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令和5年バックナンバー

健康寿命延伸のためには口腔機能が大切です

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
重田 浩樹
(鹿児島県歯科医師会 理事)
(担当分野:産業医学)

≪はじめに≫
口腔機能とは文字通り口腔がつかさどる機能のことで主に哺乳や咀嚼・嚥下、発音を指します。他にも、怒ったり笑ったりという表情の一部を作るコミュニケーションに関連する機能もあります。

口腔機能は生まれつき備わっているものもありますが、その多くは幼児期に周囲を真似たり親から教わりながら学習するものです。3~5歳頃までにしっかりとした嚥下・咀嚼機能を身につけることで、その後の良好な心身の成長が期待されます。また、加齢や全身疾患など様々な要因によって、口腔機能が複合的に低下し、放置しておくと咀嚼機能不全、摂食嚥下障害となって全身的な健康を損ないます。そのため、個々の高齢者の生活環境や全身状態を見据えて口腔機能を適切に管理する必要があります。

こうした流れを受けて平成30年の保険改定では口腔機能の獲得や維持・向上を目的とした「口腔機能発達不全症」「口腔機能低下症」が傷病名として初めて収載され、公的医療保険での対応が可能になりました。図1は人の一生における口腔機能の獲得、維持、低下をグラフで表した口腔機能発達不全症と口腔機能低下症のイメージ図です。口腔機能は20歳前後でピークを迎え、その後加齢とともに低下していきますが、高齢期においては、摂食・嚥下等口腔機能が低下しやすく、これを防ぐためには、特に、乳幼児期から学齢期にかけて、良好な口腔・顎・顔面の成長発育及び適切な口腔機能を獲得し、成人期・高齢期にかけて口腔機能の維持・向上を図っていくことが重要です。

≪口腔機能発達不全症の歯科的な対応≫
口腔機能発達不全症とは子どもたちの「食べる機能」「話す機能」「呼吸する機能」が十分に発達していないか、正常に機能獲得できていない状態を指します。よって、歯科医院では各項目に対して診察を行い、管理計画を立てます。その対応法は主に運動訓練であり、具体的には口唇閉鎖力を強化する運動訓練やガムを利用した咀嚼機能の運動訓練、歯列を取り囲む口腔周囲筋の機能を改善する運動訓練などを行い、正常な機能獲得のための指導を実施します。

≪口腔機能低下症の歯科的な対応≫
口腔機能低下症とは口腔内の微生物の増加、口腔乾燥、咬合力の低下、舌や口唇の運動機能の低下、舌の筋力低下、咀嚼や嚥下機能の低下など複数の口腔機能が低下している状態を指します。よって、歯科医院では各項目に対して診察を行い、管理計画を立てます。

  1. ) 口腔乾燥に対して
    口腔乾燥により、口腔衛生状態の悪化や食塊形成が困難になるなどの問題が発生します。口腔体操や唾液腺マッサージ、口腔保湿剤の使用などによる管理を行います。
  2. )咬合力の低下に対して
    咬合力の低下が、栄養摂取バランスの低下や、ひいては全身の筋力低下につながることを理解してもらい、咬合力の維持・改善のために咀嚼筋訓練などの指導を行います。
  3. )口唇や舌の機能低下に対して
    口唇や舌の機能低下によって、発音構音障害を生じることがあります。高齢者の発音障害は、単にコミュニケーションの問題にとどまらず、友人と会うのを嫌がったり、外出を避けたりするようになり、社会性の低下などを引き起こします。これらの場合、口唇閉鎖力や舌圧の向上のための筋力増強訓練の指導を行います。

≪おわりに≫
口腔機能が全身の健康につながり、健康長寿に寄与することは明らかであり、口腔機能の獲得や維持・向上が重要になってきます。よって、活舌が悪い、むせる、食べこぼすなどといったお口の事で何か気になることがありましたら、かかりつけ歯科医院に相談してください。

鹿児島労基 令和5年11月号掲載

口腔機能低下症

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
松下 幸誠
(担当分野:産業医学)

