メールレター 第249号
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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第249号(2023.12)
発行:鹿児島産業保健総合支援センター
所長 草野 健
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相談員からのメッセージ
濃度基準値設定物質の管理について
産業保健相談員 東 正樹
((株)鹿児島環境測定分析センター 代表取締役)
(担当分野:労働衛生工学)
リスクアセスメント対象物のうち厚生労働大臣が定めるものを製造する又は取扱う業務を行う屋内作業場においては、労働者がばく露される濃度を基準値(以下「濃度基準値」という。)以下とすることが義務付けられます。(令和6年4月1日施行)
この濃度基準値による規制は、これまでなかった新たな化学物質規制の一つです。その内容を列記してご紹介します。
- 濃度基準値は、すべてのリスクアセスメント対象物質に設定されるのではなく、労働者に健康障害を生ずるおそれがない濃度が判明している等の一部の物質に設定されます。現在67物質に設定されていますが、国の検討会で議論され、今後対象物質が増えていく見込みです。
- 濃度基準値には、8時間値と短時間値の2種類があり、どちらの値も超えないようにする必要があります。
- 濃度基準値への適否の確認は、CREATE-SIMPLE等の数理モデルによる推定方法と実測による方法のいずれの方法でも構いません。ただし、リスクアセスメントによって、労働者が当該物質にばく露される程度が濃度基準値を超えるおそれがある屋内作業を把握した場合(たとえばCREATE-SIMPLEで推定ばく露濃度が濃度基準値の2分の1を超えると評価された場合)は、ばく露される程度が濃度基準値以下であることを確認するための測定(確認測定)が必要です。
- 濃度基準値は、作業環境中の濃度ではなく、個人ばく露濃度として定められます。したがって、濃度基準値への適否は、(実測する場合)労働者に個人サンプラーを装着させて測定を行うのが一般的です。
なお、これとは別に、労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を最小限度とすることを含めたリスク低減措置を実施することが求められます。ご留意ください。
以上のように、労働安全衛生法令の改正に伴う化学物質の自律的管理の導入に伴い、新たな規制が始まります。今回ご紹介した濃度基準値の設定だけでなく、改正点が多岐に渡るため、施行日に間に合うよう早めに準備を進めてください。
産業保健研修会・セミナーのご案内(12月~2月開催分 受付中!)
┏―[ 産業保健研修会の詳細・申込はこちらから ]―――┓
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/h2335
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【 腰痛・肩こり予防対策セミナー 】のご案内
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職場における腰痛の発生要因には、腰部に過度の負担を加える動作要因や、腰部への振動・温度等の環境要因、職場の対人ストレス等による心理的要因等があります。
また、デスクワークや長時間のスマホ利用による長時間の同一姿勢や姿勢の悪さからも、肩こり等の不調を引き起こし、労働生産性の低下に繋がることもあります。
今回当センターでは、労働者の健康保持増進の取り組みの参考としていただきたく、事業場で使える実践的な内容のセミナーを開催することとしました。皆様のご参加をお待ちしております。
※今回のセミナーは日医認定産業医の単位取得はできません。産業医の皆様におかれましては、予めご了承ください。
日 時 | 令和6年1月30日(火)14時00分~16時00分 |
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会 場 | 鹿児島県医師会館 中ホール2(鹿児島市中央町8-1) |
対象者 | 事業者・安全衛生担当者など |
内 容 |
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定 員 | 30名(先着順) |
申込方法 | メールフォーム https://ssl.formman.com/t/gFqY/ ※令和6年1月22日(月)までにお申し込みください。 |
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【 働く人のメンタルヘルス対策支援セミナー 】のご案内
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今年度2回目のメンタルヘルス対策セミナーを開催します。
今回は、「心的安全性の高い職場のつくり方」をテーマに2部構成で実施します。開催案内チラシもご覧いただき、是非、お申込みください。
※今回のセミナーは日医認定産業医の単位取得はできません。産業医の皆様におかれましては、予めご了承ください。
日 時 | 令和6年2月2日(金)14時00分~16時00分 |
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会 場 | マリンパレスかごしま(鹿児島市与次郎2-8-8) |
対象者 | 事業者・安全衛生担当者など |
内 容 |
