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20年 バックナンバー

高血圧症と治療について

基幹相談員  前田 雅人
(担当分野:産業医学)

  私は内科医として勤務しており、今回は多くの患者さんにみられる高血圧症と治療についての話題を提供したいと思います。
  さて血圧の単位はmmHgにて表しますが、この理由を御存知でしょうか。Hgは水銀のことを意味し、水銀血圧計ではガラス管の水銀柱が何㎜上がるかを測定しています。水銀は水の約13.5倍の重量があるので、もし水銀柱の水銀を水で置き換えたとすると、100mmHgなら水が1350㎜上がる圧力と言えます。さらに血圧が200mmHgであれば、水なら2700㎜も上がるほどの圧力がかかっていることを意味します。
  そもそも血液は閉鎖された循環回路をめぐっており、心臓から拍出された血液は動脈を流れ、毛細血管、静脈を通り、最終的には心臓に戻ってきます。この閉鎖回路の中で動脈圧が異常に高くなれば、当然、毛細血管に多大な負荷がかかり、特に毛細血管が発達している脳、眼、心臓、腎臓などへの影響は大きなものとなります。

  一般に正常血圧とは130/85mmHg以下のことを言い、高血圧は最高血圧が140mmHg以上もしくは最低血圧が90mmHg以上の時に診断されますが、診察時に緊張のため高血圧症と判定される人も多いようです。従って自宅にて血圧を定時に測ることが望ましく、私は患者さんに対して、朝起きて排尿後にゆっくりした状況で血圧を測定することを勧めています。高血圧症は症状が乏しいことから、サイレントキラー(静かなる殺人者)と言われています。早期に発見し、治療するために、日頃から自分の血圧を知っておくことが大切です。

  さて軽症~中等症の高血圧治療では、まず塩分制限とウォーキングといった有酸素運動の指導を行います。塩分の過剰摂取は循環血液量の増加をまねき、高血圧となるので、一日7gの減塩を目指します。この結果、最高血圧は約4mmHg、最低血圧は2mmHg低下すると報告されています。
  また軽めの運動を毎日30分または1日おきに1時間行うことで、最高血圧は10~20mmHg、最低血圧は5~10mmHg低下すると報告されています。皆さんが期待したほどの血圧低下ではないかもしれませんが、減塩と運動療法に取り組むことで心臓病や脳疾患など重篤な合併症の発症率を少しでも低下させ、さらにその効果は血圧だけではなく、身体の健康度を高めてくれます。

  しかし重症の高血圧症では薬物治療を開始しなければなりません。患者さんの中には薬を始めることに悲観される、,一生のみ続けなければならないのかと言われる方がおられるのですが、うまく薬を利用して、より重症な病気にならないようにすると考えると苦にならないと思います。患者さんの中には職場のストレスが原因で高血圧となっている方がおられます。このような場合,一時期は薬を用い、その間にストレスを軽くするような処置を行うことで、薬の量が減ったり,中止できたりすることがあります。

  食欲の秋、飲み会も多くなる時期です。職場健診にて高血圧を指摘された方は放置せずに、産業医もしくはかかりつけ医に相談し、自己の健康管理に努めてください。

 


鹿児島労基 平成20年12月号掲載

 

 

障害スポーツと競技スポーツ

基幹相談員  長友 医継
(担当分野:メンタルヘルス)

  スポーツは、ストレス解消に効果があるのはもとより、運動療法という言葉があるくらいですから、メタボリック・シンドロームを始めとする生活習慣病関連疾患にも有効であることは言うまでもありません。
   スポーツは、大きく生涯スポーツと競技スポーツに分けることができます。長寿科学振興財団によると、生活の中に取り入れて生涯を通じて楽しむスポーツが生涯スポーツです。一人ひとりのライフスタイルや年齢、体力、運動技能、興味等に応じて、生涯にわたりいろいろな形でスポーツと関わりを持ち、スポーツの持つ多くの意義と役割を暮らしの中に取り入れることであり、「生涯を通じていつでも、どこでも、だれでもスポーツに親しむ」ことをいいます。
  日本人がスポーツを行う主な理由は以下のようなものです。