口やあごの働きのことを口腔機能(こうくうきのう)といいます。主に、食べる、味を感じる、飲みこむ、唾を出す、異物毒物からの防御の働きなどの生命を守る基本的な働きから、しゃべる、唄う、表情をつくるなどのコミュニケーションの働きまで多くの機能があります。口腔機能低下は、高齢化社会においてますます重要な課題となっています。この口腔機能の低下(オーラルフレイル)は、老化現象として中年期以降の早期から現れ始める場合もあります。口腔機能の低下は全身的虚弱(フレイル)の前兆現象として位置付けられ、口腔機能の低下をいかに防ぐかは健康寿命延伸に欠かせない重要な要素です。

口腔機能低下の初期症状としては、以下が挙げられます。

1.そしゃく困難
食物をかむことがおっくうになり、好みが軟食傾向になります。そのため、糖質過多、タンパク質不足など栄養に偏りが出て、肥満や糖尿病、筋力の衰えにつながります。

2.えん下困難
毎食の食物やだ液を飲み込むときに困難を感じることがあり、飲み込む動作が遅くなったりむせたりします。これは、いずれ誤えん性肺炎や気道異物による呼吸困難を引き起こします。

3.口の中の渇き
だ液の量が減少し、口の中が渇いた感じがすることがあります。だ液は、だ液腺の老化や病気、水分補給不足など様々な要因で分泌が少なくなりますが、食事の時によく噛むことでそしゃくの筋肉に囲まれただ液腺がポンプのようにおされて分泌量やその機能まで活発になります。口が渇くと、食べ物をスムーズにそしゃくできなかったり、のみこめなかったりします。また、口内炎が多発したり、カンジダ菌が増殖したり、口臭の原因にもなります。

4.発音、発語の不明瞭
言葉の発音が不明瞭になることがあります。舌や口、あごの筋肉の動きが悪くなるためです。いわゆる滑舌の悪さはコミュニケーション障害に繋がり、社会からの隔絶に繋がります。

5.口臭
口腔の働きは、口腔内の自浄作用も担っており、自浄作用の低下で口臭が発生することがあります。これも良好なコミュニケーションの障害の要因となり、社会からの隔絶に繋がります。

6.顎関節、そしゃく筋の違和感、痛み
口腔機能をつかさどる、あごの関節や筋肉に運動障害や痛みが生じることがあります。口を開け閉めする際に違和感を感じることもあります。

7.歯肉の腫れや出血、歯の痛み
1~6までの総合的な要因と、生活習慣の乱れから口腔内清掃の低下がおきますと、歯周病や虫歯が発生します。これらの進行によって、さらに口腔機能の低下は進行することになり、社会活動も低下します。

以上、早期の段階でこれらの症状に気づき、適切な対策や治療を行うことで、口腔機能低下を進行させるリスクを軽減することができます。定期的な口腔健康チェックや適切な口腔ケア、栄養バランスの良い食事などが口腔機能の維持に役立ちます。また、健康保険診療では50歳以上では、「口腔機能低下症」として治療対象となっていますので、上記のような症状があれば早急にかかりつけ歯科医にご相談ください。

口腔機能の低下の予防は、全身的虚弱や寝たきりの予防、健康寿命の延伸へと繋がります。これは、「メタボリックドミノ」と称され、非感染性の病気の全てが上流の口の問題から始まることが科学的に認識され始めています。昨今の医療費削減政策も相まって国や関係機関あげての取り組みが今後一層進められていくようです。昔からある格言「病は口から」が再評価される時代になりました。

鹿児島労基 令和5年9月号掲載

働き盛りのがん、増えています

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
谷 
(担当分野:産業医学)

=がんになる生涯リスクは男性65%女性50%、約30%は働き盛り世代=

がんは死亡原因の第1位です。令和元年の統計では、がんになる人は年間約100万人、がんによる死亡者は年間約38万人、継続的にがん治療を受けている人は全国で178万人もいます。一生のうちがんになるリスクは増え続け、女性50%,男性65%にもなっています。

就労しながら、がん治療をする方が増えていることの背景に、女性の社会進出があります。50歳代までの世代では、男性に比べ女性のがん罹患率が高く、30歳代の女性のがんの罹患率は、男性の約3倍です。これは30歳代から40歳代が罹患のピークである子宮がん、40歳代後半に最初の罹患のピークがある乳がんが影響しています。50歳代からは男性のがん罹患率が急増し、定年延長に伴い、さらに働く方のがんが増えています。

○科学的根拠に基づくがん検診を受けていますか?