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定 員 | 30名(先着順) |
申込方法 | メールフォーム https://ssl.formman.com/t/iMaT/ ※令和6年1月29日(月)までにお申し込みください。 |
【当センター主催のセミナーに関するご案内】
当センターでは産業保健研修会以外に、事業場向けのセミナーも開催しています。
ホームページにセミナーの専用ページを開設しておりますので、メールレターでのご案内と併せて、是非、ご覧いただき産業保健活動の取組みにお役立てください。
【産保センター主催】産業保健セミナー一覧
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/seminar
お知らせ
<鹿児島産業保健総合支援センター>
産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。
治療と仕事の両立支援対策やメンタルヘルス対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。(オンラインによる相談も可能です。)電話やFAX、ホームページからお気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase
治療と仕事の両立支援について
治療と仕事の両立に関するお悩み等について、事業場関係者や産業保健スタッフ、がんなど反復・継続して治療が必要な患者(労働者)やその家族からの相談に、当センターの両立支援促進員又は産業保健専門職(保健師)が相談に応じます。(オンラインによる相談も可能です。)
両立支援に関する相談、各種支援は無料です。
▼治療と仕事の両立支援(支援内容、相談窓口、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat765
医療機関の両立支援(出張)相談窓口につきましては、、事前予約の状況等により、窓口業務を中止する可能性がありますので、当センターのホームページで事前に確認いただきますようお願いいたします。
メンタルヘルス対策支援について
当センターのメンタルヘルス対策促進員(産業カウンセラーや社会保険労務士など)が事業場に訪問し、職場のメンタルヘルス対策に関する取り組みを無料で支援します。
また、事業場訪問以外のご相談(対面・電話・メール・オンライン)にも対応いたします。オンラインによる研修も対応可能です。
▼メンタルへルス対策支援(支援内容、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/mental
運動指導等支援について(新規支援事業)
健康で安心して働ける職場環境の形成を支援するという産業保健の観点から、運動指導等を通じた労働者の健康保持増進について取り組むため、産業保健相談員(健康運動指導士)による個別訪問支援等を実施しています。事業場が行う健康教育等において、是非、ご活用ください。
▼運動指導等支援(支援内容、申込フォーム)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/undou
地域産業保健センター(地域窓口)について
各地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場の事業主や労働者を対象に、健康診断結果の意見聴取、健康相談、長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導、保健指導等の産業保健サービスを無料で行っています。
▼地域産業保健センターについて
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat638
<労働者健康安全機構情報>
令和5年度「両立支援コーディネーター基礎研修」の研修日程
募集最後の開催日程及び募集期間は以下のとおりです。
応募多数の際は先着順ではなく抽選を行いますので、受講を希望される回の募集期間内にご応募ください。
https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/2126/Default.aspx
労災疾病等医学研究普及サイトのご案内
労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。
▼労災疾病等医学研究普及サイト
https://www.research.johas.go.jp/index.html
▼「生活習慣病」について
https://www.research.johas.go.jp/seikatsu2018/index.html
▼「メンタルヘルス」について
https://www.research.johas.go.jp/mental2018/index.html
▼「アスベスト」について
https://www.research.johas.go.jp/asbesto2018/
▼「治療と仕事の両立支援コーディネーターマニュアル」について
★両立支援コーディネーターマニュアルはこちら
https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/1047/Default.aspx
★両立支援コーディネーターについて知りたい方はこちら
https://www.research.johas.go.jp/ryoritsucoo/
▼「病職歴データベースを活用した研究」について
