お知らせ

メールレター 第245号

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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第245号(2023.8)

   発行:鹿児島産業保健総合支援センター
              所長 草野 健
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相談員からのメッセージ

依存症の成因と治療

産業保健相談員 竹元 隆洋
(指宿竹元病院)
(担当分野:メンタルヘルス)

(1)依存症の脳の変化-
飲酒すると快感がおこり、脳の側坐核で神経伝達物質のドーパミンが多量に放出され、その「快感記憶」を求めて飲酒をくり返すとドーパミン受容体(受け皿)の感受性が低下して快感がにぶくなるので、ますます飲酒欲求が強くなり、飲酒量が増加します。この反復を「耐性」と言います。さらに飲酒を中断すると抑制がとれて神経細胞は過活動状態となり離脱症状が出現します。この「離脱症状」と「耐性」と「快感記憶」のために酒を止めることは極めて困難になります。この3項目の脳の変化は元に戻せず治療不可能なので断酒の継続は困難になります。
(2)依存症の精神的変化-
家族は酒を止めることをくり返し強要するが、何の効果もない。例えば、妻が「また飲んだのね」と言う、アルコール依存症の夫は「飲んでない」と否認する。妻が「顔が赤いよ」夫は「日に焼けたんだ!」と嘘を言う。この否認と嘘で自己正当化・自己合理化して対人関係は急速に悪化、喧嘩の連続になり本人はさらに自己肯定・自己中心となり、一方他者非難・他者否定・他者無視となり本人の言動は暴言、粗暴となり、迷惑行動の連続になります。
(3)依存症の治療-
否認と嘘から始まる人間関係の悪化と精神的変化を改善・回復させるための治療です。
1.集団療法(自助グループ)は仲間同士の約束・信頼・支え・助け合い・無償の愛情(友情)から精神的(人間的)に変化し、回復します。
2.個人精神療法(内観療法)は主に家族との人間関係を基本にして自分を振り返り、自己肯定・自己中心に気づき、一方他者に対しては他者否定・他者無視に気づいて、これ以上迷惑はかけられないとの自覚にめざめ、他者を思いやる生き方に変わります。

研修セミナーのご案内 (8月~10月開催分 受付中!)

【定 員】20名
【会 場】光健ボイスビル2F
※8/26(土)、9/9(土)、9/30(土)は県医師会館3F 中ホール

┏―[ 詳細・申込はこちらから ]―――――――――――┓
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/h2335
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「両立支援コーディネーターのためのWebセミナー(対象者限定)」のご案内

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当センターでは、治療と仕事の両立支援の事業に関する「両立支援コーディネーター基礎研修の修了者」向けのセミナーを開催します。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

日 時 令和5年9月8日(金)14時~16時30分
対象者 両立支援コーディネーター基礎研修の修了者
(鹿児島県在住もしくは鹿児島県内で勤務の方)
内 容 第1部 両立支援における情報取集と共有
講師:産業医科大学 医学部 両立支援科学 両立支援室 副室長
第2部 事例検討会及び交流会
講師:熊本労災病院 治療就労両立支援部 医療ソーシャルワーカー
定 員 20名
申込方法 メールフォーム
https://ssl.formman.com/t/iMaT/
申込期限 令和5年9月1日(金)まで
開催方法 オンライン(Zoom使用)
※オンライン研修のため、日医認定産業医研修の単位取得はできません。

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「治療と仕事の両立支援 Webセミナー」のご案内

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当センターでは、治療と仕事の両立支援の事業に関する「事業者・人事労務担当者」向けのセミナーを開催します。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

日 時 令和5年9月26日(火)14時~16時15分
対象者 事業者・人事労務担当者となりますが、産業保健スタッフの参加も受付けます
内 容 第1部「治療と仕事の両立支援」に関連する労働法について
講師:鹿児島産業保健総合支援センター 両立支援促進員
第2部 働く女性の健康 ~今、職場でできること~
講師:鹿児島産業保健総合支援センター 産業保健専門職(保健師)
定 員 20名
申込方法 HPメールフォーム
https://ssl.formman.com/t/BFQf/
申込期限 令和5年9月19日(火)まで
開催方法 オンライン(Zoom使用)
※オンライン研修のため、日医認定産業医研修の単位取得はできません。

お知らせ

<鹿児島産業保健総合支援センター>

産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

治療と仕事の両立支援対策やメンタルヘルス対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。(オンラインによる相談も可能です。)電話やFAX、ホームページからお気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