がんの約30%は、20歳から64歳(20歳から69歳までなら約42%)の働き盛りで発症するため、仕事を持ちながら通院している方々が増え続けています。しかし、がんと診断を受けたことで退職・廃業した人はそのうち約20%もいます。このような状況の中、企業側にも長く安心して働き続けられるようにがん対策を行うことが法律で定められました。(2016年がん対策基本法改正)具体的には企業側が取り組めるがん対策として3つ
① がん検診の受診を啓発すること
② がんについて会社全体で正しく知ること
③ がんになっても働き続けられる環境を作ること

などがあげられます。企業側もがん対策に積極的に取り組むことで大切な人財を守ることができるのです。

今後、仕事と両立しながら治療を行うために早期発見し、体の負担にならない早期治療につなげることが大切です。早期発見につなげるには症状のないうちに科学的根拠に基づいたがん検診を定期的に受けることが重要です。国が明らかながん死亡率の減少を検証し推奨しているがん検診は、肺がん・胃がん・大腸がん・乳がん・子宮がんの5つのがん検診です。しかし日本のがん検診の受診率はOECD(経済協力機構)加盟国の中でも最低レベルです。

まずは、市町村で実施されるがん検診(市町村からの助成が入り安価で受診できます)を受診できる機会や環境を作ってください。大切なご家族の方々も一緒に受けてみてはどうでしょう。企業でがん検診を積極的に取り入れる所も増えてきています。鹿児島の企業の中には、労働安全衛生法に基づく定期健診と同様にがん検診を実施し、がんが発見された方々全員が現場復帰された所もあります。その取組みの実績が認められ、国から表彰されました。

がん検診を受診できる機会や環境づくりと並行して、がんになっても働ける社会づくりが大切です。

○まずは生活習慣の見直しから

禁  
たばこを吸うとがんリスクが1.5倍になります。
感染対策
B型肝炎、C型肝炎、ヘリコバクター・ピロリ菌、ヒトパピローマウイルス等がんの発生に結び付く可能性のある病原体の感染対策が大切です。
  
節度ある量で(純アルコール量23gまで)食道がん・大腸がんと強い関連があります。
体  
BMIを適正範囲に保ちましょう。肥満はがんだけでなく全ての生活習慣病の死亡リスクが高くなります。
運  
身体活動は大腸がん 乳がんリスクを低下させます
バランスの良い食事
塩分は胃がん発生リスクと、野菜摂取不足は各がん発生リスクと関連があります。

鹿児島労基 令和5年7月号掲載

難聴について

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
小田原
(担当分野:産業医学)

年を取ると、耳が遠くなったと感じる方が多いと思います。いわゆる加齢性難聴ですが、早い方は50歳代から、高い音が聞こえにくくなってきます。60歳前半ですと、5人から10人に1人、60歳代後半になると3人に1人、後期高齢者である75歳以上になると7割以上の方が加齢性難聴であるとするデータもあります。加齢性難聴になると、会話中しばしば聞き返す、テレビ、ラジオの音が大きいと言われる、銀行、病院などで名前を聞き逃す、目の前の電話の着信音が聞き取れない等の症状がでてきます。特に災害時の警報が聞こえなかったりすると命の危険がありますので、注意が必要です。また認知症となるリスクも高くなると言われますので、予防や対策が必要です。

そもそも、どうやって音を聞いているのでしょうか。外から入った音は蝸牛と言われるカタツムリの殻のような渦巻き状の管に伝わり、有毛細胞という細胞で音の振動をキャッチして脳へ伝えています。そもそも耳には癌が発生することは少ないように、細胞の再生が少ない臓器です。この有毛細胞が壊れると元に戻ることはないので、難聴となります。よく騒音職場で、以前はうるさいと感じていた音が、うるさくなくなったと言われる方がいますが、これは騒音に慣れたのではなく、難聴となってしまった可能性が高いです。

