お知らせ

メールレター 第273号

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≪「さんぽ鹿児島」メールレター≫ 第273号(2025.12)

   発行:鹿児島産業保健総合支援センター
              所長 草野 健
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相談員からのメッセージ

見えないコスト「プレゼンティーズム」と、今求められる「セルフケア」の重要性

 産業保健相談員 網谷 東方
(担当分野:メンタルヘルス)

職場のメンタルヘルス対策は、多くの企業で重要な課題となっています。しかしながら、不調を抱えながらも出勤し、仕事の能率が低下している状態、いわゆる「プレゼンティーズム」が、どれほど大きな影響を与えているかご存じでしょうか。

最近発表された日本の研究(Hara K et al., J Occup Environ Med, 2025)によると、メンタルヘルス不調によるプレゼンティーズムが引き起こす経済的損失は、年間で約7.3兆円にも上ると推計されています。これは、国内の精神疾患の治療にかかる医療費総額の約7倍に相当する衝撃的な金額です。

この見えないコストは、企業にとって非常に深刻な問題となります。さらに近年は、テレワーク、フレックスタイム、副業解禁など、働き方が大きく多様化しています。これは柔軟性がもたらされる一方で、上司や同僚がお互いのちょっとした変化に気づきにくくなり、プレゼンティーズムが一層把握されにくくなっていることを意味します。

管理職による把握(ラインケア)が難しくなる中、重要性が増しているのが「セルフケア」です。従業員一人ひとりが自身の心と体の状態に関心を持ち、不調のサインに早期に気づき、適切に対処することが、重症化を防ぐ個別最適な対策となります。具体的な対処法としては、以下のようなものがあります。

・身体的アプローチ:適度な運動、積極的休養
・心理的アプローチ:リラクセーション法(呼吸法、漸進的筋弛緩法、自律訓練法、マインドフルネスなど)
・社会的アプローチ:上司や専門家への相談

先述の論文においても、「生産性を損なわずに安定した精神状態を維持するためには、セルフケアの実践を職場文化に統合することが不可欠である」と結論づけています。

皆様の職場において、セルフケアの重要性を改めて共有し、その具体的な方法について考えるきっかけとしていただければ幸いです。

産業保健研修会のご案内(12~2月開催分 受付中!)

┏―[ 産業保健研修会の詳細・申込はこちらから ]―――――┓
 https://kagoshimas.johas.go.jp/information/h2335
┗――――――――――――――――――――――――――――┛

産業保健研修会の申込方法の変更に関する重要なお知らせです!

お申込み時の個人情報の管理を徹底するため、令和7年4月からFAXでのお申込みを廃止しております。
お申込みフォームもしくはホームページからの手続きとなります。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

日医認定産業医(生涯研修も対象)の皆様へ重要なお知らせです。

当センターが実施する研修においてもMAMISのマイページ登録完了が必要です。
詳細は鹿児島県医師会ホームページをご覧ください。
https://www.kagoshima.med.or.jp/doctors/news/4630/

認定医研修会単位につきましては、日本医師会に登録申請を行っており、MAMISマイページへの受講実績の反映は目安として開催日から1か月程度を想定しております。
ご心配をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

当センター主催のセミナーのご案内

当センターでは産業保健研修会以外に、事業場向けのセミナーも開催しています。
ホームページにセミナーの専用ページを開設しておりますので、産業保健活動の取組みにお役立てください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/seminar

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≪再掲≫産業医による産業保健研修会のご案内[土曜日開催]

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講師:
鹿児島産業保健総合支援センター 産業保健相談員(産業医学)
冨宿 明子 先生

紹介:
県内の事業場の産業医として約20年間に渡りご活動されており、労働衛生コンサルタント(保健衛生)としてもご活躍されています。

開 催
日 時
  • 1月17日(土)14時~16時 定員30名(先着順となります)
    長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアルの活用
  • 1月31日(土)14時~16時 定員50名(先着順となります)
    女性の健康課題と男性の更年期障

