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22年 バックナンバー

一酸化炭素中毒(CO中毒)の予防

基幹相談員 竹内 亨
(担当分野:産業医学)

  COは古くから人に重篤な中毒を引き起こす有毒ガスであることが知られており、多くの人がその危険性を認識している。 しかしCOの毒作用で亡くなる人が毎年数千人(平成20年は4017人)に上っている。産業現場でも毎年CO中毒が発生している。平成21年1月には鹿児島県内の高等学校でもCO中毒事故が立て続けに2件発生した。COによる中毒事故をなぜ防げないか、どうすれば予防できるかを考えてみたい。
  COはヘモグロビンとの親和性が酸素より200倍以上も高く、血液の酸素運搬能を低下させ、組織の低酸素を引き起こす。その結果多くの酸素を必要とする臓器、特に脳や心臓に障害を引き起こす。 しかしCO中毒には特徴的な症状がなく、感冒様や胃腸炎様の症状が発生する。

  一方はCOは有機物が燃焼する過程で必ず発生する。しかしCOには刺激性や臭気、色はなく、COが発生していても我々は感知できない。 我々がよく目にする、物質が燃焼している時に発生する青い炎は、COが燃焼している色であると言われている。赤い炎の時にはCOが十分に燃焼されず、ガスとして周囲に漏れ出ているのかも知れない。
  COは燃焼により発生し、我々はその発生や蓄積を感知できず、更にCO中毒に陥っていても気づかない状態では、CO中毒事故が無くならないのは当然かも知れない。 換気をすればCO中毒事故を予防できるかといば、そうとも限らない。前述の高等学校でのCO中毒事故の1件は調理実習中に発生したが、CO中毒事故発生時に換気扇は回っていた。 経済産業省は、換気扇を稼働させていたが、窓やドアを閉め切っていたため室内が陰圧になり、自然排気で屋外に放出されるべき暖房機器のCOが室内に逆流し、中毒事故が発生したと推定している。

  CO中毒事故を予防することは不可能だろうか?COの発生や蓄積に気づけば、予防できると思う。欧米ではCO警報器が広く使われているようである。 CO中毒の多く、特に重篤なCO中毒は、CO警報器が設置されていない場所で発生していると報告されている。 CO警報器を設置すれば、COの蓄積に気づくことができ、CO中毒事故を未然に防ぐことができると感じる。CO警報器はネットで検索すると2万円程度で販売されている。警報音の従業員への周知、適切な場所への設置、センサーや電池には寿命があるためその管理を行えば、CO中毒事故の予防に威力を発揮するものと感じる。
  特に厨房のような大型の燃焼機器を稼働させる職場、荷物の積み下ろしを行う屋内車庫、内燃機関を閉所に持ち込む作業等ではCO警報器の設置や携帯は必須と思う。CO中毒事故の予防は意外にシンプルかも知れない。なお筆者はCO警報器の製造販売企業からの援助は一切受けていない。

  より詳しい内容は産業衛生学雑誌2009; 51: 71–73に掲載しており、

からフリーでダウンロードできるので、ご参考にしていただければ幸いである。

 


鹿児島労基 平成22年11月号掲載

 

 

事業場における作業環境管理

基幹相談員 林 和幸
(担当分野:労働衛生工学)

  時代の変遷とともに、作業現場での作業環境の把握項目が大きく変わりつつあります。
  特にリスクアセスメントの検討項目の中には、今まで想定していなかった項目が発生する場合があります。

  労働現場に適用される法令は、先ず労働基準法、労働安全衛生法及びその関連諸規則等多岐に渡り、そして作業環境測定法があり、有害物質の管理濃度を見直す「改正管理濃度」が年毎に追加されると共に、厚生労働省から発せられる指針、ガイドライン等が作業環境管理の肉付けを行っております。
  事業場としては、一度に多数の有害な環境要因を把握は出来ても、一気にその有害要因を改善に到達させ得るものは少なく、一つずつ改善へ向け「歩」を手堅く進める以外に手段はないのが現状です。