加齢性難聴の悪化の要因として、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や、喫煙、飲酒等があります。そして騒音も大きな要因です。事業所の健診結果に目を通していますが、意外と難聴の割合が高い事業所が多いのが気になります。定期健康診断の有所見率は高音域で全国平均は8%前後ですが、10%を超える事業所も多いです。中には30%を超える事業所もあり、騒音職場のある事業所ではしっかりとした対策が必要です。

現在、騒音障害防止のためのガイドラインが見直されています。およそ30年ぶりの見直しとなっていますが、屋外の騒音現場では、騒音の個人ばく露測定を推奨したり、健康診断では、前回までの健診で有所見の方は、最初から詳しい検査を行う等、時代に合わせたガイドラインとなっています。

騒音職場での健康診断は、85dB以上の騒音が発生している機械の傍で働いている方や、器具を扱っている方が対象になります。85dBというと、大きな声で話さないと聞こえないレベルで、パチンコ店で当たりが多い機械の近くのイメージだと思います。こういう騒音職場では、遮蔽等の騒音対策も必要ですが、耳栓の着用も必要です。耳栓は着用のコツがあり、右側の耳に耳栓をはめるときは、左手を頭上に回し、耳の上を引っ張り上げて、耳道をまっすぐにして、耳栓をはめる必要があります。きちんとフィットするように注意してください。

騒音職場がある事業所の方は、ぜひガイドラインにも目を通し、騒音対策を行うようにお願いします。

鹿児島労基 令和5年5月号掲載

労働安全衛生法の改正によって設けられる新たな職務

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
東 正樹
(株式会社鹿児島環境測定分析センター 代表取締役)
(担当分野:労働衛生工学)

1.はじめに

労働安全衛生法の一部が改正され、これまでの個別の物質規制から、有害な化学物質に幅広く網を掛け、リスクアセスメントを基にした事業場による自律的な管理を促す制度へ大きく転換することになります。この制度改正に伴って化学物質の管理等を行う新たなポストが規定されたので紹介します。なお、厚生労働省検討会(職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会)で議論となり、法改正の内容が明らかになる前に懸念されていた特別則(粉じん則、特化則や有機則等)の廃止は今回行われませんのでご承知置きください。

2.化学物質管理者と保護具着用管理責任者【2024年(令和6年)4月1日施行】

リスクアセスメントによる自律的な管理を進めるにあたり、事業場には「化学物質管理者」と「保護具着用管理責任者」の選任が義務化されます。

化学物質管理者とは、リスクアセメント対象物を製造、取扱いまたは譲渡提供をする事業場において化学物質の管理に関わる業務(主にリスクアセスメント関連業務)を実施する者で、業種や規模に関わらず選任義務があります。この化学物質管理者は、リスクアセスメントに関する知識が必要であるため、リスクアセスメント対象物を製造していない事業場(取扱いや譲渡提供のみ)でも専門的講習の受講が推奨されています。(リスクアセスメント対象物質製造事業場では受講が必須)

保護具着用管理責任者とは、有効な保護具の選択、労働者の使用状況の管理その他保護具の管理に関わる業務を実施する者で、リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場で選任義務が生じます。

なお、これまで選任されてきた衛生管理者や作業主任者とは業務の範囲が異なりますが、適切に行える範囲であればこれらの職務と兼任することは差し支えありません。

3.化学物質管理専門家【2024年(令和6年)4月1日施行】

労働災害の発生またはそのおそれがあるとして労働基準監督署長から改善を指示された事業者は、「化学物質管理専門家」から助言を受け、改善計画の作成・報告・改善措置の実施を行わなければなりません。化学物質管理専門家には資格要件があるので詳細は告示を参照してください。

図 1 化学物質管理専門家の職務

4.作業環境管理専門家【2024年(令和6年)4月1日施行】

作業環境測定の評価結果が第3管理区分に区分されると、必要な改善措置を講じ改めて作業環境測定を行って評価しますが、それでも改善できずに第3管理区分となった場合、作業環境の改善の可否と改善方策について、外部の「作業環境管理専門家」の意見を聴かなければなりません。

