お知らせ

メールレター 第233号

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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第233号(2022.08)

   発行:鹿児島産業保健総合支援センター
              所長 草野 健
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相談員からのメッセージ

お金を得るために健康を失う -失体感症の世界-

産業保健相談員 山中隆夫
(担当分野:メンタルヘルス)

「人間は、お金を稼ぐために健康を犠牲にする。そして、その稼いだお金を健康を取り戻すために使う」これはダライ・ラマ14世の言葉(警句)とされています。働き過ぎは病気のもとですよ、と言っているのです。

では、何故こういったことになるのでしょうか?

その多くは休むこと、ボーッとすることに自責感、罪悪感を抱くために、ゆっくり休めないのです。ヒマな時間ができたとしても何かをしています(職場では“働き者”とも、“貧乏性”とも言われています)。

では、何故に無理に無理を重ねることができるのでしょうか?

身体の違和感(警告音)を感じないからです。このため、身体のブレーキの利(き)きが悪いのです。止められないのです(例えば、熱いのが分からず、よく火傷を負っている人がいます。疲れ知らずの元気なために、ついつい無理を重ね、過労死してしまう人もいます)。

この状態を心身医学の世界では“失体感症(アレキシソミア)”と呼んでいます。もともと、耐えられない程の悲しみ、不安、恐怖、怒りなどの強い感情(情動)を「自分は感じないから、どうもない」として自分を守る自己防衛メカニズムは“失感情症(アレキシサイミア)”と呼ばれていました(これは心身症の発症・持続の基本的な心理機制とされています)。ところが九大心療内科の(故)池見酉次郎教授は日本人には身体感覚を感じないようにして身を守る人の方が多いとして、この病態を失体感症と名づけたのが始まりです。

では、ここで簡単な自己チェックをしてみましょう。
(1)自分では無理をしているつもりはないが、人から「無理のしすぎではないか」と言われる。
(2)自分では疲れていると思わないが、人から「疲れているのではないか」と言われる。
(3)自分では緊張しているつもりはないが、人から「緊張している」と言われる。
(4)休息が必要だと分かっているが、仕事(家事、学業)を優先してしまう。
(5)熱が出ても仕事(家事、学業)をする。
(6)疲れていても休みたいと思わない。
(7)満腹感、空腹感、痛み、疲れ、身体の不調などを感じない。
(8)リラックスの仕方が分からない。

どうでしたか? 意外と当てはまる項目があったのではないでしょうか?
このように私たちはいつの間にか自分の身体を”道具”として扱ってしまっています。そうではなく、身体の些細(ささい)な訴えにも耳を傾け、労(いた)わることが大切です。身体(DNA)は何億年を生き抜いてきた知恵を持っているのですから。

研修セミナーのご案内

下記、セミナーはどなたでも参加できます。参加される皆様は、新型コロナウイルスの感染予防対策(以下URL)にご協力ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/wp-content/uploads/2020/05/kensyu-kai.pdf

【定 員】14名
【会 場】光健ボイスビル2F ※8/27(土)・9/24(土)を除く

┏―[ 詳細・申込 ]――――――――――――――――――┓
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/h2335
┗―――――――――――――――――――――――――――┛

―[ 8月 ]――――――――――――――――――――――――――――――

8月2日(火)14:00~16:00
「産業医として知っておくべき作業環境測定結果報告書の読み方」東先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位

8月4日(木)14:00~16:00 ※満席
「「不安」に悩まされる病気と治療-事例検討も含めて-」赤崎先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

8月8日(月)14:00~16:00 ※満席
「働く方々の健康を守るために
産業医からのアドバイス(新型コロナ感染症対策を含め)」桶谷先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

8月10日(水)14:00~16:00 ※満席
「生活習慣病と「うつ」」長友先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

8月22日(月)18:00~20:00 ※満席
「健診と検診:職場健診をデザインする」堀内先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

8月26日(金)14:00~16:00
「日常生活改善で認知症を予防する」徳永先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位

8月27日(土)14:00~16:00 ※満席
「意外と身近な酸欠」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位
※会場:鹿児島県医師会3F中ホール(鹿児島市中央町8-1)

―[ 9月 ]――――――――――――――――――――――――――――――

9月8日(木)14:00~16:00 ※満席
「行動変容を促すためのコミュニケーション」網谷先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

9月15日(木)14:00~16:00
「知っておきたい職場の安全管理と安全配慮義務(安全管理者含む)」黒沢先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