  1. 健康・体力づくりのため(55.2%)
  2. 楽しみ・気晴らしとして(54.5%)
  3. 運動不足を感じるから(40.9%)
  4. 友人や仲間との交流として(33.8%)

  (体力・スポーツに関する世論調査、内閣府、平成15年度)
  また、実際に行っている運動・スポーツの主な種類は「ウォーキング」、「体操」、「ボウリング」、「軽い球技」、「ゴルフ」ですので、現代の日本人は生涯スポーツに慣れ親しんでいることが示唆されます。

  一方、競技スポーツは、記録の向上を目指すものであり、プロ野球、大相撲、プロサッカーなどのプロスポーツや本年北京で開催されるオリンピック競技などが代表的なものです。これらのスポーツには、鍛錬が不可欠であり、時には、健康を害する危険性もあります。ですから、「スポーツに親しむ」こととは相容れないように感じられ、特に中高年には敬遠されがちです。

  ところで、ストレスとは、我々がストレス刺激にさらされ生体の恒常性を乱されること、およびその乱れを回復し、抵抗性を獲得しようとすることの両者を含んだ状態を指します。無論、ストレスレベルが高すぎるのは生体にダメージを与えますが、低すぎるのも生産性があがらず、決して良いものとはいえません。「適度なストレス」状態が、プレッシャーへの抵抗力、記憶力や集中力などが向上するとともに、生産性もあがりますので、日常生活上好ましいものです。
  この「ストレス」という観点からスポーツを検証してみますと、生涯スポーツは生産性のあがらない低いストレスレベルと捉えることができます。一方、競技スポーツは、勝ち負けにこだわり過ぎる嫌いがありますが、そのあたりをうまく調整すれば、「適度なストレス」になり得ます。私は、学生時代から50歳代の現在まで競技スポーツとしてのソフトテニスに親しんでいます。途中、仕事の都合で中断したり、練習もままならない時期もありましたが、連盟主催の公式戦での勝利は、得も言われぬ満足感を与えてくれます。

  本年10月25日より28日まで、鹿児島県で開催される全国健康福祉祭(愛称:ねんりんピック)は、60歳以上の方々を中心としたスポーツ、文化、健康と福祉の総合的な祭典です。「ねんりんピック」の目的は、健康づくりや生きがいづくりですが、実際に参加される方々は、日頃から「競技スポーツ」に参加されている方が多いようです。実際、私が加盟しているソフトテニスでは、本祭典に参加するための県の予選大会にかなりの人数の高齢者が参加されました。そして、本祭典に選抜された方々は、技術、体力、気力とも私より遥かに優れた方ばかりです。
  競技スポーツは、他人との付き合いが深くなり、信頼関係も増す一方、勝ち負けに拘るがゆえに、裏切り、ねたみなどが発生する危険性があります。この点に注意を払う必要はありますが、競技スポーツは、生活上のアクセントとなり人生に豊かさをもたらす「適度なストレス」であると再評価されてもいいのではないかと思っています。

 


鹿児島労基 平成20年11月号掲載

 

 

強迫性障害

基幹相談員 福迫 博
(担当分野:メンタルヘルス)

  強迫性障害は、職場におけるメンタルヘルスを考える上で、自殺と直結する「うつ病」ほどのインパクトはないが、この障害のために職業に就けない~転職せざるを得ないなどの結果に至る人もおり、軽視してはならないものと考えられる。
  また、うつ病にも増して、自らは症状を訴えにくく、軽症のうちは症状があっても周囲に気づかれないように隠している人も多いので注意が必要である。

  強迫性障害とは、自分でも止めたい、意味がないとわかっていながらも、ある考えがいつまでも頭から離れない、ある行動を繰り返さないと気がすまないといった症状を呈する障害を指している。強迫性障害の症状としては、強迫観念と強迫行為があり、両方の症状が共存することが多いが、強迫観念だけの場合もある。
  強迫観念とは、ある特定の考えやイメージが、何度も繰り返し頭に浮かんでくることをさしている。中には、特定のものでなく、雑念と表現されることもある。
  強迫行為とは、強迫観念を打ち消すために繰り返される行為のことであり,自分の意志に反して行っている場合が多い。

