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26年 バックナンバー

平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」について

産業保健相談員 前田 雅人
(担当分野:産業医学)

  厚生労働省は平成26年6月27日に表題の労災補償状況について発表しました。注目すべきは,うつ病や仕事上のストレスなどが原因となっておこる精神障害の労災請求件数が1409件と過去最多となったことです(前年比152件の増)。ただし,支給決定件数は436件(前年度比39件の減)であり,4年ぶりに減少しています。

  精神障害の労災認定の内訳をみると,請求件数は業種別(大分類)では「製造業」249件(18%),「医療,福祉」219件(16%),「卸売業,小売業」199件(14%)の順に多く,これらの業種が全体の50%近くを占めています。この傾向は,平成24年度と同様です。支給決定件数では「製造業」78件(18%),「卸売業,小売業」65件(15%),「医療,福祉」54件(12%)の順でした。中分類では,請求件数,支給決定件数ともに「医療,福祉」の「社会保険・社会福祉・介護事業」119件,32件が最多でした。この結果も昨年度と同様であり,この業種に就いている方々の精神的負担の大きさがうかがわれ,早急な対策が求められると思います。また職種別(大分類)では,請求件数は「事務従事者」350件(25%),「専門的・技術的職業従事者」307件(22%),「サービス職業従事者」176件(12%)の順に多く,全体の60%近くを占めていました。支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」104件(24%),「事務従事者」86件(20%),「生産工程従事者」56件(13%)の順でした。中分類では,請求件数,支給決定件数ともに「事務従事者」の「一般事務従事者」227件,50件が最多であり,昨年度と同様でした。
  年齢別では,請求件数,支給決定件数とも「30~39歳」428件,161件,「40~49歳」421件,106件,「20~29歳」277件,75件の順であり,入社してから中堅あたりに位置するこの年代において全体の80%近くを占めており,注意すべき年代と言えます。
  一方,脳・心臓疾患の労災補償状況をみると,請求件数は784件で,前年度比58件の減と2年連続で減少しています。望ましい傾向であり,支給決定件数も306件(前年度比32件の減)と3年ぶりに減少しています。
  内訳をみると,業種別(大分類)の請求件数では「運輸業,郵便業」182件(23%),「建設業」122件(16%),「卸売業,小売業」110件(14%)の順に多く,この業種で50%近くを占めています。支給決定件数は「運輸業,郵便業」107件(35%),「卸売業,小売業」38件(12%),「製造業」36件(12%)の順でした。中分類では,請求件数,支給決定件数ともに「運輸業,郵便業」の「道路貨物運送業」124件,94件が最多であり,昨年度と同様です。職種別(大分類)では,請求件数は「輸送・機械運転従事者」170件(22%),「専門的・技術的職業従事者」101件(13%),「サービス職業従事者」82件(10%)の順に多く,これらの職種で45%を占めています。また支給決定件数では,「輸送・機械運転従事者」95件(31%),「販売従事者」38件(12%),「専門的・技術的職業従事者」37件(12%)でした。中分類では,請求件数,支給決定件数ともに「輸送・機械運転従事者」の「自動車運転従事者」159件,93件が最多であり,昨年と同様です。以上の結果は精神障害にみられた労災認定上位の業種,職種と明らかに異なります。
  年齢別では,請求件数,支給決定件数ともに「50~59歳」241件,108件,「60歳以上」228件,92件,「40~49歳」210件,50件の順で多く,精神障害より明らかに上の年齢であり,年齢にともなう血管病変の進行や生活習慣病とのかかわりなどをうかがわせます。

  以上,平成25年度の精神障害と脳・心臓疾患の労災補償状況を報告しましたが,それぞれにおいて業種,職種,年齢に傾向があるようです。その職業の従事者は是非注意して頂きたいと思います。


鹿児島労基 平成26年11月号掲載

役職定年とメンタルヘルス

産業保健相談員 長友 医継
(担当分野:メンタルヘルス)