9月16日(金)14:00~16:00
「人事管理職者のストレス:メンタルヘルス・カウンセリング―3
~感情労働・感情管理、感情の商品化をめぐって~」久留先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

9月20日(火)18:00~20:00
「禁煙支援について(歯科の視点から)」市来先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

9月24日(土)14:00~16:00 ※定員30名
「職場における救急救命処置」前田先生
日医認定産業医:生涯(実地)2単位
※会場:鹿児島県医師会3F中ホール(鹿児島市中央町8-1)

9月30日(金)14:00~16:00
「障害者を雇用するときに気を付けること」冨宿先生
日医認定産業医:生涯(専門)2単位

お知らせ

<鹿児島産業保健総合支援センター>

産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

治療と仕事の両立支援対策やメンタルヘルス対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。(オンラインによる相談も可能です。)電話やFAX、ホームページからお気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

治療と仕事の両立支援について

治療と仕事の両立に関するお悩み等について、事業場関係者や産業保健スタッフ、がんなど反復・継続して治療が必要な患者(労働者)やその家族からの相談に、鹿児島産業保健総合支援センターの両立支援促進員又は産業保健専門職(保健師)が相談に応じます。(オンラインによる相談も可能です。)

また、両立支援促進員が、事業場を訪問して事業場内の支援体制、勤務・休暇制度、各種規程等の整備、両立支援に関する教育など両立支援制度の導入に向けた支援を行うほか、患者(労働者)からの申出を受け、就労継続や職場復帰に関する事業場との調整支援を行います。

両立支援に関する相談、各種支援は無料です。
○治療と仕事の両立支援(支援内容、相談窓口、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat765

なお、医療機関の両立支援(出張)相談窓口につきましては、新型コロナウイルスの感染状況により、医療機関の相談窓口業務を中止する可能性がありますので、当センターのホームページで事前に確認いただきますようお願いいたします。

メンタルヘルス対策支援について

当センターのメンタルヘルス対策促進員(産業カウンセラーや社会保険労務士など)が事業場に訪問し「心の健康づくり計画」の策定、相談体制の整備、職場環境の把握と改善、管理監督者向けや若年労働者(含む全社員)向けのメンタルヘルス教育・研修、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援など、職場のメンタルヘルス対策に関する取り組みを無料で支援します。

また、事業場訪問以外のご相談(対面・電話・メール・オンライン)にも対応いたします。オンラインによる研修も対応可能です。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/mental

メンタルヘルス対策支援の申込については、当センターホームページの申込フォームまたは当センターホームページ掲載の「メンタルヘルス対策支援申込書」に所要事項を記入しFAX送信によりお申込ください。
(電話、郵送、メールでは受付しておりません。)

地域産業保健センター(地域窓口)について

労働者数50人未満の小規模事業場の事業主や労働者を対象に、健康診断結果の意見聴取、健康相談、長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導、保健指導等の産業保健サービスを無料で行っています。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat638

<労働者健康安全機構情報>

令和4年度両立支援コーディネーター基礎研修開催のご案内

令和3年度に引き続きオンライン形式での研修を開催いたします。研修日程等の詳細については、機構本部ホームページにてご確認ください。

https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/2126/Default.aspx

産業保健関係助成金についてのお知らせ(令和4年5月17日公表)

令和4年度の産業保健関係助成金については、現在、厚生労働省において実施の可否を検討しております。

https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1251/Default.aspx

労災疾病等医学研究普及サイトのご案内

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。

▼労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html

▼「医療従事者の安全」について
https://www.research.johas.go.jp/anzen2018/index.html

<厚生労働省情報>

令和4年度「全国労働衛生週間」について

厚生労働省では、10月1日から7日まで「あなたの健康があってこそ 笑顔があふれる健康職場」をスローガンに、令和4年度「全国労働衛生週間」を実施します。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26899.html

熱中症予防のための情報・資料サイトについて

熱中症を防ぐために知っておきたいことなどの情報を掲載した「熱中症予防のための情報・資料サイト」を公開しています。

職場等での熱中症予防に向けた取り組みにご活用ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25950.html

また、令和4年5月1日から9月30日まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」が実施されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000900484.pdf