  具体的な症状としては、

  1. トイレに行った後や汚い(と考える)物に触れた後、必要以上に何回も手を洗ったり衣服を洗濯したりする
  2. 外出時にドアの鍵を閉め忘れていないか、ガスの元栓をしっかり締めたか、何度も戻って確認する
  3. 棚にある本や書類の数を何度も数える
  4. 4や9などの特定の数字に関連して、不吉な考えが浮かび、不安に襲われる
  5. 尖った物で自分や他人を傷つけてしまいそうな気がして、ナイフ、ハサミ、机の角などに近づけなかったり、ジーっと何時までも見つめる
  6. 車やバイクで人を轢いたのではないかと戻って確認するなどの症状があり、日常生活や社会生活に支障が出てくる場合には強迫性障害と診断して治療するのが望ましいと考えられる。確認行為などを周囲の人にも強要する患者もいる。

  強迫性障害の発症機序については、明確にされていないが、脳内の神経回路網の機能的障害によって引き起こされるという説が有力である。薬物療法や行動療法によって症状が緩和されると、大脳基底核という部位の上昇していた血流や糖代謝が正常化するなどの報告がなされている。薬物療法的観点からは、神経伝達物質のセロトニンが症状の形成・維持に関与していると考えられている。

  治療については、薬物療法と行動療法が有効であるが、一旦症状が消失しても再発することがある。私が大学病院に勤務した頃は、抗不安薬や抗うつ薬(クロミプラミン;セロトニンに対する作用が比較的強い)が使用されていたが、後者は副作用が出現して服薬を断念せざるをえないことも多かった。現在は、第4世代の抗うつ薬に分類されるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が治療の主役になっている。
  国内では、フルボキサミン(デプロメール,ルボックス)とパロキセチンが治療薬として認可されている。確かに、効果もあるし、副作用も少ないのが実感である。難治例に対しては抗精神病薬を使用することもある。行動療法としては,暴露反応妨害法が効果的である。
  この治療は、患者さんを意図的に強い不安や恐怖に直面させて、それを解消するために行われる強迫行為を行わせないようにすることで、悪循環を断つことを意図して行われる。薬物療法と併用し、不安の階層表を作成して、段階的に暴露する方法が受け入れられやすいと考えられる。
  最近は、強迫スペクトラム障害という概念も提唱され、摂食障害やギャンブル依存などと共通する部分があると考えられている。このような考え方をすると、メンタルへルスを論じる上でも対象が広がり、重要性が増してくる。

 


鹿児島労基 平成20年7月号掲載

 

 

リスクアセスメントと災害防止

基幹相談員  黒沢 郁夫
(担当分野:労働衛生工学)

  生産活動をしている中で労働災害が発生した事業所がある反面、無災害が継続している事業所も多数あります。災害が発生していない事業所で聞くことですが、「わが社は過去に労働災害が発生していないので、特に災害防止の取り組みはしていない。」といわれます。
  確かに災害がないのはよいことですが、生産活動の中には危険要因は多くありますので、たまたま、今日まで無災害であったと捉えるのが、現実的ではないでしょうか。やはり無災害活動に取り組んでその結果として災害が発生しないのが「あるべき姿」と捉えています。

 すでに、多くの事業所で災害防止活動を取り組んでおられますが、活動の一環として、公表されているリスクアセスメントの取り組みを是非お願いしたいと思います。
  平成18年4月に労働安全衛生法が改正され、リスクアセスメントの取り組みが努力義務として明文化されました。同時に「危険性又は有害性等の調査に関する指針」が公表されました。これは職場に潜む危険有害要因を災害が発生する前に抽出してリスクを評価し順次対策を講じるもので、先取りの安全活動そのものです。労働災害の減少が低迷している中で取られた切り札の一つでもあります。