  平成25年4月から厚生年金の支給開始年齢が引き上げられましたが、それに先行して、定年後も原則として希望者全員の再雇用を企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が平成24年8月29日に成立しました。
  一方で、多くの企業では役職定年制が敷かれています。この制度は、役職者が一定年齢に達すると管理職ポストからはずれ、専門職などに異動するものですが、対象者は、勤続30年前後の長年企業のために身を粉にして働いてきた50歳代のベテラン社員です。この方々は、役職定年になった先輩方の姿を見ながらサラリーマン生活を送ってきていますので、そういう時期が自分にも必ず来ることは理屈ではわかっていても、いざ自分の番になると、50歳代という若さで出世の道を閉ざされるという境遇の急変に対応できなくなる方もおられます。  
  なかには、「上昇停止症候群」と称される広義のメンタルヘルス不全に陥る方もおられるようです。本症候群は、正式な医学専門用語ではありませんが、元々上昇志向が強く、仕事一筋で頑張りすぎてきた中年サラリーマンの精神的危機をうまく表現している用語です。医学的には、概ね適応障害に該当すると思われます。「同期のライバルは無論、自分の部下や年下の人間が先に昇進した」ことなどを契機に、サラリーマンとして頑張った人生を無駄に感じ、何をする気も起きなくなったり、ひどい疲労感を感じたりするようになることです。状態が長引き悪化すると、外出や会話をしたくなくなり、また、たとえ会社に通勤しても仕事をすることができなくなり、うつ状態を呈することもあります。
   「リフレッシュ もらった休暇が ストレスに」(サラリーマン川柳、第一生命) このような事態に陥らないためにも、日ごろから、「仕事だけが人生」とならない「算段」をしておく必要があります。それにはワーク・ライフバランスが大切です。我が国の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフバランス)憲章」では、本調和が実現した社会は、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて、多様な生き方が選択・実現できる社会」としています。

  中高年の心の持ち方として参考になるものがあります。一つは、自転車による旅番組「日本縦断こころ旅」(NHK、BSプレミアム)の旅人、火野正平(1949年生)の言葉です。彼は、坂道を「人生、下り坂最高!」と言いながら下っていきます。また、嵐山光三郎(1942年生)は、「下り坂人生を楽しもう」というタイトルの小文を書いています。「人によって多少の違いはあろうが、50歳は人生の到達点と考えてもらいたい。50歳は頂点であり絶頂期である。したがって50歳をすぎたら下り坂の人生になると自覚してもらいたい。下り坂を否定するのではなくて、下り坂をそのまま受け入れるのである。そこに気がつくと再び人生が繁盛する。上り坂の時に見えなかったものが下り坂になると見えてくる。」(1194、2010冬、Vol.127、三菱電機ビルサービス株式会社)」


鹿児島労基 平成26年9月号掲載

業務上疾病の6割占める『災害性腰痛』”予防の秘策はあるか”

産業保健相談員 徳永 龍子
(担当分野:保健指導)

  ここ数年の業務上疾病の第一位は『災害性腰痛』であり6割を占めている。また、10年前の2.4倍に増えたことから19年ぶりに「職場における腰痛指針」が改訂された。その中で腰痛の発生が比較的多い5作業は、 1.重量物取扱い作業 2.立ち作業(製品の組立、サービス業等) 3.座り作業(一般事務、VDT作業、窓口業務、コンベア作業等) 4.福祉・医療分野等における介護・看護作業 5.車両運転等の作業(トラック、バス・タクシー、車両系建設機械等の操作・運転)である。災害性腰痛の予防は、リスクアセスメント、安全衛生、マネジメントシステムである。

