メールレター 第229号
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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第229号
2022/4/7
発行:鹿児島産業保健総合支援センター
所長 草野 健
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相談員からのメッセージ
新年度に発生する中高年層のメンタルヘルス問題
~子供の大学受験と労働者のメンタルヘルス~
産業保健相談員 赤崎 安昭
(鹿児島大学医学部保健学科・大学院保健学研究科 教授)
(担当分野:メンタルヘルス)
最近は,中高一貫の私立学校が増えて,大学受験でも推薦入試など様々な形態が導入されています。少子化,18歳人口の減少という状況ですので,何か理由があるのでしょう。
さて,医療とは全く関係のない仕事をしている私の知人の子供さんは,中高一貫教育の学校から医学部医学科への進学を目指しています。私は,「18歳人口が減っているわけであり,大学はどこでも入学しやすいんじゃないの?」と気楽に考えていましたが,全国の医学部医学科の偏差値を調べ尽くした知人の情報によりますと,医学部医学科のみならず,医療系大学の偏差値は高く,我々が受験した頃より「難関」になっているような気がしました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題などで,「医師不足」,「看護師不足」といった報道の影響もあるのでしょうか。いずれにしても,医療人を目指す人は多いようです。知人のお子さんの夢は叶うのでしょうか。この原稿が掲載される頃には,合否が決定しています。
では,労働者のメンタルヘルスに目を向けてみます。大学を受験する子供さんがいらっしゃる労働者の方々は,COVID-19など受験生の健康管理に注意を払っていることでしょう。受験生本人は,健康管理のみならず,不安,緊張なども相まって,かなりのストレスを感じていることでしょう。特に共働きの労働者にとっては,気が休まらず心身共に疲弊してしまう可能性があります。さらに,受験には受験料,県外の大学を受験する場合は,交通費や宿泊費など経済的な問題ものしかかってきます。知人の情報によりますと,子供さんが2人同時に大学を受験する方もいらっしゃるそうです。県外の大学に進学するとなると,さらに経済的負担が増えます。そのような視点を交えて「大学受験」を検証すると,労働者にとっては「(子供の)大学受験」は,上記のような問題が負荷されメンタルヘルス問題の温床になる可能性があります。
精神医学的には正式な診断名ではありませんが,「5月病」といわれているメンタルヘルス問題があります。これは,新入学生や新入社員のメンタルヘルス問題として注目されていますが,ひょっとすると中高年層の労働者の中には,受験シーズンの期間中は緊張感で乗り切ってきた心身の問題や経済的な問題が契機となってメンタルヘルス問題が発生するかもしれません。新年度に発生する中高年層のメンタルヘルス問題にはこのような「視点」も必要ではないでしょうか。どうか皆様に「春」が来ますように(祈)。
研修セミナーのご案内
下記、セミナーはどなたでも参加できます。
参加される皆様は、新型コロナウイルスの感染予防対策(以下URL)にご協力ください。
⇒ https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2020/05/kensyu-kai.pdf
≪ 4月 ≫【定員】14名【会場】光健ボイスビル2F ※4/23を除く
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☆4月11日(月)14:00~16:00
「仕事と腰痛」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆4月14日(木)14:00~16:00 ※満席
「大人の「発達障害」の特徴と対応」赤崎先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆4月18日(月)14:00~16:00
「働く方々の健康を守るために産業医からのアドバイス
(新型コロナ感染症対策を含め)」桶谷先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆4月22日(金)14:00~16:00
「時間栄養学を利用して生活習慣病を予防する」德永先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位
☆4月23日(土)14:00~16:00 ※定員25名
「今も起こっている職業がん」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
※会場:第12川北ビルBOIS鹿児島8F(鹿児島市上之園町24-2)
☆4月25日(月)18:00~20:00
「化学発がん「アスベスト、有機溶剤、タバコ」:事例から考える予防策」堀内先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆4月27日(水)14:00~16:00
「うつ病の「働く人」の治療と職場復帰支援」長友先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
≪ 5月 ≫【定員】14名【会場】光健ボイスビル2F ※5/14を除く
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☆5月13日(金)14:00~16:00
「健康診断とその事後措置」小田原先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位
☆5月14日(土)14:00~16:00
「病気を抱えながら働く労働者のためにできること」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
※会場:第12川北ビルBOIS鹿児島8F(鹿児島市上之園町24-2)
☆5月17日(火)14:00~16:00
「職場・施設の結核対策」徳留先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆5月19日(木)14:00~16:00