【会場】全て鹿児島県医師会館(鹿児島市中央町8-1)
※詳しくはホームページをご覧ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/information/seminar#R7.sat.seminar

▼産業医による産業保健研修会(土曜日開催)申込フォーム(各開催日の前日の午前中まで)
https://ssl.formman.com/t/rtbm/

※こちらからのお申込みによる日医認定産業医の単位取得はできません。
産業医の皆様におかれましては、予めご了承ください。

お知らせ

<鹿児島産業保健総合支援センター>

産業保健に関するご質問・ご相談を受け付けています。

治療と仕事の両立支援やメンタルヘルス対策をはじめ、産業保健に関する様々なご質問・ご相談を受け付けています。(オンラインによる相談も可能です。)電話やホームページからお気軽にご相談ください。
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/otoiawase

▼「さんぽセンターWebひろば」の専用ページ
https://www.johas.go.jp/Portals/0/sanpocenter/webhiroba.html

治療と仕事の両立支援について

治療と仕事の両立に関するお悩み等について、事業場関係者や産業保健スタッフ、がんなど反復・継続して治療が必要な患者(労働者)やその家族からの相談に、当センターのメンタルヘルス対策・両立支援促進員又は産業保健専門職(保健師)が相談に応じます。(オンラインによる相談も可能です。)
両立支援に関する相談、各種支援は無料です。

▼治療と仕事の両立支援(支援内容、相談窓口、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat765

医療機関の両立支援(出張)相談窓口につきましては、事前予約の状況等により、窓口業務を中止する可能性がありますので、当センターのホームページで事前に確認いただきますようお願いいたします。

▼「治療と仕事の両立支援」の専用ページ
https://www.ryoritsushien.johas.go.jp/blackjack/

メンタルヘルス対策支援について

当センターのメンタルヘルス対策・両立支援促進員(産業カウンセラーや社会保険労務士など)が事業場に訪問し、職場のメンタルヘルス対策に関する取り組みを無料で支援します。

また、事業場訪問以外のご相談(対面・電話・メール・オンライン)にも対応いたします。オンラインによる研修も対応可能です。

▼メンタルへルス対策支援(支援内容、申込フォームなど)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/mental

運動指導等支援について

健康で安心して働ける職場環境の形成を支援するという産業保健の観点から、運動指導等を通じた労働者の健康保持増進について取り組むため、産業保健相談員(健康運動指導士、理学療法士)による個別訪問支援等を実施しています。事業場が行う健康教育等において、是非、ご活用ください。

▼運動指導等支援(支援内容、申込フォーム)
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/undou

地域産業保健センター(地域窓口)について

各地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場の事業主や労働者を対象に、健康診断結果の意見聴取、健康相談、長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導、保健指導等の産業保健サービスを無料で行っています。

▼地域産業保健センターについて
https://kagoshimas.johas.go.jp/about/about_category/cat638

<労働者健康安全機構情報>

労働者健康安全機構では、労働災害の発生状況や行政のニーズを踏まえ、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組んでいます。

▼労災疾病等医学研究・開発ページ
https://www.johas.go.jp/kenkyu_kaihatsu/rosaisippei13bunya/tabid/398/Default.aspx
★「脊柱靭帯骨化症」
★「高年齢労働者の転倒災害」
★「妊娠時の食・生活習慣」
★「高血圧性心疾患」
★「脂肪性膵疾患」
★「じん肺」
★「アスベスト」

「病職歴データベースを活用した研究」について

労働者健康安全機構(JOHAS)が運営する労災病院グループでは、全国の労災病院に入院された患者さんにご協力をいただき、それまでの仕事や生活習慣等に関する情報を収集しています。収集した情報は、データベース化して職業と疾病との関連性について研究を行い、その研究成果は就労者の健康の保持増進及び疾病の予防・治療・職場復帰支援に活用しています。今回は「病職歴データベースを活用した研究」についてご紹介します。