なお、作業環境管理専門家が改善は困難と判断した場合や改善を行っても第3管理区分である場合は、労働者への保護具の着用等の措置を行った上で、所轄労働基準監督署へ第三管理区分措置状況届の提出が必要です。提出を怠った場合には罰則がかかるので注意してください。また、作業環境管理専門家の資格要件は通達を参照してください。

図2 作業環境管理専門家の職務

5.おわりに

今回の法改正は、事業者の自律的な管理への転換を図ろうとするものですが、事業場にとってはこれまでより管理すべきものが増えるため負担が増加します。したがって、事業場が円滑に自律的な管理へ移行するためには、今回紹介した新しい職務を担う方をどれだけ育成できるかに掛かっていると言っても過言ではないと思います。事業場の経営層及び産業保健スタッフの方は、今回の法改正に対応した体制を整えて施行日を迎えられるよう、必要な準備を進めてください。

鹿児島労基 令和5年3月号掲載

健康づくりのための睡眠について

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
前田 雅人
(担当分野:産業医学)

ヒトはどの程度睡眠をとればよいのでしょうか。成人の睡眠時間について「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省健康局)では、6時間以上8時間未満が標準的と述べています。また加齢に伴い睡眠時間は徐々に減少し、25歳で約7時間、45歳では約6.5時間、65歳になると約6時間と、20年ごとに30分ぐらいの割合で減っていくそうです。ただし個人差があり、自分の睡眠時間が足りているかどうかを知るためには、日中の眠気の程度に注意すると良いようです。睡眠時間が短いと日中の眠気が注意散漫をまねき事故につながることは過去の数々の事例から明らかですし、一方、長く睡眠を取ったからといって、健康になるわけではなく、却って生活のリズムを崩すことになります。睡眠不足だからといって「寝だめ」することは勧めません。

「健康づくりのための睡眠指針2014」では以下の睡眠12箇条を示しています。大切なポイントも追記していますので、ぜひ参考にされてください。

  1. 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
  2. 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
    この項のなかで、①適度な運動の習慣づけは、入眠促進、中途覚醒の減少につながること、②朝食は朝の目覚めを促すこと、③就寝前にリラックスすることが大切であること、を述べている一方で、控えたほうが良いこととして、①就寝直前の激しい運動や夜食の摂取、②就寝前の飲酒(睡眠薬代わりに寝酒を飲む習慣を持っている人は飲酒量が増えていきやすい、またアルコールは入眠を一時的に促進するが、中途覚醒が増えて、熟睡感が得られない)、③就寝前の喫煙、④就寝前3~4時間以内のカフェイン摂取(コーヒー、緑茶、紅茶、ココア、栄養・健康ドリンク剤などは入眠を妨げ、睡眠を浅くする可能性や利尿作用があり、夜中に尿意で目が覚める原因になる)、などを挙げています。
  3. 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
  4. 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
  5. 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
    睡眠不足で日中が眠たい場合には、眠気対策として午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝をすることが、作業能率の改善に効果的であると述べています。
  6. 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
    例えば、寝室や寝床の中の温度が低過ぎると手足の血管が収縮して、体温を保とうとしますし、逆に温度や湿度が高いと発汗による体温調節がうまくいかずに、皮膚から熱が逃げていかなくなるので、結果的に、身体内部の温度が効率的に下がっていかず、寝つきが悪くなるようです。心地よいと感じられる程度の温度や湿度の調整が大切です。
  7. 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
  8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
  9. 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
  10. 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
    眠たくないのに無理に眠ろうとすると、かえって緊張を高め、眠りへの移行を妨げるので、自分にあった方法で心身ともにリラックスして、眠たくなってから寝床に就くようにすることが重要とのことです。
  11. いつもと違う睡眠には、要注意。
  12. 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
    睡眠障害の中には、①睡眠時無呼吸症候群(睡眠中の激しいいびきなど)、②レストレスレッグス症候群(就寝時の足のむずむず感や熱感など)、③周期性四肢運動障害(睡眠中の手足のぴくつきなど)、④うつ病(寝つきが悪く、早朝に目が覚める、熟睡感がないなど)、などの病気が隠れている場合があるので早めに医師等に相談することが大切です。

鹿児島労基 令和5年1月号掲載