当機構では労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでおります。「労災疾病等医学研究普及サイト」では、これまで実施してきた研究成果について掲載しています。
今回はその中で「病職歴データベースを活用した研究」についてご紹介します。
https://www.research.johas.go.jp/bs/
労災病院グループでは、全国の労災病院の入院患者さんにご協力いただき、これまでの仕事や生活習慣等に関する情報を収集しています。その収集した情報をデータベース化して、職業と疾病との関連性についての研究を行い、研究成果は就労者の健康の保持増進及び疾病の予防・治療・職場復帰支援に活用しています。
今般、病職歴データベースの大規模データを用いて、15年間、約14万人の死亡退院者データを分析し、死亡例の季節性および性別・年齢層別にみた死因の特徴等について解析した研究結果が「日本職業・災害医学会誌」にて報告しました。
研究論文が以下のリンクからご覧になれます。
論文タイトル
『15年間の死亡統計から学ぶ:全国労災病院病職歴データベースによる検討』
(病職歴調査研究責任者 豊田 章宏先生)
https://www.research.johas.go.jp/bs/index.html#results
<厚生労働省情報>
12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です
厚生労働省では、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメント防止措置に関する周知啓発等を集中的に取り組んでおります。また、ポータルサイト「あかるい職場応援団」では、ハラスメント防止対策の取
組の参考となるパンフレットや研修動画などを提供しています。
【ポータルサイト「あかるい職場応援団」】
◯ハラスメント関係資料ダウンロード
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/download/
◯令和5年12月5日実施「職場におけるハラスメント対策シンポジウム」(オンラインLIVE配信)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/symposium
<鹿児島労働局情報>
鹿児島県内の労働災害発生状況
○令和5年発生分(10月末速報)
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/jirei_toukei/toukei/saigaitoukei_jirei.html
最新の業種別労働災害発生状況
⇒「令和5年における業種別労働災害発生状況」をクリック
労働条件明示のルール変更等
労働基準法施行規則の改正により、労働契約の締結・更新時に事業主が労働者に明示すべき事項が追加され、令和6年4月より施行されることとなりました。
厚生労働省においてパンフレットとリーフレットを作成しておりますので、当該ホームページよりダウンロードしていただきご活用ください。
▼厚生労働省ホームページ(専用ページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
▼パンフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156048.pdf
▼リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156050.pdf
担当:鹿児島労働局雇用環境・均等室 電話 099-223-8239
< 情報提供 >
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのご案内
~「発達障害特性と精神障害が併存する人の就労支援のポイント」~
高齢・障害・求職者雇用支援機構においては、発達障害特性と精神障害が併存する方が就職し、職業生活を継続するために必要となる配慮や支援の考え方についてまとめた「発達障害特性と精神障害が併存する人の就労支援のポイント」を作成しており、ホームページからダウンロード(※)できますので、御活用ください。
※https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai65.html
編集後記
早くも師走。光陰矢の如し、とは言うものの例年の如く今年も何事を成し得たのかと忸怩たる感を禁じ得ない時季である。
産業保健は働く人の障害予防に止まらず健康保持・増進を目的とするものだが、働く現場は経済動向に大きく左右される。その経済は政治状況と複雑に絡み合っている。地球上の何処であってもあらゆる事態の影響を受ける。自然災害だけでなく絶えることのない戦火や紛争にも大きく左右される。社会状況の目まぐるしい変化に対応して日本でも法令改正と指針発出が相次いでいる。
産業保健関連でも、メンタルヘルス対策や働き方改革に加え化学物質に対する施策も矢継ぎ早であるが、小企業・零細企業の実態とは乖離したものと感じられてならない。化学物質対策に関しても、現在では製造業だけでなく多くの業種で多種多様の化学物質が使用されているが、それらは中規模以上の製造業中心の施策と目される。今日でも日本経済を下支えしているのは下請け孫請けの零細事業場だが、厳しい経営状況の中では雇用状況の改善も望めない非正規雇用者が多く、「最後の砦」とされる地産保の利用も極めて少数という状態にある。
「働くことでより健康に」は産業保健の究極の目的と考えるが、単なる夢想に終わるという危惧すら覚える年末。来年は夢想ではなく少しでも理想に向えるような年にこの1年を総括したいものである。