  1.現場分析すると作業内容に応じて腰痛発生の要因は異なる。同一姿勢や繰り返し動作による「筋肉性腰痛」は筋肉疲労や血行不良で生じる。重量物取扱い作業や介護・看護作業等による「椎間板性腰痛」は椎間板ヘルニアで起こる。転倒、転落等による「骨性腰痛」は骨の変形や骨折で起こる。身体への負担・危険の程度、作業頻度等からリスクを評価する。免荷による腰痛予防には、道具の使用、ストレッチや筋肉を鍛えて腰椎をサポートする方法もある。また、作業仕様書で転倒、転落、無理な動作など安全衛生事項・経費積算、環境改善等の対策を検討して予防に努める。
  2.安全衛生の実行管理では、1の取組を組織的、継続的に実施する仕組みである。
  3.実際面では、腰痛予防チェックリストの活用、作業標準の例示、安全に作業できる道具の活用等である。腰痛以外の労働災害の疾病の多くは、機械化の企業戦略と社員の健康管理の両面から日本が得意とするロボットや機械等の導入等もあり労働災害も減少している。
  そうは言っても、腰痛予防の成功事例がないわけではない。  
  フィットネス器具のバランスボールに座って働きながら腰痛を改善した会社がある。そのきっかけは以外な所にあった。中野耕太郎社長は長年の腰痛がバランスボールで改善した。会社を見回すと腰痛者が多い。それならと400ある社内のイスをすべてバランスボールにかえて働いてみた。なんと腰痛が改善しシェイプアップと業績アップしたのである。(2013年10月20日NHKさきどり) 
  腰痛の4割を占める介護・看護作業や重量物取扱い作業にも新しい秘策が導入され始めている。そこで凄い実力を発揮しているのが着用型動作補助装置「マッスルスーツ」である。柔軟で軽量のリュック型のスーツを身に着け使用する。持ち上げる時、空気を入れると背筋を増強し30Kgの拳上に対応する。降ろす時は空気を抜く。現在試験的に2分野で100台使用して手放せないとの評価である。考案者である東京理科大の小林宏教授と使用業者、製作業者がコラボして改良を重ね2015年に1着10万円程度で販売開始を目指す。(2014年4月13日KYT)

  人間型ロボが始めの1歩を45秒かけ踏み出したのが1973年。2足歩行ロボは無理と言われていたが、40年後の今日、サッカーボールを蹴り走るロボができた。「人とロボットとの共生」の志は、多くの研究者に受け継がれている。腰痛は、労働者の健康、医療費の増大、社会損失、労災補償費等の経済コスト面から深刻な社会的問題である。実効ある対策として多方面からの新技術導入が待たれるが、2008年3月経済産業省がまとめた研究報告書でも腰痛予防の取り組みは少ない。
  しかし、「健康増進による企業経営への効果は、事業リスクの低減や労働生産性の向上につながる」とのコメントがある。
まずは腰痛指針に基づく職場に応じた現場分析による実効ある健康増進活動が必要であることは言うまでもない。前例のような創造的な腰痛予防対策は、医療費削減、さらなる業績向上、他の企業へのビジネス活用の秘策となるかも知れない。


鹿児島労基 平成26年7月号掲載

職場巡視と労働衛生管理

産業保健相談員 黒沢 郁夫
(担当分野:労働衛生工学)

 働く者にとって職場で過ごす時間が多く、生活の場の一部となっています。職場で働く人々が健康障害を受けないように、職場に潜む有害要因を適切に管理するために労働衛生管理の取り組みが各事業所で図られていると思います。
  職場巡視は労働衛生管理が職場で適切に行われているか判断できる有効な手段の一つです。職場巡視には不適切な点について改善を指示する側面と、指摘された内容が適切に措置されているか、改善結果の確認をする側面があります。特に職場巡視は区切りをつけることが必要です。仮に指摘のみで結果の確認をしなければ、形式的な職場巡視に陥り、「やりっぱなしの職場巡視」になる恐れがあります。指摘事項に対して、新たな問題があって改善が進まなければ、再度対策を検討し取り組むことになります。必ず結論を出すべきです。職場は巡視の「効果確認の場」でもあることを肝に銘じておくことが大切です。
  所で職場巡視の質を高めるためには、職場の有害要因を見抜く力が求められます。「心ここにあらざれば、見れども見えず、聞けども聞こえず」 ということわざがあります。まず気持ちを切り替えて、日常と違う目で現場を見ることに徹することです。又職場巡視は、一歩一歩急がずに進み、五感を最大限に働かせて、音、光、臭い、煙、温度、振動などを感じて、何かおかしいのではないかと、最初に気づくことが大切です。そして疑問点は速やかに確かめる姿勢が基本になります。