  今年の夏も非常に暑い日々が想定される等、思いもかけぬ大きな労働環境の変化と災害が予想され、当該高熱化の現場での熱中症発生の予防に力を注がねばならない、地球温暖化現象による大きな環境変遷への対応が各事業場に求められております。
  夏季の各現場の予想、各職場の現状把握と予防対策、発生時の緊急対策体制の構築等各事業場にて計画を立てておく事が肝要です。現状の把握としての作業環境測定は欠かせないものです。各部署の1年間の四季を通した温度・湿度・(出来れば、黒球温度)の把握を徹底して、確実な計画のもと、熱中症の指標WBGT値と作業強度を参考とし、予測と対応策の実施が必要です。

  鹿児島産業保健推進センターにおきましては、自社にて把握可能な簡易測定等の実習を、本年度も6月,7月に1回ずつ2時間の枠で実施しました。
  限られた実習用機器と場所のため、1回当たり受講者数を20名に限定させていただき、内容的には厚生労働省通達に示されたようなカリキュラムに準拠したものと致しております。
  研修予定の内容及び日時は、鹿児島産業保健推進センターのホームページに掲載されておりますので、今後も多岐にわたると見られる現場での検討項目の中から皆様事業所に係る項目を選び責任者等を受講させておき、事業所の作業環境管理及び災害防止に役立たせる体制を樹立されることをお奨めいたします。

  なお、短い研修(実技を含む)時間ではありますが、ご希望の場合は事業所等への講師斡旋・派遣を行っておりますのでご利用ください。

 


鹿児島労基 平成22年9月号掲載

 

 

脳・心臓疾患及び精神障害に係る労災補償状況(平成20年度)について

基幹相談員 前田 雅人
(担当分野:産業医学)

  平成21年6月に厚生労働省から「脳・心臓疾患及び精神障害に係る労災補償状況(平成20年度)」についての報告がありました。
  以下に内容を要約して、解説したいと思います。

  一般に作業現場での外傷事故であればすぐ労災補償を思いつくのですが、外傷でない「脳・心臓疾患」の場合、なかなか判断し難いケースが多いかと思います。
  また労災の認定する「脳・心臓疾患」は対象疾患が決まっており、脳血管疾患なら脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症であり、虚血性心疾患なら心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤です。
  これらの疾患は血管病変が自然経過によって悪化し発症する、いわゆる私病増悪型疾患であると考えられるわけですが、労災認定の折には業務により明らかな過重負荷が加わることで、血管病変が自然経過を越えて著しく増悪し発症したとして判断される必要があります。

  さて平成20年度の「脳・心臓疾患」についてですが、請求件数をみたところ、889件と前年度より42件(4.5%)減少していました。年々増加の一途をたどっていた請求件数がなぜ減少に転じたのかは不明です。
  一方請求に対する支給件数も377件と昨年よりも15件(3.8%)減少していました。支給決定件数の業種別では「運輸業」が最も多く(99件、二26.3%)、次いで「卸売・小売業」(62件、16.4%)であり、職種別では「運輸・通信従事者」(98件、26%)、「専門的・技術的職業従事者」(59件、15.6%)の順でした。
  年齢別では50~59歳の請求件数が最も多く(327件、うち死亡102件)、次いで40~49歳(217件、うち死亡89件)でしたが、支給が認められたのは50~59歳(142件、うち死亡58件)、40~49歳(116件、うち死亡48件)と厳しく、全請求(889件)に対して、支給決定は377件(42.4%)でした。

