お知らせ

メールレター 第248号

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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第248号(2023.11)

   発行:鹿児島産業保健総合支援センター
              所長 草野 健
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相談員からのメッセージ

部下のミスですぐに発達障害を疑ってしまう上司

産業保健相談員 山中 隆夫
(担当分野:メンタルヘルス)

Aさんは24歳の男性新入社員。会社から「発達障害が疑われるので専門施設で診てもらうように」との指示を受けて来院した。若者なのに相貌は疲れきっており、表情は暗く、硬かった。

まずは発達障害診断に必須とされる心理テスト(WAIS)を行ってみた。結果はワーキングメモリー(以下WM)がやや低め以外には各尺度間の有意な凸凹の差異はなく、正常域と診断された。むしろ知能の高さ(IQ 135)の方が目立っていた。

はてさて?と思いながらAさんの重い口を開いて聞き出せた就労の実態はひどいものであった。数カ月前に些細なミスをしたことで直属の上司(係長)に事あるごとに叱責され、怒鳴られるようになった。1時間以上にわたる説教のなか、答えると「義を言うな」、答えないと「無視するのか」と執拗に責められた。このようにされれば、されるほど、パニック状態となり、仕事上の指示もすぐに忘れてしまうので、ミスは重なり、仕事にならず、結果としては怒られることばかりの毎日となっていた。

このようなAさんのケースは稀ならず職場で起こっている事柄でもある。この際の要因になりやすいのがWMの低下(指示忘れ)で、あらゆるタイプの発達障害に共通する生活・学習の阻害因子になっていると云われている。

ところが、である。このWMの低下は発達障害の人々に限らず、普通の人でも特殊の状況下では起こり得るのだ。実際にこれを明らかにしている最近の研究が幾つもある。例えば「ワーキングメモリーと発達障害(トレイシー・アロウエイ著、北大路書房)」の中の「なぜWMが不安と関係するのか?」の項を要約すると、下記の通りとなる。

  • 高い不安を持つ成人はWMが低く、日常の活動に様々な影響を受ける。
  • 不安はWMにおける言語的な情報(例えば指示)を処理する複数の課題を効率的に処理すること、注意を適切に切り替えることを妨げる。
  • 不安はWMの2つの部分に影響を与える。情報を処理することと、その情報を貯蔵することであり、得られた情報を長期記憶に移行させることを妨害する(つまり、周囲に何度言われても、本人は覚えていないことになる)。

まさにAさんの事例はこれにぴったり当てはまる。上司の叱責の積み重ねが彼を不安の極地に追い込み、パニック状態(かごんま弁では“ちわんちわん”、大隅・鹿屋弁では“おろそわがねー”、四字熟語的にいえば“周章狼狽して、その為す術を知らず”)となって、WMの低下を招き、結果的に疲労困憊(こんぱい)状態に陥(おちい)らせていたのだ。Aさんは発達障害などではなく、過度の不安・緊張状態になっていたからに過ぎず、問題はパワハラ的な上司にあったことになる。

このことはまた、発達障害をみだりに疑う前に、「就労スタッフが“天井なき牢獄”に追い込まれていないか」を考慮する必要性を教えてくれている。

研修セミナーのご案内 (11月~1月開催分 受付中!)

【定 員】20名
【会 場】光健ボイスビル2F
※11/18(土)、12/9(土)、1/20(土)は県医師会館3F 中ホール

┏―[ 詳細・申込はこちらから ]―――――――――――┓
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/h2335
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(再掲)化学物質による健康障害防止セミナー
“新たな化学物質管理に向けて、「最初の一歩」を確認しませんか” のご案内
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※今回のセミナーは、日医認定産業医研修の単位取得はできません。

日 時 令和5年11月30日(木)14時00分~16時00分
会 場 光健ボイスビル 2階(鹿児島市上之園町25-36)
対象者 事業者・安全衛生担当者など
内 容 第1部「健康で安全に働くために ~とある元衛生管理者の一コマ~」
講師:鹿児島産業保健総合支援センター 労働衛生専門職

第2部 「改正法令に基づく化学物質管理セミナー」
講師:鹿児島産業保健総合支援センター 産業保健相談員

定 員 20名(先着順)
申込方法 メールフォーム https://ssl.formman.com/t/qLRH/
※令和5年11月22日(水)までにお申し込みください。

お知らせ

<鹿児島産業保健総合支援センター>

産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

治療と仕事の両立支援対策やメンタルヘルス対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。(オンラインによる相談も可能です。)電話やFAX、ホームページからお気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

治療と仕事の両立支援について

治療と仕事の両立に関するお悩み等について、事業場関係者や産業保健スタッフ、がんなど反復・継続して治療が必要な患者(労働者)やその家族からの相談に、鹿児島産業保健総合支援センターの両立支援促進員又は産業保健専門職(保健師)が相談に応じます。(オンラインによる相談も可能です。)
両立支援に関する相談、各種支援は無料です。

▼治療と仕事の両立支援(支援内容、相談窓口、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat765

医療機関の両立支援(出張)相談窓口につきましては、、事前予約の状況等により、窓口業務を中止する可能性がありますので、当センターのホームページで事前に確認いただきますようお願いいたします。

メンタルヘルス対策支援について

当センターのメンタルヘルス対策促進員(産業カウンセラーや社会保険労務士など)が事業場に訪問し、職場のメンタルヘルス対策に関する取り組みを無料で支援します。

また、事業場訪問以外のご相談(対面・電話・メール・オンライン)にも対応いたします。オンラインによる研修も対応可能です。

▼メンタルへルス対策支援(支援内容、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/mental

地域産業保健センター(地域窓口)について

各地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場の事業主や労働者を対象に、健康診断結果の意見聴取、健康相談、長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導、保健指導等の産業保健サービスを無料で行っています。

