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令和8年バックナンバー

職場内で結核発生・・・どうすればいい?

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
桶谷 薫
(担当分野:産業医学)

結核は、以前は毎年日本でも100万人以上の国民が罹患し、10万人以上が死亡する「死因の第一位」の国民病でした。その後国をあげて対策をとることで順調に減少してきています。しかし現在でも世界ではいまだ年間120万人以上が亡くなり、日本でも年間1万人以上が新たに感染する忘れてはならない感染症です。

まずは結核を知ってみて下さい

結核菌という細菌によって約8割は主に肺に炎症が起きる病気ですが、肺以外にも臓器で増殖し、(腸や腎臓などにも)炎症を引き起こしてきます。結核を発症した患者は症状が進むと体内で増殖した結核菌を体の外に排出するようになります。肺結核患者では咳やくしゃみとともに結核菌の入った「しぶき」 が、空気中に飛び散り、その空気中に漂う「しぶき」を周囲の人が吸い込み、肺の奥深くに入り込むことで人から人への感染をしていきます。しかし吸い込まれた大半の結核菌は鼻や気管支にある表面の粘液や細かい繊毛の働きで体の外に排出されたり、体内での免疫力の働きにより退治されたりして感染にはいたりません。残りの生き残った菌の一部が体の奥に入り込み感染がおこります。結核に特徴的なのは感染したからといってすぐに発病するわけではなく、免疫力により休眠状態になりそのまま発病しなかったり、徐々に死滅したりすることもあります。一部免疫で結核菌を抑えきれない場合には、6ヶ月から2年ほどかけてゆっくりと増殖を繰り返し発病していきます(初感染発病)。また免疫力で押さえ込んでいた休眠状態の結核菌も免疫力が落ちてくると数年から数十年して発病してくることもあるのです(既感染発病)。この特徴的な発病の形をとる結核に対しては始めの段階で増殖をしっかりと押さえ込むために、早期に発見して早期に治療を開始し、数種類の薬を決められた期間しっかりと内服し続けることがとても大切です。(図)

職場での対応は?
  • まずは患者本人が入院や休暇や勤務しながらの外来治療など主治医から必要とされる療養環境をつくり、周囲も結核を正しく理解し風評被害などなく安心して治療ができるようにすることが重要です。
  • 患者の主治医からは感染症法により必ず保健所に届け出がされます。この届け出の内容を保健所が確認し、主に排菌があり周囲への感染の可能性が否定できない場合や感染源が不明である場合などは、指示があり保健所と職場との連携体制が必要となってきます。まずは職場内での感染状況を確認するため、頻回に接触のあった職員のリストを作成、問診や胸部レントゲン、血液検査(インターフェロンγ遊離試験 IGRA)を行っていきます。この検診結果で発病はしていないが感染者と判断された場合(潜在性結核感染症)は治療開始となります。(本人の持病がある場合、薬剤アレルギーなどの場合は主治医と相談の上)潜在性結核感染症と診断され未治療の場合、その後1割から2割は結核を発病するというデーターがあがっています。

このように結核は過去に感染して発症がなくても免疫力が落ち込む時期での再燃や、罹患者の多い海外の国々からの20代から30代の若い労働者の発症など、まだまだ忘れてはいけない感染症であります。

鹿児島労基 令和8年3月号掲載

転倒予防から高年齢女性労働者の健康を考えてみた

鹿児島産業保健総合支援センター産業保健相談員
冨宿 明子
(労働衛生コンサルタント)
(担当分野:産業医学)

鹿児島県内のとある事業場の衛生管理者、衛生くん。
最近注目されている「転倒労災」について、産業医とおしゃべりしています。

衛 生;
最近の安全衛生委員会では、転倒労災の話題がしょっちゅう出ますよね。
産業医;
10月の全国労働衛生週間でも、転倒・腰痛予防対策は力を入れるように言われていたよね。
衛 生;
どうして国はこんなに力を入れているんですかね。まあ転倒労災が増えているからなんでしょうけど。
産業医;
全労働者のうち高年齢女性の割合がアップしてきているからだろうね。高年齢女性は転倒すると骨折しやすくて、骨折すると休業日数が長引くから、労災の原因として目立つのよ。若い人であれば体のバランスを崩してもなかなか転倒にまで至らないし、男性であれば骨密度が女性と比べて高いから転倒しても骨折にまで至りにくいんだよね。とはいえ、高年齢であることも女性であることも、変えることはできないから、変えられることを変えていくしかないよね。
衛 生;
4Sを徹底したり、手すりを持ったり、筋トレ・ストレッチをしたり、滑りにくい靴を履いたり、時間に余裕を持ったり、って感じですよね。
産業医;
すごいね、君。スラスラ出てきた。
衛 生;
通路に貼ってある転倒注意のポスターを毎日見ていたら、覚えちゃいました。
産業医;
あー、去年、中災防から買った、猫のヤツね。私もハンドバッグにあの猫のガチャをぶら下げて、常に安全第一を意識しているよ。私も54歳、ボチボチ骨折のお年頃だからね。産業医が、しかも労働衛生コラムで転倒予防のことを書いている人が、転倒で骨折なんかした日にゃ、もう…。
衛 生;
先生って、普段どんなことに気を付けているんですか? 労働安全衛生の、安全っぽい対策じゃなくて、衛生っぽい対策っていう意味で。
産業医;
週に1回、ある病院の手術室で働いているんだけど、手術室が8階にあってね、階段で一気に上がって、「定期的に運動している」ってことにしているよ。もちろん、手すりを持ってね。すごく息が上がるから、手術室のナースさんからは気持ち悪がられるけど。階段をコンコンコンと駆け降りて背骨に軽く衝撃を与えるっていうのも、背骨の「いつのまにか骨折」の予防にいいんだって。それと、大豆は大好きでよく食べるよ。豆腐とか油揚げとか納豆とか。納豆は常に冷凍庫に入っていて、自然解凍で食べているよ。大豆イソフラボンが腸内細菌のはたらきで女性ホルモンに似たエクオールっていうものに変化して、骨粗しょう症予防になるらしいんだけど、あまりエクオールを作らない腸内細菌の人も結構いるらしいから、思ったほど効果はないかもしれないんだけどね。まあ、大好きだから食べ続けるけど。あとは、絶対に寝不足しない、っていうことかな。寝不足だとめまいがして、地震かと思って騒いだらめまいだった、なんてことも。健診の診察を担当しているときに、「忙しくて睡眠時間を確保できない」っていう60代くらいの女性受診者がよくいらっしゃるんだけど、話を聞いてみると、これって家事を他の家族と分担したり介護をプロにも任せたりすることで解決しそうだな、って感じるよ。
衛 生;
なるほど! 今日の話、母にも伝えます!
産業医;
最後に、これからどんどん寒くなっていくけど、凍っているところで転倒しやすいから気を付けてね!

鹿児島労基 令和8年1月号掲載