  巡視の着眼点ですが、①巡視の順序として作業場全体を観察、作業者周辺を観察、作業者へのリスクを観察することです。②自分自身を作業者と置き換える気持ちで現場を巡視することで、健康障害の原因が見え易くなります。③巡視時の作業は限られた内容ですので、前後作業の説明を受けてリスクを推測する。④問題点を発見した場合、「真の原因」把握に努める 。例えば保護メガネ未着用者を発見した場合、理由として「保護メガネを掛けると作業性が良くない、保護メガネに傷(汚れ)がある、保護メガネをかけなくても叱られることがない、周囲の作業者もあまり掛けていない。」等が挙げられたとしますと、直接原因は本人の不安全行動ですが、「真の原因」は背景に安全衛生教育不足・管理監督者指導不足・保護具着用手順書を作成していないことが挙げられます。従ってこの「真の原因」についての対策が必要になります。⑤5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の観点で巡視する。5S活動は個人が日常的に実践することが必要ですので、5S活動を継続するのは至難の業(継続は力なり)です。それは個人の意識レベルに委ねられている点が多いからです。5S活動を継続するには集団の力が欠かせません。
  職場巡視の事後措置としては、「巡視結果報告書」を作成し、事業者等の検印の上、巡視を受けた現場に配布して、現場からの「改善予定報告書」に基づいて進めることが大切です。内容によりますが、担当者レベルは避けるべきです。

  以上労働衛生管理は地道な努力の積み重ねです。今後職場巡視等の労働衛生管理活動に積極的に取り組み、確実に効果を積み上げることで、職場の労働衛生管理の水準を更に高めて行かれることを期待します。


鹿児島労基 平成26年5月号掲載

すごい!”健康経営”

基幹相談員 徳永 龍子
(担当分野:保健指導)

 最近、『健康経営』の文字を目にするのは私だけだろうか。これは、1980年アメリカの経営心理学者ロバート・ローゼンが提唱した。企業の持続的成長を図る観点から従業員が企業に不可欠な資本として従業員の健康に配慮した経営手法である。1990年代からアメリカでは、企業戦略として社員の健康管理に乗り出し業績アップが図られていた。2000年鹿児島市で「かごしま市民健康55プラン」の策定を任された私は、課員と共に「みんなの元気が未来の元気」を目標に掲げた。それを実現可能にするために、会社と社会を幸せにする健康経営に興味を持ち、経済学を専攻して社会人大学院生となった。
  2002年、費用対効果に非常に厳しいトヨタが他者に先駆け自社社員の健康経営に取り組んだことを知り視察に行った。従業員食堂でバランスの良い産地表示の食事提供や安全面・喫煙の職場環境の改善等に大規模に取り組む3つの理由を聴いた。1.医療費削減 2.さらなる業績向上 3.今までの医療では生活習慣病の予防が満足できない新たな実績向上との説明であった。先んじることで他の企業を対象にビジネス活用できるという企業戦略敬服し、鹿児島市55団体の協働組織を立ち上げ実地に移した。

  その手法は、P.Hドラッガーがマネジメントでいう人こそ最大の資産とすることと共通する。人に対するPDCAサイクルでの健康増進活動である。Plan中長期目標の明文化、Do科学的実施、Check振り返りと改善、Action企業の社会貢献(CSR)による社内外における健康づくり活動などである。
  具体例は、テレビ、ネット、新聞などでも取り上げられている。ヘルシーメニューの提供が鹿児島県内でも飲食店業界などの協力で推進されている。課員で手分けし依頼のため社員食堂も訪問して協力店 を増やしていった。同様の福井発「ヘルシー惣菜認証制度」が2013年11月から23社60メニューで始まった。惣菜やコンビニ弁当の中で油、塩分量を抑えた「健康な食事」を国が認証する制度である。  
  福井県は共働き率が日本一である。30~40代の妻の75%、45~49歳では80%超が働く。福井では3世代が同居又は近くに住むケースが多く、母親も働きやすいためか、女性1人当たりの子供の数も多い反面、保育所に入れない「待機児童はゼロ」だ。世帯当たり預貯金残高なども全国トップクラス。一方で 男性の家事参加が少ないことから夫の家事参加を促す狙いから「家事チャレンジ検定」を始めた。(2014年1月15日日本経済新聞要約)  
  会社では、シェイプアップと業績アップを実現した大手総合科学メーカーがある。きっかけは2008年の世界的不況で、会社は952億円の赤字を計上した。先行き不安から精神面の不調を訴え会社を休む社員が急増した。土肥誠太郎産業医は、会社に「社員の健康は会社の健康」の社内規則を実行に移す時と「ヘルシーマイレージ合戦」を提案した。それから5年、10カ所の事業所2500人が参加している。仕事終了後、毎晩行われるスポーツイベント。他に工場やオフィスを歩いた時間マイルを入力し貯めて豪華景品をゲットするシステムだ。その結果、肥満15%減、メンタル疾患休業日数30%減、社員の交流が活発になり、会社評価も上がり業績アップしている。(2013年10月20日NHKさきどり)  

