のない経費とみなして削減した結果が現在の医療崩壊危機の真因といえる。臨床最前線から引いて数年も経つ身としては、只管最前線で奮闘する医療職を応援するのみであることに忸怩たる思いを禁じ得ない。

資本は利潤増大による自己増殖,即ち資本拡大が至上命題である。何ら規制のない状態では、利潤追求だけが目的であれば環境破壊と富の集中が最も効率的である。持続可能な経済成長とかが話題となるが、終焉が見えてきた資本主義経済に代わるものは未だ不明確である。20世紀初頭に登場したマルクス主義的社会主義経済は、旧ソ連で失敗し中国も建前はともかく経済自体は資本主義へと移行し、世界のどこにも資本主義経済システム以外の経済システムは存在せず、グローバリズムという名の野放図な自由競争資本主義経済に覆われている。

働き方改革とは、貨幣換算できる付加価値増大の効率化やましてや単純な労働時間短縮でもなく、働く者が意義・価値を見出せない業務を極力排除し働くこと自体が「喜び」であり価値であるような社会構造の追求にあると考える。

今こそ、このコロナ禍を奇禍として、野放図な利潤追求には「公共の福祉(公益ではなく)に反しない限り」の強い規制を設け(まさに現憲法の精神)、富の再配分を強化することが必要である。そのような経済政策こそがまさしく「経世済民」であり、その方向での施策こそが「働き方改革」そのものと強く思われる。我々産業保健に関わり医療に関与する者は特に、そのような視点を中心に据えて日々の活動を為すべきであろう。