治療と仕事の両立支援について

治療と仕事の両立に関するお悩み等について、事業場関係者や産業保健スタッフ、がんなど反復・継続して治療が必要な患者(労働者)やその家族からの相談に、鹿児島産業保健総合支援センターの両立支援促進員又は産業保健専門職(保健師)が相談に応じます。(オンラインによる相談も可能です。)
両立支援に関する相談、各種支援は無料です。

▼治療と仕事の両立支援(支援内容、相談窓口、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat765

医療機関の両立支援(出張)相談窓口につきましては、、事前予約の状況等により、窓口業務を中止する可能性がありますので、当センターのホームページで事前に確認いただきますようお願いいたします。

メンタルヘルス対策支援について

当センターのメンタルヘルス対策促進員(産業カウンセラーや社会保険労務士など)が事業場に訪問し、職場のメンタルヘルス対策に関する取り組みを無料で支援します。

また、事業場訪問以外のご相談(対面・電話・メール・オンライン)にも対応いたします。オンラインによる研修も対応可能です。

▼メンタルへルス対策支援(支援内容、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/mental

地域産業保健センター(地域窓口)について

各地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場の事業主や労働者を対象に、健康診断結果の意見聴取、健康相談、長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導、保健指導等の産業保健サービスを無料で行っています。

▼地域産業保健センターについて
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat638

<労働者健康安全機構情報>

令和5年度「両立支援コーディネーター基礎研修」の研修日程

令和5年度の両立支援コーディネーター基礎研修は、昨年度に引き続きオンライン形式での開催となります。応募多数の際は先着順ではなく抽選を行いますので、受講を希望される回の募集期間内にご応募ください。

第4回以降の日程については、後日公開を予定しております。
詳細については、労働者健康安全機構ホームページの「両立支援コーディネーター基礎研修」ページをご覧ください。
https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/2126/Default.aspx

労災疾病等医学研究普及サイトのご案内

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。

▼労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html
▼「生活習慣病」について
https://www.research.johas.go.jp/seikatsu2018/index.html
▼「メンタルヘルス」について
https://www.research.johas.go.jp/mental2018/index.html
▼「アスベスト」について
https://www.research.johas.go.jp/asbesto2018/

<厚生労働省情報>

令和4年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました

・過労死等に関する請求件数 3,486件(前年度比387件の増加)
・支給決定件数 904件(前年度比103件の増加)うち死亡・自殺(未遂を含む)件数121件(前年度比15件の減少)

○別添資料1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001113801.pdf
○別添資料2 精神障害に関する事案の労災補償状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001113802.pdf
○別添資料3 裁量労働制対象者に関する労災補償状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001113803.pdf

「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました

総合労働相談件数は、15年連続で100万件を超え、高止まりとなっています。
また、紛争の内容は、「いじめ・嫌がらせ」が引き続き最多となっています。
https://www.mhlw.go.jp/haishin/u/l?p=U7TWHQ08YnuU8D3BY

【詳細】令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001114181.pdf

<鹿児島労働局情報>

鹿児島県内の労働災害発生状況

○令和5年発生分(6月末速報)
□死亡者数は8人で前年同期より4人(100%)増加。
□休業4日以上の死傷者数は862人で、前年同期比で18人(2.0%)減少。
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/r5saigai_2023-0720-3.pdf

編集後記

国連事務総長が「温暖化ではなく地球沸騰化」と警告を発した。地球数十億年の歴史からみれば誤差範囲に収まる微変動かもしれないが、少なくとも近代以降では人為的な影響が無視できない変化。利益拡大・追求を前提とする現在の資本主義経済システムは人類が定住農耕を始めてからの凡そ1万年の歴史の中ではつい最近のことだが、その経済活動が気候変動惹起の一因であることは疑い得ない。400年にも及ばない労働力自体も資本とみる経済システム自体がメンタルストレスの大きな因子の上に、「地球沸騰化」という人類が今までに経験したことのない甚大なストレス。今日の産業保健の最大の課題は心身へのストレス対策であろう。

第3次産業革命とも言われる情報革命時代。生成AIに量子コンピューターの実用化等、産業現場は激変すると思われる。産業保健の諸対策も種々の改革が迫られるが、そんな中で大いに気になることがある。「言葉は生き物」と言われるように使用される言語が変容するのは当然だが、急速なカタカナ語の氾濫は特に高齢労働者には酷である。適切な訳語がない単語ならやむを得ないが、カタカナ語の多用は作業現場でのストレス増大の無視できない要因の一つといえよう。

先人から受け継がれる経験や智慧も効力を減じている現状では、「抑うつ症」や各種の「依存症」等のメンタル障害が増加するのは当然と思われる。本来「生活の豊かさ=健康で文化的生活」を目指す経済活動が、心身の健康を損なう無視できない因子になっているなら何とも悩ましい。