お知らせ

令和8年バックナンバー

転倒予防から高年齢女性労働者の健康を考えてみた

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
冨宿 明子
(労働衛生コンサルタント)
(担当分野:産業医学)

鹿児島県内のとある事業場の衛生管理者、衛生くん。
最近注目されている「転倒労災」について、産業医とおしゃべりしています。

衛 生;
最近の安全衛生委員会では、転倒労災の話題がしょっちゅう出ますよね。
産業医;
10月の全国労働衛生週間でも、転倒・腰痛予防対策は力を入れるように言われていたよね。
衛 生;
どうして国はこんなに力を入れているんですかね。まあ転倒労災が増えているからなんでしょうけど。
産業医;
全労働者のうち高年齢女性の割合がアップしてきているからだろうね。高年齢女性は転倒すると骨折しやすくて、骨折すると休業日数が長引くから、労災の原因として目立つのよ。若い人であれば体のバランスを崩してもなかなか転倒にまで至らないし、男性であれば骨密度が女性と比べて高いから転倒しても骨折にまで至りにくいんだよね。とはいえ、高年齢であることも女性であることも、変えることはできないから、変えられることを変えていくしかないよね。
衛 生;
4Sを徹底したり、手すりを持ったり、筋トレ・ストレッチをしたり、滑りにくい靴を履いたり、時間に余裕を持ったり、って感じですよね。
産業医;
すごいね、君。スラスラ出てきた。
衛 生;
通路に貼ってある転倒注意のポスターを毎日見ていたら、覚えちゃいました。
産業医;
あー、去年、中災防から買った、猫のヤツね。私もハンドバッグにあの猫のガチャをぶら下げて、常に安全第一を意識しているよ。私も54歳、ボチボチ骨折のお年頃だからね。産業医が、しかも労働衛生コラムで転倒予防のことを書いている人が、転倒で骨折なんかした日にゃ、もう…。
衛 生;
先生って、普段どんなことに気を付けているんですか? 労働安全衛生の、安全っぽい対策じゃなくて、衛生っぽい対策っていう意味で。
産業医;
週に1回、ある病院の手術室で働いているんだけど、手術室が8階にあってね、階段で一気に上がって、「定期的に運動している」ってことにしているよ。もちろん、手すりを持ってね。すごく息が上がるから、手術室のナースさんからは気持ち悪がられるけど。階段をコンコンコンと駆け降りて背骨に軽く衝撃を与えるっていうのも、背骨の「いつのまにか骨折」の予防にいいんだって。それと、大豆は大好きでよく食べるよ。豆腐とか油揚げとか納豆とか。納豆は常に冷凍庫に入っていて、自然解凍で食べているよ。大豆イソフラボンが腸内細菌のはたらきで女性ホルモンに似たエクオールっていうものに変化して、骨粗しょう症予防になるらしいんだけど、あまりエクオールを作らない腸内細菌の人も結構いるらしいから、思ったほど効果はないかもしれないんだけどね。まあ、大好きだから食べ続けるけど。あとは、絶対に寝不足しない、っていうことかな。寝不足だとめまいがして、地震かと思って騒いだらめまいだった、なんてことも。健診の診察を担当しているときに、「忙しくて睡眠時間を確保できない」っていう60代くらいの女性受診者がよくいらっしゃるんだけど、話を聞いてみると、これって家事を他の家族と分担したり介護をプロにも任せたりすることで解決しそうだな、って感じるよ。
衛 生;
なるほど! 今日の話、母にも伝えます!
産業医;
最後に、これからどんどん寒くなっていくけど、凍っているところで転倒しやすいから気を付けてね!

鹿児島労基 令和8年1月号掲載