令和4年度「『見える』安全活動コンクール」を実施します

厚生労働省では8月1日から、労働災害防止に向けた事業場・企業の取組み事例を募集・公開し、国民からの投票等により優良事例を選ぶ令和4年度「『見える』安全活動コンクール」を実施します。
「あんぜんプロジェクト」ホームページ上の「『見える』安全活動コンクール」特設ページから応募ができます。
また、「あんぜんプロジェクト」への参加事業場等も募集しています。

○報道発表
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26951.html
○「『見える』安全活動コンクール」特設ページ
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzenproject/concour/index.html

化学物質管理に関する社内安全衛生教育用eラーニング教材について

厚生労働省では、化学物質を取り扱う労働者に対する教育用資料として動画教材を作成し、公開しています。
事業場における化学物質管理に関する安全衛生教育にご活用ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26157.html

化学物質による労働災害防止のための新たな規制について(再掲)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25984.html

令和4年度厚生労働省委託事業「ラベル・SDS活用促進事業」について(再掲)

▼化学物質管理の無料相談窓口のご案内
https://www.technohill.co.jp/telsoudan/
▼化学物質のリスクアセスメント」訪問支援のご案内
https://www.technohill.co.jp/rabel_sds/

歯科健康診断結果報告に係る省令改正について(再掲)

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220428K0010.pdf

転倒予防・腰痛予防の取組について(再掲)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111055.html

<鹿児島労働局情報>

鹿児島県内の労働災害発生状況

令和4年(6月末速報)
□死亡者数は4人で、前年同期比で7人(63.6%)減少。
□休業4日以上の死傷者数は1,363人で、前年同期比で500人(57.9%)増加。
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/r4saigai_2022-0722-2.pdf

<公益財団法人産業医学振興財団情報>

令和5年度「産業医学調査研究」募集のご案内

当財団では、産業医学の振興と職場で働く人々の健康確保に資することを目的とした調査研究を以下の内容で募集いたします。

【募集区分等】
(1)一般研究
○ 採用予定件数:4件程度
○ 研究期間:1年間(令和5年4月1日~令和6年3月31日)
○ 研究費:上限150万円
○ 申請期限:令和5年2月末日必着

申請資格、その他の詳細はホームページをご覧ください。
https://www.zsisz.or.jp/

【お問合せ先】
(公財)産業医学振興財団 振興課
TEL:03-3525-8294(直通)・FAX:03-5209-1020
E-mail:fukyu@zsisz.or.jp

<新型コロナウイルス関連情報>

新型コロナウイルス感染症に関する健康や医療相談の情報(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kenkou-iryousoudan.html#h2_1

新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/000927280.pdf

新型コロナワクチンについて(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html

新型コロナウイルスに関連するQ&A(厚生労働省)

▼企業の方向け
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
▼労働者の方向け
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html

職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(日本渡航医学会)

https://plaza.umin.ac.jp/jstah/index2.html

編集後記

今夏のボーナスは若干増加するとか。物価高進行の中、僅かながらも朗報と言えようか。泥沼化するウクライナ戦争に新型コロナの第7波の到来。食料やエネルギー資源の生産能力低下と供給網の機能不全による世界的インフレ進行で欧米各国はインフレ対策に苦慮。そんな中で、安全平和と思われていた我が国で元総理の銃弾殺害という衝撃的事件の発生。日本の平和安全神話は崩壊か。何とも難儀な世の中になったものである。

日本はスタグフレーション状況に陥っているのかどうか。産業保健の立場からは働き方改革の進展が大いに気になる。金融資本主義が末期的状況を示しているが資本主義経済システムに取って代わる経済システムがどんなものか何も見えていない。マルクス主義に基づく社会主義的経済システムは尽く失敗。今や強欲資本主義経済システムのみが跋扈している。

労働により産み出される価値は、本来使用価値産出とその増大が本質であるが、労働自体も売買の対象とする資本主義では付加価値が重視される。金融資本主義は付加価値増大にのみ注視して利潤追求に精出す経済システム。

このような経済システム下で働く者がその働きにどのような価値・意義を見出していけば良いか、あらゆる労働を「働きがい」のあるものにするには何が必要か。そのような問題は、産業医を始めとする産業保健従事者の活動範疇には入らないという考えもあるが、健康障害予防と健康水準向上を目的とする産業医学では、それらの課題も避けることは許されまい。産業保健の究極の目的は「働くことでより健康になる」ことにあるだろう。経済状況を常に注視していくことは不可欠の作業と考える。

叶わぬまでも、1次予防から0次予防まで視野に入れた活動に踏み込んで行きたいものである。