  具体的な順序は次の通りです。

  1. 危険要因の調査
  2. 危険性・有害性の特定 機械・設備、原材料、作業行動や環境などについて危険性又は有害性を特定する。
  3. リスクの見積もり(リスクの大きさ) リスクとは、危険性又は有害性によるけがや健康障害の発生の可能性の度合いとそれが発生したときの危害の重篤度を組み合わせて考えたものを言う。言い換えれば、危険性又は有害性が作業者に及ぼす脅威度ともいえます。
  4. リスク低減の優先度設定
  5. リスク低減措置の実施  基本的に次の順序で検討
    1. 危険有害な作業の廃止、変更
    2. インターロック等の工学的対策
    3. マニュアルの整備等の管理的対策
    4. 個人保護具の使用
  6. 合理的に実現可能な程度にリスクが低くなったか確認
  7. 記録

リスクアセスメントの効果は次の通りです。

  • 職場のリスクが明確になり、職場全体で共有できる。
  • 安全対策について、合理的な方法で優先順位を決めることができる。
  • 残留リスクについて「守るべきこと」の理由が明確になる
  • 全員参加で安全に対する感受性が高まる。

等の効果が期待できます。

  この取り組みの中で特に重要なのは危険性・有害性の特定です。職場に潜む危険の芽を見つけるには、作業行動等を細かく調査することで、日頃見えないものが見えてきますし、聞こえない音が聞こえてきます。そのためには安全に対する強い意志が要求されます。
  又、危険源の特定は、作業者の参加が不可欠です。作業者自身も、ある程度は危ないと分かっていても、「これぐらいは大丈夫だろう」という馴れもあって作業を続けている場合が見受けられます。

  本来、危険源の調査には、作業者の一日の作業を通して危険がないか、調査すべきですが、現実的に困難ですので、手まね、物まねで実際の現場でやってみると、リスクの調査がより確かなものになります。試してみて下さい。 リスク調査の主体は現場に精通している責任者が望ましい姿です。危険の芽を見逃さない鋭い感性が要求されます。自分の職場を無災害の継続にするため、更なる努力に期待したいものです。

  リスクアセスメントの取り組みはまず、事業者トップの理解と強力な指導力が不可欠です。リスクアセスメントに対するトップの方針を明確にして、従業員全員に周知することからスタートになります。是非スタートをきって頂くとともに、すでに実施中の事業所はレベルアップをお願いします。
  最後にリスクアセスメントの取り組みは、生産活動に大きく寄与するものと信じています。

 


鹿児島労基 平成20年5月号掲載

 

 

「生きる意味」を求めて

基幹相談員  久留 一郎
(担当分野:カウンセリング)

  精神的に挫折し苦悩する人間は、多かれ少なかれ「生きる意味」の喪失的状況にあることが臨床的に知られている。彼らの多くは、不まじめで、不誠実さのために、不適応人間になっているのではなく、むしろ、極めてまじめで、誠実な人間であり、会社にとっては適応的人間といわれている。

  換言すれば、「会社人間としては適応的人間」であり、「一人の人間(個人)としては精神的に挫折し苦悩する存在」ともいえる。つまり、「社会的には適応的であり、個人的(情緒的)には不適応的である」という人間が増えつつある。一人の統合した人間であるべきなのに、どちらが「真実なる人間(現実の自分)」なのか、または「仮面をかぶった人間(理想の自分)」なのか理解しがたい現象がおきている。

  過剰適応といわれる会社人間は、バーン・アウト(燃えつき)症侯群に陥りやすいという。会社という「枠組み」の中で行動している時は、厳しいノルマに忠実であり、過激な競争社会に打ち勝つために生きている。ところが、心身ともにエネルギーを消耗し、疲弊すると、彼らの「生きる意味」は喪失的になり、うつ的、神経症的人間に変容することがある。過剰適応的に会社に忠誠をつくしていたとき、自己を見失った「会社依存症の人間」として説明することもできる。