▼地域産業保健センターについて
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat638

<労働者健康安全機構情報>

令和5年度「両立支援コーディネーター基礎研修」の研修日程

募集最後の開催日程及び募集期間は以下のとおりです。
応募多数の際は先着順ではなく抽選を行いますので、受講を希望される回の募集期間内にご応募ください。
https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/2126/Default.aspx

労災疾病等医学研究普及サイトのご案内

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。

▼労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html
▼「生活習慣病」について
https://www.research.johas.go.jp/seikatsu2018/index.html
▼「メンタルヘルス」について
https://www.research.johas.go.jp/mental2018/index.html
▼「アスベスト」について
https://www.research.johas.go.jp/asbesto2018/
▼「治療と仕事の両立支援コーディネーターマニュアル」について
当機構では、治療就労両立支援センター・治療就労両立支援部を中心として、すべての疾病を対象として治療と仕事の両立支援に取り組んでいます。

この「治療と仕事の両立支援コーディネーターマニュアル」は、両立支援コーディネーターが両立支援業務を行う際の基本スキルや知識に加え、両立支援の事例紹介等、実際に両立支援コーディネーターが両立支援を実施するうえで留意すべき事項を記載しております。

マニュアルは、両立支援コーディネーター基礎研修のテキストとして活用しているほか、医療従事者や、企業の人事・労務担当者、産業保健スタッフの方々にも両立支援の基本的な取組方法がご理解いただけるように構成されており、当機構ホームページから無料ダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。
★両立支援コーディネーターマニュアルはこちら
https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/1047/Default.aspx
★両立支援コーディネーターについて知りたい方はこちら
https://www.research.johas.go.jp/ryoritsucoo/

<厚生労働省情報>

11月は「過労死等防止啓発月間」です!(再掲)

厚生労働省では、毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取組を行っています。この月間は、「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、関心と理解を深めるために実施しています。

本年も「過労死等防止対策推進シンポジウム」が全国47都道府県にて実施予定です。

鹿児島会場は、令和5年11月17日(金)の開催予定となっています。シンポジウムの詳細、参加申込等については、下記の専用Webサイトをご参照ください。

https://www.p-unique.co.jp/karoushiboushisympo/page_kagoshima.html
【過労死等防止に関する特設サイト】
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/karoushizero/index.html

「過重労働解消のためのセミナー」開催について(再掲)

【過重労働解消のためのセミナー専用Webサイト】
https://kajyu-kaisyou-zenkiren.com/

 

<鹿児島労働局情報>

鹿児島県内の労働災害発生状況

○令和5年発生分(9月末速報)
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/jirei_toukei/toukei/saigaitoukei_jirei.html

最新の業種別労働災害発生状況
⇒「令和5年における業種別労働災害発生状況」をクリック

< 情報提供 >

高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのご案内

高齢・障害・求職者雇用支援機構においては、精神障害者の雇用管理上のノウハウをまとめた「精神障害者雇用管理ガイドブック」を作成しており、ホームページからダウンロード(※)できますので、御活用ください。

https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai71.html

働く女性の健康支援に関するセミナーのご案内

「働く世代の健康支援を多業種で考えるセミナー」が11月25日(土)に開催されます。
皆様のご参加をお待ちしております。
※今回のセミナーは日医認定産業医の単位取得ができます。なお、当センターの主催ではございませんのでご留意ください。
お申込みは専用の申込フォームよりお願いします。

日 時 令和5年11月25日(土) 18:00~20:20
会 場 鹿児島市医師会館 3階 大会議室(鹿児島市加治屋町3-10)
内 容 18:00~18:45
「働く女性のがんと健診について」
小田原 努 先生 ヘルスサポートセンター鹿児島 所長

18:45~19:30
「女性特有の疾患の治療と学業・仕事・家庭の両立について」
崎濱 ミカ 先生 鹿児島大学医学部 産科婦人科 助教

19:30~20:00
「働く女性の健康支援~性差医療を踏まえ、薬局薬剤師ができること~」
磯脇 圭子 先生 ヘルシーウェル薬局 薬師店 管理薬剤師

定 員 150名
※令和5年11月23日(木)までにお申し込みください。

本セミナーの詳細は、当センターのホームページ(お知らせ)をご確認ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/r5-11-25_seminar

編集後記

猛暑の夏が漸く過ぎたら早くも朝夕には晩秋の気配が漂い出している。加齢とともに歳月の過ぎ去りが早く感じるのは昔からの習いだが、DX化の進展や市場原理に基づく資本主義経済システムの綻びなど社会経済状況の変容は急激で、それらへの対応に難儀さも感じている。

日本の経済状況はデフレ転落リスクを含みながらインフレが止まらない状況で経済大国は「今や昔」。非正規労働者の増加は改善されず経済格差は拡大一方。労働者の健康確保のための「働き方改革」も大企業中心の正規労働者には一定の効果が得られているようだが、非正規労働者はその労働実態把握すらままならない現状にある。

DX普及の必要性が指摘されているが、産業医としての職場巡視では事務作業における捺印の多さが最近になり特に眼につくようになった。捺印者が多いということは最終決裁者だけでなく捺印した者がその責任の一端を負うことを意味するが、多数者が責任を分け合うことは誰も責任を取らないことに通じる。捺印という習慣は一種の文化でもあり一概に否定すべきものではないが、文書作成保管等の作業が必要となり、多くの「無駄」が発生しそれこそ無用のストレス要因ともなる。

DX推進は捺印とそのための文書作成が省力化され、作業の能率化だけでなく職業性ストレス軽減につながる。「働き方改革」の大きな柱の一つはここにあると産業保健現場で強く感じる今日この頃である。