VDT(視覚表示端末)作業とは、コンピューターなどのモニターを用いて行う作業を指し、長時間続けると目や身体に負担がかかりやすく、首や肩の痛み、ドライアイ、眼精疲労、視野異常などの眼症状と関連しています。
今般、病職歴データベースを用いて、VDT作業が及ぼす眼への有害影響に関して検討するため、パソコンやスマホなどの画面を見る時間(スクリーン時間)と座りっぱなしの時間(座位時間)と眼疾患の関連性を検討しました。
その結果、スクリーン時間と座位時間の長さが白内障、眼瞼下垂と正の相関を示し、翼状片とは負の相関を示すことが示唆されました。また、原発開放隅角緑内障はスクリーン時間とのみ正の相関を示すことも示唆されました。

▼研究論文は以下のURLからご覧になれます。
論文タイトル:『Association between ocular diseases and screen time and sedentary time derived from job-exposure matrices(Scientific Reports)』(佐野圭先生)
https://www.johas.go.jp/kenkyu_kaihatsu/tabid/1074/Default.aspx

「治療と仕事の両立支援コーディネーターマニュアル」について

▼両立支援コーディネーターマニュアルはこちら
https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/1047/Default.aspx

▼「両立支援コーディネーター基礎研修」について
https://www.johas.go.jp/ryoritsumodel/tabid/2126/Default.aspx

<厚生労働省情報>

化学物質による労働災害防止のための新たな規制について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00005.html

転倒予防・腰痛予防の取組について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111055.html

労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会 第10回資料

https://www.mhlw.go.jp/haishin/u/l?p=d5Sx02fUTXIymz_lY

ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第9回資料

https://www.mhlw.go.jp/haishin/u/l?p=A-DLgDrXkoTj1_uRY

治療と仕事の両立支援指針作成検討会 第2回資料

▼資料_指針案とガイドラインの対照表
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001567994.pdf

改正労働安全衛生法説明会のご案内

厚生労働省では、個人事業者等を含む多様な就業形態における安全衛生対策の一層の推進を図ることを目的として、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」の施行に向け、全国13都市及びオンラインによる説明会を開催します。

説明会は行政職員による、個人事業者等に係る改正項目を中心に改正労働安全衛生法についての説明のほか、企業の安全衛生に関する課題や成功事例の共有を行う座談会を開催予定です。

▼厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei03_00004.html
▼リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/001595513.pdf

<鹿児島労働局情報>

鹿児島県内の労働災害発生状況

◯令和7年発生分(10月末)
https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/jirei_toukei/toukei/saigaitoukei_jirei.html

最新の業種別労働災害発生状況
⇒「令和7年における業種別労働災害発生状況」をクリック

所長コラム

蒼天高く風清涼に山々の錦を愛でるという暇も無く冬が近づいている。師走となれば陋巷の喧噪が一段と増す。地理的環境だけでなく生態的変化も激しい時代となり政治経済状況も変動が激しい。そんな中日本は既に経済大国とは言えない状態になっている。陸地の約七割を山野が占め資源に乏しい日本が再度経済大国となるためには高市首相の言う如く「馬車馬のように働く」しかなく、長時間労働規制緩和という提言もそれなりの妥当性があるように思われる。

確かに作業自体が喜びや自己実現となっていれば長時間労働でも苦にはならない。しかし、現在でも管理監督者だけでなく高度プロフェッショナル者や研究者には月100時間未満という制限は適応されていない。これらの職種は自己裁量権が大きく、状況に応じては長時間規制がむしろ職業性ストレスを増すほうに働くこともある。「働きたい者に対しては長時間規制を外すべき」との考えは一見合理的。しかし低賃金のため残業手当欲しいために生活を維持するために長時間を望むのであれば、それは望んでいるのではなく望まされているのである。

その意味でも最賃が上昇することは望ましいこと。が、その一方で小企業零細企業の倒産・廃業が進むのであればこれも悩ましい問題。生産性向上のためには事業場の業務分析を行い、生産性向上阻害要因となっている作業を極力なくすこと。一事業場での実施には大きな限界もあるが、それでも「智慧」を絞ることが重要。また、各業界全体や社会全体で取り組む発想も不可欠であろう。