  人間は、時・空間的に「有限の世界」に存在している。時間的には、約80年のライフ・サイクルが考えられる。さまざまな空間(環境)に生きながら、人生80年をいかに生きるかは、当の本人の問題である。「いかに生きるか」によって、豊かな人生もあろうし、何のために生きてきたのかわからない人生もあろう。ただ一回限りにおいて、この宇宙に存在し得た自分の生命と人生を、ただ生物の種のように生きるか(自己喪失的、意味喪失的生き方)、自己実現的人間として「自分らしく」生きるか(自己確立的、意味志向的生き方)は、極めて重要であり、一人ひとりの人間の責任であると、「死に急ぐ人々へ」問いかけたいのである。
  「自己を見失ない、死に急ぐ人」たちは、真っ暗闇の中で、光(生きる意味)を求めて、彷徨い、もがいているともいえる。実は、そのような彼らこそ、だれよりも「よりよく生きたい」という人間であり、真剣に「苦悩と対峙」している実存的(自己実現的)人間に思えるのである。

引用文献

久留一郎 著 「発達心理臨床学~病み、悩み、障害をもつ人間への臨床援助的接近~」 2003 北大路書房

 


鹿児島労基 平成20年3月号掲載

 

特定健診・特定保健指導について

基幹相談員  瀬戸山 史郎
(担当分野:産業医学)

  我が国の死因の第2位、3位をしめる心筋梗塞、脳卒中やその基礎疾患である糖尿病、高脂血症(今回より日本動脈硬化学会により脂質異常に改められました)高血圧等 は年々、増加傾向にあり、医療費適正化の観点からも生活習慣病対策は今回の医療制度改革の柱となっており、その対策の一丁目一番地に位置づけられているのが心血管病予防対策として平成20年度4月からスタートする40~74歳までの医療保険被保険者・被扶養者を対象に内臓脂肪に着目したメタボリックシンドローム(MS)の有病者・予備群を抽出、保健指導を行うことを医療保険者に義務づけた特定健診・特定保健指導です。

  特定健診・特定保健指導は医療費適正化計画(5ケ年計画)ともリンクしており、中長期目標に5年間で糖尿病等の生活習慣病有病者・予備群の25%削減することを設定し、医療保険者に目標達成度に応じて平成20年度からスタートする後期高齢者医療制度への支援金を加算・減算するというペナルテイも設けているのが特徴です。
  尚、これまで職域で実施されてきた労働安全法に基づく健診は特定健診に優先するのでこれまで通り事業者は行う義務があること、保健指導に関しては特定保健指導が優先する事も決まっております。

  MSとはこれまで心筋梗塞、脳卒中などの心血管病ををおこしやすい病態として、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、シンドロームX、内臓脂肪症候群といわれてきた疾患群をWHOがMSと呼称を統一したもので、内臓に脂肪が蓄積するとインスリン抵抗性が生じ、その結果、動脈硬化の危険因子とされる高血糖、脂質異常、高血圧がひきおこされ、その一つ一つは軽症でも、心筋梗塞、脳卒中等の心血管病のリスクが5~6倍になる事から提唱された病態です。
  MSを生活習慣病対策の標的とした理由は内臓脂肪を氷山、高血糖、脂質異常、高血圧を氷山の上に立つ3つの山に見立てると、個々のくすりで一つの山だけ削っても他の山(疾患)は改善されないが、運動、食事などの生活習慣の改善で、内臓脂肪を減らすつまり水面下に沈めてしまうと他の疾患も一緒に水面下に消えてしまうという考え方に立つています。特定保健指導の対象者の選定と階層化の手順について図に示します。MS有病者には積極的支援、MS予備群には動機づけ支援、内臓脂肪型肥満のみの人には情報提供を行うといったリスク数に応じて階層化された保健指導を行います。対象者自身が個々の生活習慣を振り返り、生活習慣を改善することを自ら決定し、行動計画を作り、行動変容ができるように支援しようとするものです。

 


鹿児島労基 平成20年1月号掲載