「産業医・衛生管理者による職場巡視」黒沢先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位
☆5月27日(金)14:00~16:00
「発達障害(ASD)のメンタルヘルス・カウンセリングーⅠ
~空気の読めない人間(自閉スペクトラム症)との関係をめぐって~」久留先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
☆5月30日(月)14:00~16:00
「職場での熱中症予防対策」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
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◇…産業医対象
●…産業保健スタッフ対象
☆…産業保健スタッフ・産業医対象
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▼詳細・申込
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/h2335
第84回労働衛生研究会~働く人の健康を考える~の開催について
鹿児島労働衛生研究会は、「労働衛生コンサルタントとこれを目指す人々との研修・交流会」として、四半期に1回、テーマを決めて研修会を開催するとともに、働く人の健康に関する情報交換も行っています。
本年1月28日の開催を延期としていました第84回労働衛生研究会について、下記のとおり開催いたします。参加費は無料です。
日 時 | 令和4年4月15日(金)19:15~20:45 |
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場 所 | 鹿児島市勤労者交流センター(よかセンター)多目的ホール (鹿児島市中央町10番地 キャンセビル8階 099-285-0003) |
テーマ | 働く女性と月経 |
講 師 | 崎濱 ミカ 氏 (鹿児島大学 周産母子センター 助教) |
お知らせ
<鹿児島産業保健総合支援センター>
産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。
治療と仕事の両立支援対策やメンタルヘルス対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。(オンラインによる相談も可能です。)電話やFAX、ホームページからお気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase
治療と仕事の両立支援について
治療と仕事の両立に関するお悩み等について、事業場関係者や産業保健スタッフ、がんなど反復・継続して治療が必要な患者(労働者)やその家族からの相談に、鹿児島産業保健総合支援センターの両立支援促進員又は産業保健専門職(保健師)が相談に応じます。(オンラインによる相談も可能です。)
また、両立支援促進員が、事業場を訪問して事業場内の支援体制、勤務・休暇制度、各種規程等の整備、両立支援に関する教育など両立支援制度の導入に向けた支援を行うほか、患者(労働者)からの申出を受け、就労継続や職場復帰に関する事業場との調整支援を行います。
両立支援に関する相談、各種支援は無料です。
○治療と仕事の両立支援(支援内容、相談窓口、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat765
なお、医療機関の両立支援(出張)相談窓口につきましては、新型コロナウイルスの感染状況により、医療機関の相談窓口業務を中止する可能性がありますので、当センターのホームページで事前に確認いただきますようお願いいたします。
メンタルヘルス対策支援について
当センターのメンタルヘルス対策促進員(産業カウンセラーや社会保険労務士など)が事業場に訪問し「心の健康づくり計画」の策定、相談体制の整備、職場環境の把握と改善、管理監督者向けや若年労働者(含む全社員)向けのメンタルヘルス教育・研修、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援など、職場のメンタルヘルス対策に関する取り組みを無料で支援します。
また、事業場訪問以外のご相談(対面・電話・メール・オンライン)にも対応いたします。オンラインによる研修も対応可能です。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/mental
メンタルヘルス対策支援の申込については、当センターホームページの申込フォームまたは当センターホームページ掲載の「メンタルヘルス対策支援申込書」に所要事項を記入しFAX送信によりお申込ください。(電話、郵送、メールでは受付しておりません。)
令和4年度の「心の健康づくり計画」作成に係る支援申込は、令和4年4月1日から受付を開始します。メンタルヘルス対策促進員の支援を受け「心の健康づくり計画助成金」を利用する場合、当該助成金の利用対象は予算の範囲内で、申込受付順(申込書の着順)とさせていただきます。また、令和4年度から助成金の申請スケジュール等が変更となりますので、当センターと調整のうえ、支援を受けてください。
なお、申請期間中でも助成金支給申請の受付を終了する場合がありますので、ご理解いただきますようお願いいたします。
地域産業保健センター(地域窓口)について
労働者数50人未満の小規模事業場に対する健康相談、保健指導等の産業保健サービスを無料で行っています。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat638
<労働者健康安全機構情報>
労災疾病等医学研究普及サイトのご案内
労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。
▼労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html
▼「早期復職」について
https://www.research.johas.go.jp/souki2018/index.html
▼予防医療モデル事業について
https://www.research.johas.go.jp/yobou/
<厚生労働省情報>
「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!