  この様なメリットを2008年3月に経済産業省がまとめた研究報告書では、「健康増進による企業経営への効果は、事業リスクの低減や労働生産性の向上につながる」と企業価値と結びつくコメントをしている。研究結果から、現在の取り組みで多いのは、長時間労働対策、メンタルヘルス対策、有害物質・危険業務対策などである。今後推進する上で必要なことは、トップビジョンの提案をして金銭的・経営的・社会的インセンティブを社員へ可視化して労使一体でシェイプアップ、業績アップの実践であろう。


鹿児島労基 平成26年3月号掲載

女性受け入れの為の作業環境の改善

基幹相談員 林 和幸
(担当分野:労働衛生工学)

  雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等、女性労働者の福祉の増進に関して、化学物質を取り扱う作業場において女性労働者の就業を禁止する業務が公表されております。
  今後の社会の変化を見据え、これからの業務に女性労働者を就業させるべく企画しておられる事業所は多いものと思われますが、それに当り、女性労働者の就業制限の範囲を把握し、女性労働者従事業務の計画をスムーズに進めて行かれる事が大切です。法令をひもとき調査するも、非常に難解に構成されて居ることから、行政が発行するリーフレット等を纏めて簡略化した制度の整理に供した方法で対応する必要があります。
   詳しい成り立ち等は、厚生労働省のホームページの新着情報サービスを利用して、過去の各種委員会議事録等参照できる準備態勢を築いておくことが得策であるといえます。

  今回は行政から発行されたリーフレットの一例を、解釈してみましょう。

1 リーフレット「化学物質を取り扱う事業主の皆様へ
女性労働者の就業を禁止する業務の範囲が拡大」
2 改正女性則による就業制限対象物質と管理濃度

  妊娠や出産・授乳機能に影響する26の化学物質を取り扱う作業場では、妊娠の有無や年齢などにかかわらず、女性労働者を下記の業務に就かせることは禁止されています。(平成24年10月1日施行。但し、エチルベンゼンは平成25年1月1日施行)

(1)「女性労働者の従業を禁止する業務」

①労働安全衛生法に基づく作業環境測定を行い、「第3管理区分」となった屋内作業場での全ての業務。
②タンク、船倉内などで規制対象の化学物質を取り扱う業務で、呼吸用保護具の使用が義務づけられているもの。

(2)労働安全衛生法令と改正女性則との関係(概要)

①屋内作業場で「第3管理区分」(作業場所の気中の有害物質の濃度の平均が、管理濃度を超える状態であり、労働安全衛生法令により、直ちに作業環境を改善するために必要な措置を講じなければなりません)を改善により「第1管理区分」「第2管理区分」とした就業場所は女性労働者就業可能。
②屋内作業場で「第3管理区分」のままの就業場所は女性労働者就業禁止。
③タンク内など、局所排気装置等のない作業場所で、呼吸用保護具の使用が義務づけられている業務は女性労働者就業禁止。
④屋外作業場は、女性労働者就業可能。   
⑤改正女性則では26の物質が規制の対象となります。(厚生労働省HP参照)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku05/dl/h24-78-p02.pdf
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3 注意事項

(1)化学物質が発散する場所での女性労働者の就業禁止は、妊娠の有無、年齢などにかかわらず、すべての女性労働者が対象になります。
(2)女性労働者が就業可能な作業環境であるにもかかわらず、そこで仕事をさせないことは、女性の就業の場を必要以上に狭めることになります。事業主は、このようなことがないようにしなければなりません。


鹿児島労基 平成26年1月号掲載