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令和8年バックナンバー

「過労死等を防ぎましょう」

鹿児島産業保健総合支援センター 産業保健相談員
  小田原 努
(担当分野:産業医学)

11月は「過労死等防止啓発月間」です。厚生労働省は、過労死等をなくすために、シンポジウムやキャンペーンなどの取り組みを行いました。併せて、10月末に、「令和7年版過労死等防止対策白書」も発行されました。

白書によりますと、過労死と判断される脳・心臓疾患は、令和3年度までは減少傾向でしたが、令和4年度より増加傾向となっています。コロナ後より、労働時間が増えているのが原因でしょうか。実際、労働者の方と話していると、物価高騰もあり、収入を増やそうと、副業を兼ねている方も以前より増えているようです。精神障害による労災保険給付の請求件数はうなぎのぼり(グラフ)で、特に女性が増えているのが最近の傾向です。

業種別では、「医療・福祉」「製造業」「卸売業、小売業」の順で多くなっており、「医療・福祉」の急激な伸びが気になるところです。精神障害の「出来事別」の決定件数では、「対人関係」が他に比べて非常に多く、次いで、仕事の量・質、パワーハラスメントと続きます。「対人関係」の詳細を見ると、「上司とのトラブル」が6割以上を占め、次いで、同僚とのトラブル、顧客や取引先、施設利用者などから著しい迷惑行為を受けたが続いています。上司からのパワーハラスメントですが、現在は意図的にハラスメントを行っている方は少なく、少し感情的な言い回しをハラスメントと取られている方も多いので、早めに周囲の方が上司に注意してあげることが必要です。そのためにも、内部の相談窓口、外部の相談窓口を設置し、気楽に相談できる体制を作ることも大切です。また最近はカスタマーハラスメントも大きな課題となっています。トップがハラスメントには毅然と対応することを宣言し、ハラスメントを受けた場合の体制の構築、また研修などを行うことも重要です。最近は、若い方はchatGPTに相談する方も増えているようですが、職場のストレスは職場でしか解決できません。日頃からコミュケーションを取るためにも、医療機関も上司が部下の思いを聞く、ONE-ON-ONEなどの導入も検討する必要がありそうです。ONE-ON-ONEとは、上司と部下が1対1で行う面談で、業務報告や評価のための面接ではなく、部下の成長支援や信頼関係の構築のために行われるもので、多くの会社が取り入れています。仕事の進め方や課題の相談、モチベーションやメンタル面の状況確認、チームの課題や改善点の共有などが目的で、月に1度程度行われている企業が多いようです。職場を蝕むストレスに早めに気づくためにも、医療機関でも導入の検討はいかがでしょうか。

令和8年1月 第895号 掲載
「産業保健の話題(第293回)」