  鹿児島県については、平成20年度の脳血管疾患の請求は2件、支給は3件(前年度以前請求分を含む)、虚血性心疾患等の請求は4件、支給は2件でした。

  一方うつ病や仕事上のストレスなどが原因の「精神障害等の労災補償状況」についてみると、請求は927件であり、前年度から25件(2.6%)減少していました。
  支給件数については269件と前年度より1件(0.4%)の増加でした。「脳・心臓疾患」と同様、前年度までの明らかな増加傾向は収まっているようです。
  支給件数の業種別では、「製造業」(50件、16.8%)が最も多く、次いで「卸売・小売業」(48件、17.8%)の順であり、職種別では「専門的・技術的職業従事者」(69件、25.7%)、「生産工程・労務作業者」(51件、19%)の順でした。
  年齢別では30~39歳の請求件数が最も多く(303件、うち自殺31件)、40~49歳(239件、うち自殺44件)の順でしたが、支給が認められたのは30~39歳(74件、うち自殺11件)、20~29歳(70件、うち自殺10件)であり、全請求(927件)に対して、支給は269件(29%)でした。前述の「脳・心臓疾患」と比べ、より若年層に問題があり、また業種、職種の順位も異なるものでした。

  鹿児島県については、精神障害等の請求は9件(うち自殺1件)、支給は1件でした。 長く続く不況が「脳・心臓疾患及び精神障害に係る労災補償状況」におよぼす影響について、今後も注意して見ていきたいと思います。

 


鹿児島労基 平成22年7月号掲載

 

 

メンタルヘルスケアにおける管理監督者の役割

基幹相談員 長友 医継
(担当分野:メンタルヘルス)

  最近、産業・経済の構造変化に伴う労働環境の変化による職業性ストレスが増加し、メンタルヘルス不調をきたした労働者が増えてきているのは周知のことです。そのため、職場におけるメンタルヘルスケアが重要な課題になってきています。

① 4つのメンタルヘルスケア

  職場におけるメンタルヘルスケアには、以下の4つのケアがあります。

  • セルフケア:労働者自らがストレスへの気づきや対処法を身につけ、自発的に相談することです。
  • ラインによるケア:管理監督者が部下からの相談に応じたり、職場環境などの改善を図ることです。
  • 事業場内産業保健スタッフによるケア:産業医や産業保健スタッフが、労働者への相談対応、職場環境などの改善、ラインによるケアへの支援、メンタルヘルスに関する教育研修の企画や実施を行うものです。
  • 事業場外資源によるケア:医療機関などの事業場外の資源の協力を得て、心の健康づくり対策を支援するものです。
 ② ラインによるケア

  職場のメンタルヘルスケアとしては、このほか「ラインによるケア」が重視されています。

  1. 自分自身のケア

    管理監督者である管理職も、無論労働者ですので、まずセルフケアが必要です。管理職は、環境ストレスによる適応障害に陥りやすいのですが、特に、サンドイッチ症候群、燃え尽き症候群、上昇停止症候群とよばれるものを発症しやすい状況にあります。

    • サンドイッチ症候群とは、上司と部下との板挟みになり、メンタル不全をきたすものです。上司にも部下にも悩みを相談しない中間管理職が罹患しやすいといわれています。
    • 燃え尽き症候群とは、自分自身にとって現実不可能な期待を自らに課し、それを達成するために頑張りすぎ、疲れ果てたり、欲求不満に陥った状態をいいます。症状としては、疲れ果てたという情緒的消耗感や仕事に対する達成感のなさがみられますが、対象者(企業の場合は部下、同僚、上司のみならず顧客も含まれます)に対する人間性を欠くような対応などをする脱人格化もみられます。この症状のため、様々なトラブルが発生する危険性があります。
    • 上昇停止症候群とは、勤勉で優秀な上昇志向型のサラリーマンが自分のキャリアの限界を知った時(同僚との出世競争に負ける、など)に出現するメンタルヘルス不調をいいます。
  2. 部下の健康への配慮

   次に、部下への対応としては、まず、部下の健康に配慮することはいうまでもありません。そのためには、部下の「いつもとちょっと違う」状態に気づく感性が必要になります。そのためには、以下の点に気をつけるとよいとされています(厚生労働省)。