令和4年4月1日から、労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止
措置」が中小企業の事業主にも義務化されます。
▼リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf
▼ポータルサイト「あかるい職場応援団」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
若年性認知症における治療と仕事の両立に関する手引きについて
厚生労働省における令和3年度老人保健健康増進等事業として「若年性認知
症疾者の就労支援のための調査研究事業」を実施したみずほリサーチ&テク
ノロジーズ株式会社から「若年性認知症における治療と仕事の両立に関する
手引き」が公開されました。
https://www.mizuho-ir.co.jp/case/research/pdf/r03mhlw_kaigo2021_01.pdf
「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」について
令和3年度の厚生労働省委託事業「ストレスチェック制度の効果検証に係る
調査等事業」を実施したみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社において、
「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」と題したストレス
チェック制度の実施促進に資する事例集等が作成されました。
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
転倒予防・腰痛予防の取組について(再掲)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111055.html
令和4年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します(再掲)
職場における熱中症予防対策を徹底するため、令和4年5月から9月まで、
「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24043.html
令和3年度「治療と仕事の両立支援オンライン地域セミナー」(再掲)
各エリアのライブ配信は終了しましたが、アーカイブ配信が継続中です。
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/symposium/2021
「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」の一部改正について(再掲)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T211228K0120.pdf
職場における労働衛生基準が変わりました
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000905329.pdf
保健衛生業及び陸上貨物運送事業向け腰痛予防サイト(再掲)
<鹿児島労働局情報>
令和3年の労働災害発生状況
○令和3年12月末速報(令和4年3月7日現在の速報値)
□ 死亡者数は22人で、前年同期比で8人(57.1%)増。
□ 休業4日以上の死傷者数は2221人で、前年同期比で149人(7.2%)増。
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/r3saigai_2022-0308-3.pdf
<新型コロナウイルス関連情報>
感染拡大防止へのご協力をお願いいたします!(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku.html
新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000788485.pdf
新型コロナワクチンについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html
新型コロナウイルスに関連するQ&A(厚生労働省)
▼企業の方向け
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
▼労働者の方向け
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html
職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(日本渡航医学会)
https://plaza.umin.ac.jp/jstah/index2.html
編集後記
「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」とは徒然草の一節だが、矢張り満開の桜は心奪われる。今年は開花が早く山桜からソメイヨシノまで連続して楽しめました。本来なら、昨月末から今月初めまでは、卒業式に入学式だけでなく人事異動等に伴う引っ越しに加え歓送迎会が相次ぎ、「おでばい」だけでなく夜の宴会も相次ぐ季節。
通常なら「ケジメ」となるような多彩な行事が陰を潜めて「寂しさ」をも感じる3度目の春を迎えました。「三寒四温」の時季が過ぎると鹿児島は直ぐに初夏の陽気になることが多いのですが、今年はどうでしょうか。
産業現場では、新人教育が重要な時期ですが一昨年から今年までの3年間の新人達の教育の効果を些か心配しています。業務遂行能力に加え労働衛生教育もこの時期は重要ですが、パンデミックに加えウクライナの「戦争」も生産現場に多大な影響を及ぼし深刻な不況に見舞われつつあるようです。円安が進行し物価上昇が続き倒産・廃業が増加する状態となれば、特に小企業零細企業への皺寄せは多大となり産業保健活動は大きく後退する危険があります。こうした中だからこそ、健康経営の理念や質の高い安全衛生活動がより重要となりますが、それが「空念仏」に終わることにならないよう期待しています。
歴史を繙けば、パンデミック後には弱肉強食の悲惨な競争社会が出現していますが、今回だけはそうならないよう「知恵」を絞り英知を結集して、誰もが「健康的で文化的な生活」できる社会を創りたいものです。