  • 遅刻、早退、欠勤が増える。
  • 休みの連絡がない(無断欠勤がある)。
  • 残業、休日出勤が不釣り合いになる。
  • 仕事の能率が悪くなる。思考力、判断力が低下する。
  • 業務の結果がなかなかでてこない。
  • 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)。
  • 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)。
  • 不自然な言動が目立つ。
  • ミスや事故が目立つ。
  • 衣類が乱れたり、不潔であったりする。

  以上のことを勘案して、部下との相談対応を行うわけですが、その際、管理職と部下の労働環境に対する意識の乖離に注意する必要があります。管理職は「風通しの良い職場であり、部下とのコミュニケーションも十分取れている」と思っていても、部下は否定的な考えを持っている場合もあります。
  さらに、部下にとってのストレスの原因が管理職自身である場合もありますので、注意が必要です。

  メンタルヘルスケアのなかでは、労働者が自らのストレスに気づき、そして対処するセルフケアが基本であるべきですが、実際の職場では労働者個人では対処できないストレス要因も多く、ラインによるケアを中心として4つのケアが継続的にかつ計画的に実施されることが必要です。

 


鹿児島労基 平成22年5月号掲載

 

 

うつ病・うつ状態の時代的変容

基幹相談員 福迫 博
(担当分野:メンタルヘルス)

  近年、うつ病に関しては、精神障害という偏見が残っている地域や世代が一部存在するが、マスメディアで取り上げられる機会が増え、敷居が低くなり心療内科・精神科クリニック、精神科病院を受診する患者数が増加している。典型的なうつ病は、「メランコリー親和型」に代表される、真面目、几帳面、融通が利かず、秩序を重んじるといった性格傾向の人が、様々なストレスを負荷されることによって引き起こされる心身の諸症状を呈する病であり、その経過や治療法が初診時に描けるケースがほとんどである。すなわち、抗うつ薬と休養が主たる治療法であり、数カ月~1年間程度の治療期間であるなど、患者や家族に比較的画一的な説明をすれば8割~9割の患者が寛解に至る一群である。診立てがしっかりしていれば、入院治療に導入し自殺予防もできる可能性が高い。

  一方で、「うつ病」という概念が拡大使用され治療現場や職場で混乱が見られるのも確かであり、2年前の日本精神神経学会において、このような現況に関するシンポジウムが開催された。私のクリニックを受診する患者の1/4程度が紹介状を持参するが、プライマリケア医や関東、関西方面のメンタルクリニックから紹介されて受診する患者の診断名として多いのが、適応障害とうつ状態である。うつ病という診断名を記載されている患者は少数派である。適応障害については、ICD‐10では個人の素因が強く関与すると定義されているが、実際的には環境的要因の関与が大きい人が多くみられ、職場や家庭環境を変化させることで軽快することも多く、抗うつ薬や睡眠薬は補助的に使用している。慢性・遷延化した本格的うつ病に陥らないように底支えとして服用してもらっている患者もおり、それなりに効果はあると考えている。

  しかし、最近受診する「うつ状態」を呈する患者の中には、他罰的で非協調的、自己中心的で自尊心が傷つきやすく、それでいて他者を見下す傾向があるといった特性を有する「うつ状態」の患者の割合が高くなっている。このような患者の特徴としては、人間関係において勝ち負けにこだわる傾向、共感性が乏しく他者に対して狭量、容易に人に打ち解けないなどがあげられる。対人関係上でも大きな障害を示す傾向があるため、職場における対応も苦慮することが多い。
  症状的には、抑うつ症状と自己評価の低下、自己不信と他者不信を持ち、摂食障害、職場不適応、対人関係困難、不潔恐怖症(強迫性障害)、社会的ひきこもり、DVなどを呈する。薬物療法は奏功せず、治療関係も不安定でドクターショッピングしている患者も多いと思われる。ディスチミア親和型うつ病とも呼ばれているが、境界性人格障害や自己愛性人格障害がベース(あるいは併存)である患者が多く、治療は難渋する。
  そして、このような患者にSSRIやSNRIを使用すると「アクチベーション (抗うつ薬の投与開始初期や増量時などに見られる精神行動症候群であるが、その定義はまだ確立していない)」が惹起されやすい傾向があると、昨年のうつ病学会である程度の見解が示された。
  このような実情を考慮しないで、マスメディアによる抗うつ薬 の使用に関する不快ともとれるバッシング(反省すべき点もあろうが)があると、治療する側としては憤りを覚えることもある。ここ一年間で、職場の上司が自己愛性人格障害(的)であるため、うつ病に罹患した患者を2例経験した。産業医や事業場内産業保健スタッフの方々もこのような事例に多く遭遇するようになり、それなりの対応がなされているように感じている。医療の現場においても同様の傾向が見られるのではと危惧しつつ記述した次第である。

 


鹿児島労基 平成22年3月号掲載

 

 

リスクアセスメントで安全職場を目指す

基幹相談員 黒沢 郁夫
(担当分野:労働衛生工学)

   『我が社では、ここ10年間、労働災害は発生していないので、安全職場です』と聴くことがあります。本当にそうでしょうか、職場には災害に起因する要因が多数存在していることに注視しなければなりません。
  安全職場とは、これらの要因が災害を引き起こす前に、日常的に災害防止活動に取り組み、継続している中に存在するものであって、災害防止活動をしていないで災害ゼロは“たまたま”にすぎず、安全職場とは言えません。

  そもそも労働災害はあってはならないことですが、現状は昨年で死亡者は1、268名、労災保険受給者は約55万人もの被災者が発生しています。国としても最近の労働災害発生の減少鈍化の傾向を打破するため、第11次労働災害防止計画を発表し展開中です。計画の中の重点対策の一つに「リスクアセスメント(危険性又は有害性等の調査)及びその結果に基づく措置の実施の促進」その目標として「実施率を着実に向上させる」となっています。

  リスクアセスメントとは職場に潜む危険・有害要因を特定して負傷の重篤度と災害発生の可能性を組み合わせてリスクを見積り(点数化)、優先度をつけて、リスク低減措置を実施するもので新しい手法です。この手法は災害防止に期待できるものとして、平成18年4月に労働安全衛生法が改正で、リスクアセスメントの努力義務化が明記(法28条の2)され、法的に後押しされています。その狙いは従来の災害防止活動に加えてリスクアセスメント活動を展開することで、災害発生率減少の鈍化傾向の打破に寄与することです。

  さて、現在多くの事業所等でリスクアセスメント活動を推進中と思います。推進にあたり気をつける点があります。まず、重要なのは組織的に取り組むことです。それには事業者トップの「リスクアセスメント方針の表明」が不可欠です。事業者のやる気、強い決意を全従業員に示すことが必須です。方針の表明後は進捗状況の報告を受ける立場で、関心を継続することが求められます。

  次に職場に潜むリスクを特定する実施担当者の選任です。現場の実情を熟知した責任者(職長等)が該当します。「リスクを特定する」の一言ですが、非常に重要なことです。リスクアセスメントが成功するか否かの“要”といえます。職場に潜む危険・有害性がないか「眼を皿」にして見つけ出す努力が求められます。「心ここにあらざれば、見れども見えず、聴けども聞こえず」です。担当者の安全意識レベルが問われることになります。たとえば、ある作業でリスクが5件あるのに1件の特定のみで残りのリスクが原因で災害が発生した場合は力不足を痛感することになります。

  特定のための職場巡視は、その場での判断になりやすいので、他の作業のリスクを見逃すおそれがあります。少々の時間を使い一日の作業行動を実態に合わせてシュミレーション(手まねなどで)することが肝心です。特定したリスクは、見積りをして、優先順位をつけてリスク低減措置を実施することになります。

  このようにリスクアセスメント手法は分かりやすいもので、実績を積むに従って確実にリスクが低減され、災害の発生しない安全職場の目標を達成することができます。前向きな取り組みを期待します。

 


鹿児島労基 平成22年1月号掲載